第30話 『理解できない』
緑谷出久視点
保須市事件が終わった。
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ステインは逮捕された。
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飯田君は助かった。
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轟君も無事だった。
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僕も生きている。
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本来なら。
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それで良かった。
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全部終わったはずだった。
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雄英高校
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職場体験終了後。
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教室は騒がしかった。
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みんなそれぞれの体験を話している。
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上鳴君。
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切島君。
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芦戸さん。
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八百万さん。
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楽しそうだった。
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だけど。
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僕の意識は別の人物へ向いていた。
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七瀬刃人。
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体育祭優勝者。
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普通科から編入。
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七武装輪転。
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何もかもが分からない人。
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正直。
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苦手だった。
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いや。
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少し嫌いだった。
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放課後
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分析ノートを開く。
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七瀬刃人。
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何ページも使っている。
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それでも。
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分からない。
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第二武装。
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そして第五武装。
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第五武装については説明されていた。
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武器を想像して放出する能力。
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それだけ。
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だけど。
◇◇◇
正直。
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それも十分おかしい。
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想像した武器を生み出す。
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簡単に言えばそうだ。
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でも。
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どこまで出来るんだ。
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剣。
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槍。
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斧。
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弓。
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銃。
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どこまで可能なんだ。
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数の制限は。
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射程は。
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威力は。
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何も分からない。
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それが怖かった。
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強過ぎる。
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少なくとも。
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僕はそう思う。
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そして。
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それですら第五武装だ。
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第五。
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つまり。
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まだ上がある。
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第七武装。
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仮面舞踏会。
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あれも全容は分からない。
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なのに。
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問題はさらに別にあった。
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第二武装だ。
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あれだけが違う。
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他の武装を説明する時。
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七瀬は普通だった。
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面倒そうではあったけど。
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普通だった。
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だけど。
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第二武装だけは違った。
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『ただの銃』
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そう説明していた。
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でも。
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信じられない。
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第一武装。
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第三武装。
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第五武装。
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第七武装。
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全部異常だ。
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その中に。
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一つだけ普通の銃。
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そんな訳がない。
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何かを隠している。
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そんな気しかしなかった。
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ノートを閉じる。
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ため息が漏れた。
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七瀬は強い。
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それは認める。
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体育祭で証明した。
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僕より。
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爆豪君より。
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強かった。
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それなのに。
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本人はヒーローを目指していない。
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面倒だから。
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平穏がいいから。
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危険は嫌だから。
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そんな理由で。
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ヒーローという夢に興味がない。
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理解できなかった。
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僕は違う。
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ヒーローになるために生きてきた。
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ずっと。
◇◇◇
ずっとだ。
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オールマイトに憧れた。
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個性がなくても諦めなかった。
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そして。
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ワン・フォー・オールを託された。
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最高の個性。
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オールマイトの力。
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歴代継承者の想い。
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それなのに。
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僕はまだ未熟だ。
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全力を出せば身体が壊れる。
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満足に使いこなせない。
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進歩も遅い。
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少しずつ前へ進んでいる。
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それでも遅い。
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飯田君にも助けられた。
◇◇◇
轟君にも助けられた。
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オールマイトにも支えられている。
◇◇◇
なのに。
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七瀬は違う。
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ヒーローになりたい訳でもない。
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欲しがってもいない。
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そのくせ。
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僕がずっと欲しかった強さを持っている。
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だから。
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少し嫌いだった。
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屋上
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人影が見えた。
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七瀬だった。
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そして。
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アルトリア先輩。
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二人で話している。
◇◇◇
珍しい光景だった。
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七瀬がまともに誰かと話している。
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「職場体験はどうだった」
アルトリア先輩が聞く。
◇◇◇
「面倒だった」
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即答だった。
◇◇◇
アルトリア先輩が呆れる。
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「そうか」
◇◇◇
「そうだ」
◇◇◇
会話終了。
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早い。
◇◇◇
非常に。
◇◇◇
だが。
◇◇◇
アルトリア先輩は少し考えた。
◇◇◇
そして。
◇◇◇
「そういえば」
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「今度の休日は空いているか」
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七瀬が首を傾げる。
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「なんで」
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「買い物だ」
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「一人で行け」
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即答だった。
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アルトリア先輩が眉をひそめる。
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「荷物持ちが欲しい」
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「他を当たれ」
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「私と出掛けるのは嫌か」
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「そういう話じゃない」
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七瀬がため息を吐く。
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「面倒なだけだ」
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アルトリア先輩は少し考えた。
◇◇◇
そして。
◇◇◇
「なら問題ないな」
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「何がだ」
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「予定は空けておけ」
◇◇◇
七瀬が露骨に嫌そうな顔をした。
◇◇◇
だが。
◇◇◇
断らない。
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少し意外だった。
◇◇◇
アルトリア先輩が僅かに笑う。
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それを見て。
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もっと意外だった。
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二人は。
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思っていたより近いらしい。
◇◇◇
「珍しいですね」
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思わず声を掛けた。
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アルトリア先輩が振り返る。
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「緑谷か」
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七瀬は露骨に面倒そうな顔をした。
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それも気に入らなかった。
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「仲良いんですね」
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アルトリア先輩は少し考える。
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「腐れ縁だな」
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七瀬も否定しない。
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信頼している。
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それが分かる。
◇◇◇
少し意外だった。
◇◇◇
七瀬は誰も信用していないと思っていたから。
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「何か用か」
◇◇◇
七瀬が聞く。
◇◇◇
相変わらず素っ気ない。
◇◇◇
「別に」
◇◇◇
そう答える。
◇◇◇
本当は聞きたいことが沢山あった。
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第二武装。
◇◇◇
第五武装。
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保須市で何をしていたのか。
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全部。
◇◇◇
だけど。
◇◇◇
聞いても答えないだろう。
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そういう人だ。
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風が吹く。
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七瀬は空を見上げた。
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平和そうだった。
◇◇◇
少しだけ。
◇◇◇
羨ましかった。
◇◇◇
そして。
◇◇◇
やっぱり気に入らなかった。
◇◇◇
僕が必死に追い掛けている夢を。
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あいつは欲しがっていない。
◇◇◇
そのくせ。
◇◇◇
僕より強い。
◇◇◇
ずっと。
◇◇◇
ずっと強い。
◇◇◇
七瀬刃人。
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僕はまだ。
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あいつを理解できそうになかった。
◇◇◇
そしてきっと。
◇◇◇
好きにもなれそうになかった。
職場体験編 完