七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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仮免試験
白焔の代償


第1話 白焔の代償

 

目を覚ました時。

 

最初に見えたのは白い天井だった。

 

消毒液の匂い。

 

規則的な電子音。

 

病室。

 

そこでようやく思い出す。

 

神野。

 

オール・フォー・ワン。

 

そして。

 

白焔。

 

身体を起こそうとしてやめた。

 

全身が痛い。

 

「起きたかい」

 

横から声がした。

 

見る。

 

爆豪勝己だった。

 

椅子に座っている。

 

腕を組んだまま。

 

不機嫌そうな顔で。

 

「どうしてここにいる?」

 

七瀬が聞く。

 

爆豪は鼻を鳴らした。

 

「暇だったんだよ」

 

嘘だ。

 

誰よりも分かる。

 

こいつは暇だから見舞いに来るような奴じゃない。

 

少しだけ沈黙が流れる。

 

やがて爆豪が口を開く。

 

「あの光」

 

神野。

 

白焔。

 

思い出したくもない記憶。

 

爆豪は続ける。

 

「テメェだろ」

 

沈黙。

 

病室が静かになる。

 

七瀬は窓の外を見る。

 

空は青かった。

 

何もなかったみたいに。

 

「何が」

 

即答。

 

爆豪は舌打ちした。

 

「チッ」

 

だが。

 

それ以上は聞かなかった。

 

それが爆豪なりの気遣いだった。

 

その後。

 

緑谷。

 

轟。

 

切島。

 

飯田。

 

次々と病室へ現れる。

 

静かだった病室が騒がしくなる。

 

七瀬は少しだけ笑った。

 

うるさい。

 

本当に。

 

だが嫌ではなかった。

 

神野を忘れられるくらいには。

 

数日後。

 

退院。

 

病院の外へ出る。

 

深く息を吸う。

 

久しぶりの自由。

 

だが。

 

同時に面倒事の匂いもしていた。

 

雄英高校。

 

校門前。

 

相澤消太が待っていた。

 

「ようやく来たか」

 

「何の用だ」

 

即座に聞く。

 

相澤はため息を吐く。

 

「俺も帰りたい」

 

本音だった。

 

七瀬は少しだけ同情した。

 

「校長室だ」

 

嫌な予感がした。

 

「根津か」

 

「いる」

 

「帰る」

 

「帰れない」

 

即答。

 

七瀬は空を見上げる。

 

平穏が欲しい。

 

ただそれだけなのに。

 

「面倒だな」

 

「同感」

 

珍しく意見が一致した。

 

そして。

 

相澤が最後の一言を告げる。

 

「公安も来てる」

 

沈黙。

 

終了だった。

 

完全に。

 

神野。

 

白焔。

 

マテリアル・バースト。

 

その話以外にあり得ない。

 

校長室。

 

重い空気。

 

根津。

 

相澤。

 

オールマイト。

 

そして公安委員会。

 

七瀬は席に座る。

 

開始早々。

 

神野の映像が流れた。

 

白い閃光。

 

崩壊した倉庫街。

 

そして。

 

白焔。

 

「確認だが」

 

相澤が言う。

 

「あれの光は何だ」

 

七瀬は少し考える。

 

そして答えた。

 

「第二武装最大火力」

 

会議室が静まる。

 

公安が聞く。

 

「威力は」

 

「分からない」

 

本音だった。

 

「本気で撃ったことないし」

 

全員が頭を抱えた。

 

根津が苦笑する。

 

「じゃあ質問を変えよう」

 

「最大出力でどれだけの威力が出せる?」

 

七瀬は少し考える。

 

そして。

 

静かに答えた。

 

「理論上でいいなら」

 

全員が見る。

 

「星ぐらいなら壊せる」

 

沈黙。

 

完全な沈黙。

 

公安のペンが止まる。

 

オールマイトが頭を押さえる。

 

根津の笑顔も固まる。

 

「聞き間違いかな」

 

「星と言ったかい?」

 

「言ったけど」

 

即答だった。

 

空気が凍る。

 

「君はこれから公安の管理対象とする」

 

公安が言う。

 

「マテリアル・バーストはあまりにも危険過ぎる」

 

「国家管理が必要だ」

 

七瀬は数秒考えて。

 

静かに聞いた。

 

「そうならないために」

 

「俺は元々どこにいた?」

 

誰も答えない。

 

「普通科だ」

 

会議室が静かになる。

 

「危険なんだろ?」

 

「制御出来ないかもしれないんだろ?」

 

「だから普通科にいた」

 

七瀬は公安を見る。

 

「なのに俺強制的にをヒーロー科へ移したのは誰だ?」

 

沈黙。

 

「雄英だ」

 

「公安だ」

 

さらに続ける。

 

「雄英が公安に逆らえないのは知ってる」

 

相澤が目を閉じる。

 

「だから雄英を責めるつもりはない」

 

「でも」

 

視線が公安へ向く。

 

「危険だから管理する?」

 

「都合が良すぎるんじゃないか?」

 

誰も反論できない。

 

「危険だと知ってた」

 

「それでもヒーロー科へ上げた」

 

「その結果が神野だ」

 

公安が苦し紛れに言う。

 

「万が一の場合」

 

「関係者を保護することもできるんだぞ」

 

その瞬間。

 

七瀬の目が変わった。

 

冷たい。

 

神野で見せた目。

 

「園には手を出すな」

 

空気が凍る。

 

「先生にも」

 

「子供達にも」

 

「絶対にだ」

 

公安が睨む。

 

「脅迫か?」

 

七瀬は首を振った。

 

「違う」

 

即答。

 

「これは善意による忠告だ」

 

静かな声。

 

だからこそ重い。

 

「俺は暴れない」

 

「法律も守る」

 

「平穏が好きだ」

 

そこで一度言葉を切る。

 

「でも」

 

公安を見る。

 

真っ直ぐ。

 

「園を利用するなら」

 

「人質にするなら」

 

「脅しに使うなら」

 

短く息を吐く。

 

「その時はヴィランもヒーローも容赦しなく殺す」

 

誰も喋れない。

 

神野の白焔を。

 

全員が思い出していた。

 

七瀬は心の中でため息を吐く。

 

正直。

 

考え過ぎだった。

 

第二武装。

 

確かに強い。

 

だが。

 

そもそも出ない。

 

本当に出ない。

 

神野で引いたのだって奇跡だ。

 

マテリアル・バーストなんて。

 

もう二度と使いたくない。

 

「俺は兵器になるために雄英へ来たんじゃない」

 

立ち上がる。

 

出口へ向かう。

 

そして最後に言った。

 

「平穏を手に入れるために来たんだ」

 

誰も。

 

その言葉を否定できなかった。

 

続く。

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