七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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風見ヒーロー事務所

第26話 『風見ヒーロー事務所』

 

職場体験初日。

 

◇◇◇

 

朝。

 

◇◇◇

 

駅のホームに立つ。

 

◇◇◇

 

一人だった。

 

◇◇◇

 

静かだ。

 

◇◇◇

 

素晴らしい。

 

◇◇◇

 

爆豪もいない。

 

緑谷もいない。

 

轟もいない。

 

◇◇◇

 

最高だった。

 

◇◇◇

 

「このまま何も起きなければいいんだが」

 

◇◇◇

 

過去の経験上。

 

そう思った時ほど何か起きる。

 

◇◇◇

 

嫌な予感しかしない。

 

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風見ヒーロー事務所

 

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地方都市の一角。

 

◇◇◇

 

駅から徒歩十分。

 

◇◇◇

 

建物は小さかった。

 

◇◇◇

 

かなり小さい。

 

◇◇◇

 

大手事務所のような派手さもない。

 

◇◇◇

 

見栄もない。

 

◇◇◇

 

普通の会社だった。

 

◇◇◇

 

俺は安心した。

 

◇◇◇

 

平和そうだ。

 

◇◇◇

 

とても。

 

◇◇◇

 

表札を見る。

 

◇◇◇

 

◇◇◇

 

間違いない。

 

◇◇◇

 

扉を開く。

 

◇◇◇

 

「失礼します」

 

◇◇◇

 

すると。

 

◇◇◇

 

「おっ!」

 

◇◇◇

 

元気な声が返ってきた。

 

◇◇◇

 

二十代前半。

 

◇◇◇

 

黒髪。

 

◇◇◇

 

爽やかな笑顔。

 

◇◇◇

 

そして。

 

◇◇◇

 

妙に目が輝いていた。

 

◇◇◇

 

嫌な予感。

 

◇◇◇

 

非常に。

 

◇◇◇

 

「七瀬君だね!」

 

◇◇◇

 

「はい」

 

◇◇◇

 

「会いたかった!」

 

◇◇◇

 

「そうですか」

 

◇◇◇

 

初対面だった。

 

◇◇◇

 

なぜそんなに嬉しそうなのか分からない。

 

◇◇◇

 

「風見悠人だ!」

 

◇◇◇

 

「よろしく!」

 

◇◇◇

 

握手を交わす。

 

◇◇◇

 

第一印象。

 

◇◇◇

 

元気だな。

 

◇◇◇

 

それだけだった。

 

◇◇◇

 

「ナイチンゲールから話は聞いてるよ!」

 

◇◇◇

 

終わった。

 

◇◇◇

 

嫌な予感が当たった。

 

◇◇◇

 

「同級生なんですよね」

 

◇◇◇

 

「そうそう!」

 

◇◇◇

 

風見が笑う。

 

◇◇◇

 

「学生時代から真面目だったよなぁ」

 

◇◇◇

 

「今も真面目です」

 

◇◇◇

 

「だよなぁ!」

 

◇◇◇

 

テンションが高い。

 

◇◇◇

 

かなり高い。

 

◇◇◇

 

アルトリアとナイチンゲールの言葉を思い出した。

 

◇◇◇

 

『少し変人です』

 

◇◇◇

 

『面倒だ』

 

◇◇◇

 

今なら理解できる。

 

◇◇◇

 

とてもよく。

 

◇◇◇

 

「そうだ!」

 

◇◇◇

 

風見が急に目を輝かせた。

 

◇◇◇

 

嫌な予感。

 

◇◇◇

 

「体育祭見たぞ!」

 

◇◇◇

 

来た。

 

◇◇◇

 

絶対来ると思った。

 

◇◇◇

 

「鎖!」

 

◇◇◇

 

「はい」

 

◇◇◇

 

「釣竿!」

 

◇◇◇

 

「はい」

 

◇◇◇

 

「仮面!」

 

◇◇◇

 

「はい」

 

◇◇◇

 

「どういう能力なんだ!?」

 

◇◇◇

 

やっぱり来た。

 

◇◇◇

 

「秘密です」

 

◇◇◇

 

即答だった。

 

◇◇◇

 

風見が固まる。

 

◇◇◇

 

「全部?」

 

◇◇◇

 

「全部です」

 

◇◇◇

 

「少しくらい!」

 

◇◇◇

 

「無理です」

 

◇◇◇

 

露骨に落ち込んだ。

 

◇◇◇

 

少し申し訳ない。

 

◇◇◇

 

だが。

 

◇◇◇

 

言えないものは言えない。

 

◇◇◇

 

特に第2武装は。

 

