七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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ラッキーハッピー

第28話 『ラッキーハッピー』

 

保須市。

 

◇◇◇

 

嫌な予感しかしなかった。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

◇◇◇

 

「そんな顔するなよ」

 

風見が笑う。

 

◇◇◇

 

「するでしょう」

 

◇◇◇

 

即答だった。

 

◇◇◇

 

原作知識。

 

◇◇◇

 

ヒーロー殺しステイン。

 

◇◇◇

 

保須市。

 

◇◇◇

 

この二つが揃っていて安心できる人間はいない。

 

◇◇◇

 

少なくとも俺は無理だ。

 

◇◇◇

 

「とりあえず推測地点を見てみよう」

 

◇◇◇

 

風見は地図を片手に歩く。

 

◇◇◇

 

本人は完全に遠足気分だった。

 

◇◇◇

 

帰りたい。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

━━━━━━━━━━━━

 

保須市 路地裏

 

━━━━━━━━━━━━

 

夕方。

 

◇◇◇

 

人通りの少ない区域。

 

◇◇◇

 

風見は何枚もの資料を見比べている。

 

◇◇◇

 

ヒーロー襲撃事件。

 

◇◇◇

 

失踪記録。

 

◇◇◇

 

目撃情報。

 

◇◇◇

 

全部まとめていた。

 

◇◇◇

 

「ほら」

 

◇◇◇

 

「やっぱりだ」

 

◇◇◇

 

風見が言う。

 

◇◇◇

 

「行動範囲が狭まってる」

 

◇◇◇

 

嫌な予感しかしない。

 

◇◇◇

 

「帰りませんか」

 

◇◇◇

 

「駄目」

 

◇◇◇

 

即答だった。

 

◇◇◇

 

理不尽だった。

 

◇◇◇

 

その瞬間。

 

◇◇◇

 

ドォォォォォォン!!

 

◇◇◇

 

轟音。

 

◇◇◇

 

地面が揺れる。

 

◇◇◇

 

反射的に顔を上げた。

 

◇◇◇

 

煙。

 

◇◇◇

 

建物の向こう。

 

◇◇◇

 

巨大な影。

 

◇◇◇

 

そして。

 

◇◇◇

 

異形。

 

◇◇◇

 

「脳無……」

 

◇◇◇

 

思わず呟く。

 

◇◇◇

 

見間違いじゃない。

 

◇◇◇

 

USJで見た。

 

◇◇◇

 

あの怪物だった。

 

◇◇◇

 

「七瀬!」

 

◇◇◇

 

風見が叫ぶ。

 

◇◇◇

 

同時。

 

◇◇◇

 

七武装輪転を発動する。

 

◇◇◇

 

黄金のルーレットが回る。

 

◇◇◇

 

カラカラカラ。

 

◇◇◇

 

数字が流れる。

 

◇◇◇

 

『1』

 

『2』

 

『3』

 

『4』

 

『5』

 

『6』

 

『7』

 

◇◇◇

 

嫌な汗が流れた。

 

◇◇◇

 

頼む。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

◇◇◇

 

『2』

 

◇◇◇

 

心臓が嫌な音を立てる。

 

◇◇◇

 

やめろ。

 

◇◇◇

 

それだけは。

 

◇◇◇

 

絶対にやめろ。

 

◇◇◇

 

『5』

 

◇◇◇

 

続いて第5武装。

 

◇◇◇

 

こっちも嫌だ。

 

◇◇◇

 

まだ出したくない。

 

◇◇◇

 

そして。

 

◇◇◇

 

カチリ。

 

◇◇◇

 

数字が止まる。

 

◇◇◇

 

『1』

 

◇◇◇

 

第1武装。

 

◇◇◇

 

戒律の鎖。

 

◇◇◇

 

安堵した。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

◇◇◇

 

「助かった……」

 

◇◇◇

 

「え?」

 

風見が振り返る。

 

◇◇◇

 

「何でもないです」

 

◇◇◇

 

本気だった。

 

◇◇◇

 

少なくとも。

 

◇◇◇

 

第2武装よりは遥かにマシだ。

 

◇◇◇

 

黄金の鎖が腕へ巻き付く。

 

◇◇◇

 

その直後。

 

◇◇◇

 

脳無が突っ込んできた。

 

◇◇◇

 

速い。

 

◇◇◇

 

異常に。

 

◇◇◇

 

拳が振り下ろされる。

 

◇◇◇

 

直撃。

 

◇◇◇

 

そう思った。

 

◇◇◇

 

だが。

 

◇◇◇

 

バキッ!!

