七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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愚者の財宝

第3話 愚者の財宝

 

個性強化訓練二日目。

 

朝から憂鬱だった。

 

理由は簡単。

 

昨日で教師陣に完全に目を付けられたからだ。

 

体育祭。

 

職場体験。

 

そして林間合宿。

 

目立ちたくないのに目立つ。

 

平穏に暮らしたいのに注目される。

 

理不尽だった。

 

本当に理不尽だった。

 

「七瀬くん」

 

聞き慣れた声が聞こえた。

 

マンダレイだ。

 

嫌な予感しかしない。

 

「何ですか」

 

「ちょっと来て」

 

帰っていいだろうか。

 

駄目らしい。

 

目を見れば分かる。

 

逃がす気はない。

 

案内された先には見慣れた面子がいた。

 

相澤先生。

 

ラグドール。

 

マンダレイ。

 

そして虎。

 

昨日より観客が増えている。

 

面倒事も増えている。

 

間違いない。

 

「今日は何ですか」

 

俺が尋ねる。

 

相澤先生が答えた。

 

「個性強化だ」

 

「嫌です」

 

「却下だ」

 

即却下だった。

 

世知辛い。

 

「昨日は第一武装と第三武装だったわよね」

 

ラグドールが言う。

 

「そうですね」

 

「だから今日は別の武装が見たいの」

 

「運です」

 

「運?」

 

「七武装は選べません」

 

ラグドールが微妙な顔になる。

 

俺も同じ気持ちだった。

 

地面が揺れた。

 

土が盛り上がる。

 

巨大な人型が形作られていく。

 

土人形。

 

昨日より一回り大きい。

 

しかも三体。

 

「増えてません?」

 

俺が聞く。

 

「増えたわね」

 

マンダレイが笑った。

 

「笑い事じゃないんですが」

 

聞いてもらえなかった。

 

三体の土人形が動き出す。

 

前。

 

右。

 

左。

 

包囲。

 

実に面倒だ。

 

俺はため息を吐いた。

 

「七武装輪転」

 

ルーレットが回る。

 

光が流れる。

 

そして停止。

 

出た武装を見て少しだけ眉を上げた。

 

「第五武装か」

 

教師陣の空気が変わる。

 

第五武装そのものは初めてではない。

 

山を登る途中にも一度使っている。

 

だが。

 

あの時は槍を一本取り出して終わりだった。

 

武装の正体までは誰も知らない。

 

黒い波紋が空間へ広がる。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

次々と。

 

そして。

 

その奥から武器が姿を現した。

 

剣。

 

槍。

 

短剣。

 

大剣。

 

斧。

 

弓。

 

さらに。

 

赤黒い刀身を持つ長剣。

 

蒼く発光する槍。

 

複雑な紋様が刻まれた短剣。

 

見るからに異質な大鎌。

 

機械仕掛けのような巨大斧。

 

一本として同じものがない。

 

沈黙。

 

「……何だそれ」

 

虎が呟いた。

 

「武器です」

 

「それは見りゃ分かる」

 

その通りだった。

 

ラグドールが武器を見回す。

 

「ちょっと待って」

 

「何ですか」

 

「全部違うじゃない」

 

「違いますね」

 

「同じ能力で作った武器には見えないんだけど」

 

「そうでしょうね」

 

「何で?」

 

俺は少しだけ考えた。

 

「作ったからです」

 

沈黙。

 

「は?」

 

今度は全員の声だった。

 

「第五武装《愚者の財宝》」

 

「愚者?」

 

ラグドールが首を傾げる。

 

「自分でそう呼んでるの?」

 

「王とか柄じゃないので」

 

虎が吹き出した。

 

「それは確かに」

 

「納得した」

 

相澤先生まで頷いていた。

 

酷くないだろうか。

 

「で、その愚者の財宝って?」

 

マンダレイが聞く。

 

「想像した武器を作れます」

 

「生成系?」

 

「少し違います」

 

俺は一本の短剣を持ち上げる。

 

「適当に想像しても作れません」

 

「どういうことだ」

 

相澤先生が聞いた。

 

「武器の構造を理解している必要があります」

 

刀身。

 

柄。

 

重心。

 

材質。

 

用途。

 

能力。

 

「全部です」

 

沈黙。

 

ラグドールが引いた顔になった。

 

「待って」

 

「そこまで考えるの?」

 

「考えないと作れません」

 

例えば。

 

炎の剣。

 

それだけじゃ駄目だ。

 

どんな炎か。

 

何度か。

 

何を燃やすのか。

 

刀身は何で出来ているのか。

 

どう発動するのか。

 

全部決めなければならない。

 

「完成したら武器が作られる」

 

「そして」

 

俺は周囲に浮かぶ武器を見上げる。

 

「一度作った武器は保存されます」

 

「保存?」

 

ラグドールが聞き返す。

 

「武器庫の中に」

 

静寂。

 

虎が頭を掻く。

 

「つまり」

 

「そこにある武器全部、お前が考えたのか?」

 

「そうです」

 

「何本ある」

 

「知りません」

 

「知りません?」

 

「数えたことないので」

 

ラグドールが頭を抱えた。

 

「面倒な個性ね……」

 

俺もそう思う。

 

その時だった。

 

土人形が突っ込んでくる。

 

「あ」

 

完全に忘れていた。

 

訓練中だった。

 

仕方なく武器を掴む。

 

一本目。

 

蒼い長槍。

 

投擲。

 

轟音。

 

土人形の胴体が吹き飛んだ。

 

二本目。

 

黒い大剣。

 

射出。

 

二体目を貫通。

 

最後。

 

巨大な戦斧。

 

振る。

 

衝撃波。

 

三体目が真っ二つになった。

 

終了。

 

沈黙。

 

「強くない?」

 

遠くから上鳴の声が聞こえた。

 

「強いな」

 

切島が頷く。

 

「だろうな」

 

轟も頷いた。

 

俺も頷く。

 

まあ。

 

強い。

 

暇な時に少しずつ作っていたら増えた。

 

それだけだ。

 

ラグドールが《サーチ》を発動する。

 

目が光る。

 

数秒。

 

そして。

 

「何これ」

 

珍しく素の声だった。

 

「どうしました」

 

「武器ごとに情報が違う」

 

「そうですね」

 

「能力も性能も全部別」

 

「そうですね」

 

「気持ち悪い」

 

「よく言われます」

 

最近本当によく言われる。

 

相澤先生が腕を組む。

 

「なるほどな」

 

その視線は第五武装へ向いていた。

 

「生成系じゃない」

 

「保管系でもない」

 

「武器を蓄積していく成長型か」

 

少しだけ驚いた。

 

そこまで見抜くとは思わなかった。

 

だが。

 

「そんなところです」

 

否定はしない。

 

面倒だから。

 

そして。

 

誰も気付いていなかった。

 

教師達も。

 

生徒達も。

 

そして遠く離れた場所で映像を見ているオール・フォー・ワンでさえ。

 

少しずつ思い始めていた。

 

七武装輪転。

 

その中で最も厄介なのは。

 

最も強いのは。

 

第五武装《愚者の財宝》なのではないかと。

 

だが。

 

それは勘違いだった。

 

七瀬刃人だけが知っている。

 

まだ誰にも見せていない武装。

 

知られれば面倒事になる武装。

 

出来れば一生出したくない武装。

 

そんなものがまだ残っていることを。

 

続く。

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