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午前

 

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事務所の案内を受ける。

 

◇◇◇

 

所属ヒーロー三名。

 

◇◇◇

 

サイドキック二名。

 

◇◇◇

 

迷子対応。

 

◇◇◇

 

落し物。

 

◇◇◇

 

交通誘導。

 

◇◇◇

 

地域巡回。

 

◇◇◇

 

平和だった。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

◇◇◇

 

「理想的ですね」

 

◇◇◇

 

思わず本音が漏れる。

 

◇◇◇

 

風見が笑う。

 

◇◇◇

 

「そうだろ?」

 

◇◇◇

 

「俺はこういう仕事が好きなんだ」

 

◇◇◇

 

窓の外を見る。

 

◇◇◇

 

商店街。

 

◇◇◇

 

遊ぶ子供達。

 

◇◇◇

 

買い物をする人達。

 

◇◇◇

 

穏やかな街並み。

 

◇◇◇

 

「派手な事件を解決するヒーローも格好良い」

 

◇◇◇

 

「でも」

 

◇◇◇

 

「誰かの日常を守るヒーローも必要だろ?」

 

◇◇◇

 

少しだけ。

 

◇◇◇

 

良いなと思った。

 

◇◇◇

 

「そうですね」

 

◇◇◇

 

本心だった。

 

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昼過ぎ

 

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巡回。

 

◇◇◇

 

街を歩く。

 

◇◇◇

 

風見は住民からよく声を掛けられていた。

 

◇◇◇

 

「風見君!」

 

◇◇◇

 

「こんにちは!」

 

◇◇◇

 

「今日も頑張ってね!」

 

◇◇◇

 

有名ではない。

 

◇◇◇

 

だが。

 

◇◇◇

 

信頼されている。

 

◇◇◇

 

そんなヒーローだった。

 

◇◇◇

 

「良い場所ですね」

 

◇◇◇

 

「だろ?」

 

◇◇◇

 

風見が笑う。

 

◇◇◇

 

悪くない。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

◇◇◇

 

こんな職場体験なら平和に終わる。

 

◇◇◇

 

そう思った。

 

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夕方

 

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巡回を終えた帰り道。

 

◇◇◇

 

風見が鞄から新聞の切り抜きを取り出した。

 

◇◇◇

 

嫌な予感。

 

◇◇◇

 

「興味あるか?」

 

◇◇◇

 

「ないです」

 

◇◇◇

 

即答した。

 

◇◇◇

 

だが。

 

◇◇◇

 

風見は流した。

 

◇◇◇

 

もっと悪かった。

 

◇◇◇

 

止まってくれない。

 

◇◇◇

 

新聞には最近話題の事件が載っていた。

 

◇◇◇

 

ヒーロー襲撃事件。

 

◇◇◇

 

各地で発生している。

 

◇◇◇

 

犯人不明。

 

◇◇◇

 

被害者はヒーロー。

 

◇◇◇

 

世間ではそう認識されている。

 

◇◇◇

 

「面白いんだ」

 

風見が言う。

 

◇◇◇

 

「犯罪者には必ず行動原理がある」

 

◇◇◇

 

目が輝いていた。

 

◇◇◇

 

帰りたい。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

◇◇◇

 

「無意味な犯行は存在しない」

 

◇◇◇

 

「どんな人間にも理由がある」

 

◇◇◇

 

風見は新聞を眺める。

 

◇◇◇

 

「だから調べれば見えてくる」

 

◇◇◇

 

「何がですか」

 

◇◇◇

 

「犯人が何を考えているのか」

 

◇◇◇

 

その目は。

 

◇◇◇

 

完全に犯罪心理学オタクだった。

 

◇◇◇

 

ナイチンゲールの評価は正しかったらしい。

 

◇◇◇

 

「暇があったら読んでみるといい」

 

◇◇◇

 

新聞の束を渡される。

 

◇◇◇

 

嫌だった。

 

◇◇◇

 

ものすごく。

 

◇◇◇

 

それでも受け取る。

 

◇◇◇

 

職場体験だからだ。

 

◇◇◇

 

「ありがとうございます」

 

◇◇◇

 

「おう」

 

◇◇◇

 

風見は満足そうに頷いた。

 

◇◇◇

 

そして。

 

◇◇◇

 

俺は気付いていなかった。

 

◇◇◇

 

この三日後。

 

◇◇◇

 

その新聞記事と風見の分析が。

 

◇◇◇

 

とんでもない事件へ繋がることを。

 

◇◇◇

 

平穏な職場体験の終わりは。

 

◇◇◇

 

もうすぐそこまで来ていた。

 

第26話 完

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