七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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ヴィラン襲来

第6話 ヴィラン襲来

 

ビーッ!!

 

ビーッ!!

 

ビーッ!!

 

耳障りな警報音が崩壊都市に響き渡る。

 

救助活動を続けていた受験者達が一斉に顔を上げた。

 

避難民役の人々も不安そうに周囲を見回す。

 

そして。

 

会場中央に設置された巨大モニターが点灯した。

 

『緊急事態発生』

 

『ヴィラン集団による襲撃を確認』

 

ざわめきが広がる。

 

誰もが息を飲んだ。

 

次の瞬間。

 

ドォォォォォン!!!

 

凄まじい轟音。

 

遠方の建物が揺れた。

 

黒煙が立ち上る。

 

そしてその煙の中から。

 

巨大な影が姿を現した。

 

「っ……」

 

誰かが息を呑む。

 

そこにいたのは。

 

シャチのような顔。

 

黒いコート。

 

巨大な体躯。

 

圧倒的な威圧感。

 

プロヒーロー。

 

ギャングオルカ。

 

その後ろにはヴィラン役のプロヒーロー達も並んでいる。

 

会場の空気が一瞬で変わった。

 

「ギャングオルカだ……」

 

「マジかよ……」

 

「本物じゃねぇか……」

 

多くの受験者達が足を止める。

 

ただ立っているだけ。

 

それだけなのに強者だと分かる。

 

格が違う。

 

そう感じさせる存在感だった。

 

ギャングオルカは周囲の受験者達を見渡した。

 

そして低い声で告げる。

 

「ヒーロー候補生」

 

静寂。

 

「守るべき者を守ってみせろ」

 

次の瞬間。

 

ヴィラン役達が動き出した。

 

轟音。

 

悲鳴。

 

叫び声。

 

あちこちで混乱が発生する。

 

避難民役達もパニックになった。

 

「ヴィランだ!!」

 

「逃げろ!!」

 

「助けて!!」

 

人が走る。

 

押し合う。

 

転ぶ。

 

避難経路は瞬く間に混乱状態となった。

 

受験者達も焦り始める。

 

「ヴィランを止めろ!」

 

「いや違う!避難誘導だ!」

 

「負傷者がいるぞ!」

 

「こっちもだ!!」

 

現場が崩れていく。

 

どれが正解なのか。

 

誰も分からない。

 

それこそが試験だった。

 

ギャングオルカは戦いながら見ている。

 

誰が真っ先に戦闘へ向かうのか。

 

誰が避難民を守るのか。

 

誰がパニックになるのか。

 

その全てを。

 

評価していた。

 

「来い」

 

ギャングオルカが一歩踏み出す。

 

その圧力に何人もの受験者が飛び出した。

 

戦闘開始。

 

個性が飛ぶ。

 

衝撃が走る。

 

しかし。

 

圧倒的だった。

 

一撃。

 

それだけで数人が吹き飛ぶ。

 

「ぐっ!?」

 

「強すぎる……!!」

 

当然である。

 

相手は現役トップクラスのプロヒーロー。

 

学生が簡単に勝てる存在ではない。

 

だが。

 

ギャングオルカは追撃しない。

 

吹き飛んだ受験者を見もしない。

 

代わりに。

 

別の方向へ視線を向けていた。

 

七瀬だった。

 

七瀬は戦場を見ていた。

 

ギャングオルカ。

 

ヴィラン役の試験管として。

 

混乱する避難民。

 

負傷者。

 

泣いている子供。

 

倒れた高齢者。

 

全てを見る。

 

そして。

 

小さく呟いた。

 

「救助が先だな」

 

ジャラリ。

 

戒律の鎖が揺れる。

 

七瀬は迷わず避難民へ向かった。

 

「立てるか」

 

転倒した男性へ手を差し伸べる。

 

「え、あ……」

 

「走れるなら走れ」

 

男性を立たせる。

 

そのまま安全な方向へ誘導。

 

さらに。

 

近くで泣いていた子供を見つける。

 

「お母さんが……」

 

「離れてしまったのか」

 

頷く。

 

七瀬は鎖を伸ばした。

 

ジャラリ。

 

鎖が地面を滑る。

 

人混みの中を抜ける。

 

そして。

 

避難民役の女性へ到達した。

 

「いたな」

 

「え?」

 

母親が驚く。

 

数秒後。

 

親子は再会した。

 

泣きながら抱き合う。

 

その様子を採点役が見ていた。

 

端末へ記録が加えられる。

 

高評価。

 

一方。

 

別の受験者が叫んだ。

 

「おい!」

 

七瀬が振り向く。

 

ヴィラン役と交戦していた受験者だった。

 

「手伝え!」

 

「このままじゃ突破される!」

 

必死な声だった。

 

だが。

 

七瀬は首を振る。

 

「無理だ」

 

「は?」

 

「今は避難民が優先だ」

 

受験者が言葉を失う。

 

その隙に。

 

ギャングオルカの攻撃が炸裂した。

 

ドォン!!

 

受験者達が吹き飛ぶ。

 

圧倒的。

 

だが。

 

ギャングオルカは七瀬を見ていた。

 

救助を優先している。

 

戦闘ではなく。

 

守るべき相手を見ている。

 

その判断を。

 

観察していた。

 

「なるほどな」

 

ギャングオルカが呟く。

 

近くにいたサイドキックが振り向く。

 

「どうしました?」

 

「あの受験生だ」

 

七瀬を見る。

 

「珍しく戦うべき相手を理解している」

 

試験官が頷く。

 

確かにその通りだった。

 

この試験はヴィラン討伐試験ではない。

 

救助試験だ。

 

だから。

 

最優先は人命。

 

七瀬はそれを理解している。

 

その頃。

 

別の場所では負傷者役が瓦礫の下に取り残されていた。

 

七瀬は鎖を伸ばす。

 

索敵。

 

反応。

 

二名。

 

即座に位置を把握する。

 

「下か」

 

瓦礫へ鎖を巻き付ける。

 

固定。

 

さらに周囲の受験者へ声を掛ける。

 

「手伝え」

 

「お、おう!」

 

数人が集まる。

 

持ち上げる。

 

救出。

 

負傷者役を運ぶ。

 

応急処置。

 

避難。

 

手際が良い。

 

派手さはない。

 

だが無駄もない。

 

遠くから見ていた受験者が呟いた。

 

「アイツ……」

 

「救助ばっかりだな」

 

「でも正しいような気がする」

 

「猫の人なのに」

 

最後だけ余計だった。

 

しかし。

 

誰も否定できなかった。

 

気付けば。

 

七瀬の周囲では助かった人が増えている。

 

戦果ではない。

 

救助者数だ。

 

それがヒーローとしての成果だった。

 

そして。

 

ギャングオルカはそんな七瀬を見つめながら。

 

静かに口元を緩める。

 

試験終了まで残りわずか。

 

ヒーロー候補生達の資質は。

 

既に少しずつ少しずつ見え始めていた。

 

第7話へ続く。

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