 

◇◇◇

 

街路樹の枝が折れた。

 

◇◇◇

 

偶然。

 

◇◇◇

 

本当に偶然。

 

◇◇◇

 

その枝が脳無の顔面へ当たる。

 

◇◇◇

 

軌道がズレた。

 

◇◇◇

 

拳は地面へ直撃。

 

◇◇◇

 

轟音。

 

◇◇◇

 

クレーターができる。

 

◇◇◇

 

風見は無傷だった。

 

◇◇◇

 

「危なっ!」

 

◇◇◇

 

本人まで驚いている。

 

◇◇◇

 

脳無が再び動く。

 

◇◇◇

 

今度は蹴り。

 

◇◇◇

 

しかし。

 

◇◇◇

 

路上の自転車が倒れる。

 

◇◇◇

 

偶然。

 

◇◇◇

 

本当に偶然。

 

◇◇◇

 

脳無の足が引っ掛かる。

 

◇◇◇

 

体勢が崩れる。

 

◇◇◇

 

攻撃失敗。

 

◇◇◇

 

「……おい」

 

◇◇◇

 

俺は風見を見る。

 

◇◇◇

 

「何だ?」

 

◇◇◇

 

本人は首を傾げていた。

 

◇◇◇

 

「個性ですか」

 

◇◇◇

 

風見が固まる。

 

◇◇◇

 

数秒。

 

◇◇◇

 

そして。

 

◇◇◇

 

「ああ」

 

◇◇◇

 

納得したように頷く。

 

◇◇◇

 

「説明してなかったな」

 

◇◇◇

 

脳無が瓦礫を投げる。

 

◇◇◇

 

だが。

 

◇◇◇

 

近くの工事現場。

 

◇◇◇

 

シートが風でめくれた。

 

◇◇◇

 

視界が塞がる。

 

◇◇◇

 

命中しない。

 

◇◇◇

 

偶然。

 

◇◇◇

 

全部偶然。

 

◇◇◇

 

あり得ないほど。

 

◇◇◇

 

「俺の個性」

 

◇◇◇

 

風見が笑った。

 

◇◇◇

 

「ラッキーハッピー」

 

◇◇◇

 

沈黙。

 

◇◇◇

 

「……は?」

 

◇◇◇

 

聞き返してしまった。

 

◇◇◇

 

「楽しい時ほど運が良くなる」

 

◇◇◇

 

「それが俺の個性」

 

◇◇◇

 

意味が分からない。

 

◇◇◇

 

本当に。

 

◇◇◇

 

「今楽しいんですか?」

 

◇◇◇

 

「楽しいぞ?」

 

◇◇◇

 

即答だった。

 

◇◇◇

 

「職場体験中!」

 

◇◇◇

 

「連続襲撃犯!」

 

◇◇◇

 

「正体不明の怪物!」

 

◇◇◇

 

「最高にワクワクする!」

 

◇◇◇

 

終わっていた。

 

◇◇◇

 

色々と。

 

◇◇◇

 

脳無が再び襲い掛かる。

 

◇◇◇

 

だが。

 

◇◇◇

 

今度は近くの看板が外れた。

 

◇◇◇

 

偶然。

 

◇◇◇

 

脳無の顔面へ直撃する。

 

◇◇◇

 

止まる。

 

◇◇◇

 

本当に偶然なのか?

 

◇◇◇

 

いや。

 

◇◇◇

 

違う。

 

◇◇◇

 

全部。

 

◇◇◇

 

この人の個性だ。

 

◇◇◇

 

風見悠人。

 

◇◇◇

 

強いんじゃない。

 

◇◇◇

 

運に愛されている。

 

◇◇◇

 

異常なほど。

 

◇◇◇

 

「よし!」

 

◇◇◇

 

風見が拳を握る。

 

◇◇◇

 

「誘導するぞ!」

 

◇◇◇

 

「どこへ」

 

◇◇◇

 

嫌な予感。

 

◇◇◇

 

最大級の。

 

◇◇◇

 

「犯人がいる場所だ!」

 

◇◇◇

 

終わった。

 

◇◇◇

 

完全に終わった。

 

◇◇◇

 

俺は確信する。

 

◇◇◇

 

平穏な職場体験。

 

◇◇◇

 

それはもう。

 

◇◇◇

 

どこにも存在しない。

 

第28話 完

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