七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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誘拐

第11話 誘拐

 

爆豪勝己が消えた。

 

マンダレイから伝えられた報告。

 

知っていた。

 

原作通りならそうなる。

 

それでも。

 

実際に聞くと気分は最悪だった。

 

「爆豪くんが連れ去られた可能性が高いわ」

 

「そうですか」

 

短く返す。

 

尾白も表情を曇らせた。

 

「マジかよ……」

 

周囲では教師達が慌ただしく動いている。

 

相澤先生。

 

プッシーキャッツ。

 

全員が捜索準備へ入っていた。

 

当然だ。

 

爆豪は雄英の生徒だ。

 

必ず取り戻す。

 

そうなる。

 

その時だった。

 

ドォォォォォン!!

 

森の奥。

 

再び爆発音。

 

全員が振り返る。

 

「まだいるのか!?」

 

尾白が叫んだ。

 

嫌な予感しかしない。

 

俺と尾白は森の奥へ走る。

 

枝を飛び越える。

 

木々を抜ける。

 

そして。

 

見つけた。

 

爆豪勝己。

 

そして。

 

ヴィラン連合。

 

死柄木。

 

荼毘。

 

トガ。

 

黒霧。

 

全員がいた。

 

「爆豪!」

 

切島が叫ぶ。

 

連れ去りの真っ最中だった。

 

黒霧の転移門。

 

原作通り。

 

嫌になるほど原作通り。

 

だが。

 

一つだけ違った。

 

死柄木がこちらを見た。

 

爆豪じゃない。

 

俺を見た。

 

嫌な予感が走る。

 

非常に。

 

嫌な予感だった。

 

「見つけた」

 

死柄木が呟く。

 

その声に。

 

俺は確信した。

 

オール・フォー・ワンだ。

 

あいつの指示だ。

 

死柄木自身じゃない。

 

「七瀬!」

 

切島が叫ぶ。

 

「何とかしろ!」

 

「嫌だ」

 

「今は手伝え!!」

 

正論だった。

 

だが。

 

面倒だった。

 

本当に。

 

黒霧がこちらを見る。

 

「彼も対象です」

 

「ああ」

 

死柄木が頷く。

 

「連れていけ」

 

即答だった。

 

最悪だった。

 

その瞬間。

 

脳裏を過る。

 

無貌。

 

白い空間。

 

終わらない虚無。

 

軍隊型脳無達。

 

感情の無い自分。

 

全部。

 

全部が一気に戻ってくる。

 

「っ……!」

 

吐き気。

 

頭痛。

 

嫌悪感。

 

気持ち悪い。

 

人の精神を壊しかけた。

 

それを。

 

何も感じずにやった。

 

その事実だけが胸に刺さる。

 

「七瀬!」

 

尾白の叫び。

 

我に返る。

 

遅かった。

 

爆豪が転移門へ飲まれる。

 

「クソが!」

 

爆豪が怒鳴る。

 

原作通り。

 

ここまでは。

 

だが。

 

終わらない。

 

黒霧の転移門がさらに広がる。

 

足元。

 

目の前。

 

背後。

 

嫌な位置だった。

 

「七武装輪転――」

 

発動しようとする。

 

出来る。

 

個性は使える。

 

問題ない。

 

だが。

 

ほんの一瞬。

 

迷った。

 

無貌の残滓。

 

感情の揺れ。

 

その僅かな遅れ。

 

黒霧は見逃さなかった。

 

「捕捉」

 

黒い霧が身体へ絡み付く。

 

「チッ!」

 

鎖でも。

 

第五武装でも。

 

間に合う。

 

本来なら。

 

間に合った。

 

だが。

 

その一瞬が致命的だった。

 

「七瀬ぇぇぇ!!」

 

切島が走る。

 

尾白も飛び出す。

 

轟の氷が地面を駆ける。

 

間に合わない。

 

世界が歪む。

 

視界が暗くなる。

 

そして。

 

消えた。

 

転移後

 

コンクリート。

 

鉄骨。

 

薄暗い倉庫。

 

知らない場所。

 

足が地面へ着く。

 

思わずため息を吐く。

 

そして。

 

目の前を見る。

 

爆豪勝己。

 

縛られていた。

 

爆豪もこちらを見る。

 

沈黙。

 

数秒。

 

見つめ合う。

 

そして。

 

「何でお前までいるんだよ!!」

 

「俺も聞きたい」

 

本気だった。

 

原作なら。

 

ここにいるのは爆豪だけ。

 

それだけだった。

 

だが今は違う。

 

完全に違う。

 

爆豪。

 

そして。

 

七瀬刃人。

 

二人が捕虜になっていた。

 

「最悪だな」

 

「それは同意する」

 

珍しく。

 

爆豪と意見が一致した。

 

その頃。

 

別室。

 

モニターが並ぶ空間。

 

オール・フォー・ワンは静かに微笑んでいた。

 

爆豪勝己。

 

そして。

 

七瀬刃人。

 

二人の姿が映っている。

 

本来の計画は爆豪だけだった。

 

だが。

 

無貌を見た瞬間。

 

予定は変わった。

 

仮面舞踏会。

 

いや。

 

無貌。

 

あれは危険だ。

 

危険過ぎる。

 

だから。

 

今すぐ確保する必要があった。

 

「ようやく会えた」

 

静かな声。

 

優しい声。

 

だからこそ不気味だった。

 

男の視線は爆豪ではない。

 

七瀬刃人へ向いている。

 

「歓迎しよう」

 

その言葉に。

 

七瀬は遠くない未来を予感していた。

 

神野。

 

原作が大きく変わる。

 

そんな予感だけが。

 

妙に強く胸に残っていた。

 

続く。

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