七武装輪転の転生者は平穏に暮らしたい   作:ポーンδ

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合格

第7話 合格

 

ビーッ!!

 

ビーッ!!

 

試験終了を告げる警報が会場へ響き渡る。

 

その瞬間。

 

張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。

 

救助活動を続けていた受験者達が足を止める。

 

疲労。

 

安堵。

 

達成感。

 

様々な表情が浮かんでいた。

 

七瀬も最後の避難民役を安全地帯へ送り届ける。

 

「ありがとうございました」

 

避難民役の女性が頭を下げる。

 

七瀬も軽く会釈した。

 

それだけだった。

 

必要以上の言葉はない。

 

すると。

 

近くの受験者が苦笑した。

 

「お前さ」

 

「何だ」

 

「もうちょっと愛想よく出来ないのか?」

 

七瀬は少し考えた。

 

そして。

 

「助かったなら問題ないだろう」

 

真面目に答える。

 

受験者は頭を抱えた。

 

「そういうとこだよ……」

 

意味が分からなかった。

 

そのまま受験者達は広場へ集められる。

 

全員が結果発表を待っていた。

 

静かな緊張感。

 

誰もが自分の結果を気にしている。

 

そして。

 

ヒーロー公安委員会の職員達が封筒を配り始めた。

 

「試験結果はこちらになります」

 

ざわつく会場。

 

受験者達が次々に封筒を受け取る。

 

七瀬も一つ受け取った。

 

しばらく見つめる。

 

特に緊張はしていない。

 

ただ。

 

結果は少し気になった。

 

封を開く。

 

中から一枚の用紙を取り出す。

 

そこには簡潔に記されていた。

 

七瀬刃人

 

結果:合格

 

総合評価点:94点

 

評価内容

 

要救助者発見能力 A+

 

負傷者対応    A+

 

避難誘導     A

 

状況判断     A+

 

冷静性      A+

 

チーム連携    B

 

コミュニケーション B

 

総評

 

救助対象の発見能力、救助判断、応急処置能力を高く評価。

 

特に混乱した状況下でも冷静さを失わず、要救助者の優先順位を適切に判断した点は非常に優秀である。

 

一方、周囲との情報共有不足が見られた。

 

また救助対象への精神的配慮や説明が不足しており、不安軽減という観点で改善の余地がある。

 

ヒーローは人命を救うだけではなく、人々に安心感を与える存在である。

 

以上の理由により6点減点。

 

総合評価94点。

 

仮免許取得を認可する。

 

七瀬はしばらく紙を見つめた。

 

「94点」

 

高いのか低いのか。

 

正直よく分からない。

 

ただ。

 

合格らしい。

 

それだけは理解した。

 

すると。

 

隣から声が聞こえた。

 

「うわっ」

 

反射的に視線を向ける。

 

近くの受験者だった。

 

結果用紙を見ている。

 

「94点!?」

 

大声だった。

 

周囲が反応する。

 

「何点だって?」

 

「94!」

 

「高っ!?」

 

「マジかよ!」

 

一気に人が集まってくる。

 

七瀬は少し後ろへ下がった。

 

「何だ」

 

「何だじゃねぇ!」

 

受験者が叫ぶ。

 

「94点とか上位組じゃねぇか!」

 

「そうなのか」

 

「そうなんだよ!」

 

別の受験者も結果用紙を見る。

 

そして妙に納得した顔になった。

 

「あー」

 

「ん?」

 

「これだ」

 

評価欄を指差す。

 

「救助関係ほぼ満点じゃん」

 

周囲も覗き込む。

 

「マジだ」

 

「要救助者発見A+」

 

「状況判断もA+」

 

「そりゃ高ぇわ」

 

さらに読み進める。

 

そして。

 

全員が同じ場所で止まった。

 

チーム連携 B

 

コミュニケーション B

 

沈黙。

 

数秒後。

 

全員が納得した。

 

「あぁ」

 

「納得」

 

「納得だわ」

 

七瀬が首を傾げる。

 

「何がだ」

 

一人が答える。

 

「お前全然喋ってないだろ」

 

「必要最低限だったな」

 

「それが原因だよ!」

 

即答だった。

 

別の受験者も頷く。

 

「救助は凄かった」

 

「うん」

 

「判断も早かった」

 

「うん」

 

「でも説明不足だった」

 

七瀬は少し考える。

 

確かに。

 

「立てるか」

 

「歩けるか」

 

「行こう」

 

大体それしか言っていない。

 

「あと安心感な」

 

「安心感?」

 

「助けるだけじゃなくて安心させないと」

 

「……なるほど」

 

少しだけ納得した。

 

すると。

 

別の受験者が言った。

 

「まあ一番の減点理由は別だと思うけど」

 

「?」

 

全員が頷く。

 

そして。

 

声を揃えた。

 

「機械みたいにしゃべっているからだろうけど」

 

完全に沈黙。

 

七瀬だけが納得していなかった。

 

その時だった。

 

前方へギャングオルカが進み出る。

 

騒がしかった会場が静まり返った。

 

圧倒的な存在感。

 

誰も口を開かない。

 

ギャングオルカは全員を見渡す。

 

そして。

 

低い声で告げた。

 

「勘違いするな」

 

張り詰める空気。

 

「我々はお前達を認めた訳ではない」

 

誰も反論しない。

 

「仮免許とは」

 

「ヒーローとして最低限の活動資格だ」

 

静寂。

 

「我々が見たのはお前達の優秀さではない」

 

鋭い視線が会場を貫く。

 

「未熟さだ」

 

「弱さだ」

 

「甘さだ」

 

「欠点だ」

 

重い言葉だった。

 

しかし。

 

合格した者も不合格だった者も。

 

誰も否定できない。

 

試験中。

 

全員が失敗した。

 

全員が迷った。

 

全員が間違えた。

 

「それでも活動を許可できると判断された者が合格した」

 

会場が静まり返る。

 

「慢心するな」

 

「学び続けろ」

 

「プロの世界は甘くない」

 

そして最後に。

 

ギャングオルカは短く告げた。

 

「以上だ」

 

それだけだった。

 

だが。

 

誰よりも重い言葉だった。

 

解散。

 

受験者達がそれぞれ帰路につく。

 

七瀬も出口へ向かう。

 

ポケットの中には結果用紙。

 

94点。

 

高いらしい。

 

しかし。

 

そこに書かれていた言葉だけが引っ掛かっていた。

 

『ヒーローは人々に安心感を与える存在である』

 

数秒考える。

 

そして。

 

小さく呟いた。

 

「次はもう少し説明するか」

 

その瞬間。

 

近くにいた受験者達が一斉に振り返る。

 

「猫の話は禁止な」

 

「絶対だからな」

 

「そこだけは直さなくていい」

 

「頼むからやめてくれ」

 

即座に止められた。

 

七瀬は首を傾げる。

 

最後まで理由は分からなかった。

 

だが。

 

仮免許は取得できた。

 

ヒーローへの道を。

 

また一歩進んだのだった。

 

仮免許試験編・完

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