七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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襲撃

第7話 襲撃

 

夜。

 

肝試し開始から十分ほどが経過していた。

 

森の中は暗い。

 

月明かりだけが木々の隙間から差し込んでいる。

 

「思ったより普通だな」

 

尾白が周囲を見回した。

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

「もっと何かあるかと思ったんだけどな」

 

俺は黙った。

 

何も無い方がいい。

 

本当に。

 

むしろこのまま朝になってほしい。

 

だが。

 

胸騒ぎだけは消えなかった。

 

ガサッ。

 

森の奥。

 

何かが動く。

 

尾白も気付いたらしい。

 

「ん?」

 

振り返る。

 

しかし何もいない。

 

風で枝が揺れただけ。

 

そう思った。

 

その瞬間だった。

 

ドォォォォォォン!!

 

山全体を揺らす轟音。

 

地面が震えた。

 

鳥が飛び立つ。

 

森が騒めく。

 

沈黙。

 

次の瞬間。

 

「敵襲だぁぁぁぁ!!」

 

教師の怒声が響いた。

 

来た。

 

やっぱり来た。

 

胃が痛くなった。

 

本当に。

 

「七瀬!」

 

尾白が身構える。

 

「どうなってる!?」

 

「ヴィランだろ」

 

「いや分かるけど!」

 

混乱するのも無理はない。

 

森の各所から悲鳴が聞こえる。

 

爆発音。

 

怒号。

 

戦闘音。

 

完全に襲撃だった。

 

「避難するぞ!」

 

尾白が言う。

 

その判断は正しい。

 

正しすぎる。

 

俺もそうしたかった。

 

だが。

 

ガサアァァッ!!

 

木々をなぎ倒しながら巨大な影が現れた。

 

人型。

 

異様な筋肉。

 

濁った眼。

 

脳無。

 

沈黙。

 

「……何だアレ」

 

尾白の声が震えた。

 

俺も知りたい。

 

だが答えは知っている。

 

脳無。

 

人造怪物。

 

面倒極まりない相手だった。

 

脳無がこちらを見る。

 

そして。

 

地面を砕きながら突進した。

 

速い。

 

普通の生徒では対応出来ない。

 

「尾白」

 

「おう!」

 

「下がれ」

 

「何言ってんだ!」

 

「足手まといだ」

 

尾白が固まる。

 

事実だった。

 

脳無は強い。

 

少なくとも生徒だけで相手する敵ではない。

 

だから。

 

「七武装輪転」

 

ルーレットが回る。

 

光が流れる。

 

停止。

 

思わず目を見開いた。

 

「当たりか」

 

第五武装。

 

《愚者の財宝》

 

空間が歪む。

 

黒い波紋。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

十。

 

二十。

 

五十。

 

百。

 

無数。

 

空中へ展開される黒い門。

 

尾白が息を呑む。

 

「おい……」

 

「何だそれ」

 

俺もたまにそう思う。

 

やりすぎだろ。

 

門の向こうで武器が待機する。

 

剣。

 

槍。

 

斧。

 

大剣。

 

短剣。

 

無数。

 

「行け」

 

次の瞬間。

 

武器の雨が解き放たれた。

 

轟音。

 

槍が飛ぶ。

 

剣が飛ぶ。

 

斧が飛ぶ。

 

嵐。

 

砲撃。

 

弾幕。

 

武装の洪水。

 

脳無へ殺到する。

 

爆音。

 

肉が裂ける。

 

骨が砕ける。

 

腕が消える。

 

脚が吹き飛ぶ。

 

胴体が抉れる。

 

だが。

 

再生。

 

肉が盛り上がる。

 

傷が塞がる。

 

脳無は止まらない。

 

「再生した!?」

 

尾白が叫んだ。

 

「そういう相手だ」

 

面倒だ。

 

本当に。

 

しかし。

 

第五武装はもっと面倒だった。

 

さらに門が開く。

 

数十。

 

数百。

 

一斉射出。

 

轟ォォォォン!!

 

脳無の身体が飲み込まれる。

 

再生。

 

破壊。

 

再生。

 

破壊。

 

何度も繰り返される。

 

そして。

 

再生速度が追いつかなくなった。

 

巨大な身体が地面へ沈む。

 

動かない。

 

完全停止。

 

静寂。

 

尾白が呆然と立っていた。

 

「勝った……?」

 

「多分」

 

俺も少し驚いていた。

 

第五武装が出て助かった。

 

本当に。

 

第一でも勝てただろう。

 

第六でも何とかなる。

 

だが。

 

第四だったら終わっていた。

 

そう思う。

 

その時だった。

 

ゾクリ。

 

背筋に寒気が走る。

 

何かがおかしい。

 

脳無は倒した。

 

それなのに。

 

嫌な予感が強くなる。

 

森の奥。

 

暗闇。

 

誰かが見ている気がした。

 

遠く離れた場所。

 

薄暗い部屋。

 

オール・フォー・ワンは静かに微笑んでいた。

 

「素晴らしい」

 

モニターには第五武装。

 

《愚者の財宝》

 

脳無を蹂躙した光景。

 

圧倒的火力。

 

圧倒的殲滅力。

 

確かに魅力的だ。

 

だが。

 

男の関心はそこではない。

 

「まだだ」

 

もっと見たい。

 

もっと知りたい。

 

七瀬刃人を。

 

その視線の先。

 

別のモニターには森の映像。

 

そして。

 

暗闇の奥で。

 

一つの影が静かに動き始めていた。

 

続く。

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