ヒーロー個性学 教科書 第12版
特別研究項目 No.77
《七武装輪転》
保持者:七瀬刃人
個性史上、最も解析困難だった個性の一つ。
初期には単純な武器生成系個性として扱われていたが、後年の研究によって複数の系統を内包する特殊複合個性であることが判明した。
《七武装輪転》は七種類の武装を保有し、発動時に出現する特殊なルーレットによって使用武装が決定される。
保持者自身による選択は不可能。
さらに、
武装の任意選択不可
任意解除不可
同時使用不可
武装ごとの解除条件あり
という共通制約を持つ。
運用難易度は極めて高いが、全武装が単独で上位個性に匹敵する性能を持つため、
「最強個性候補の一角」
として後世に記録されている。
第一武装
《戒律の鎖》
拘束・支援・救助特化武装。
確認されている能力は、
拘束
索敵
治療
制約付与
個性封印
の五種類。
戦闘能力と救助能力を高次元で両立している。
第二次仮免許試験では多数の要救助者を発見し、救助活動で高評価を獲得した。
第二武装
《双銃・崩壊と再生》
七武装最強。
そして七瀬刃人が国家危険個体候補として認識される最大要因となった武装。
黒銃《崩壊》と白銃《再生》によって構成される。
黒銃《崩壊》
対象を情報レベルで分解する能力。
対象は、
人体
武器
建造物
個性現象
などほぼ全て。
単純な破壊能力としては歴史上でも最高峰とされる。
白銃《再生》
対象を二十四時間以内で最も正常だった状態へ復元する能力。
骨折
欠損
火傷
重傷
などを完全修復可能。
治療個性としても最高峰に分類される。
禁忌能力
《マテリアル・バースト》
双銃・崩壊と再生の最終奥義。
そして七瀬刃人最大火力。
能力
対象物を《崩壊》によって情報レベルまで完全分解。
その際に発生した莫大なエネルギーを収束・圧縮し、一撃の砲撃として解放する。
本質的には、
「分解エネルギーの強制放出」
である。
理論値
個性学会による試算では、
十分な質量と出力を確保できた場合、
大陸規模の破壊はもちろん、
理論上は惑星ですら破壊可能なエネルギー量へ到達する可能性がある
と結論付けられている。
もっとも、保持者自身がその出力へ耐えられないため、実現可能性は理論上のみとされる。
初使用記録
神野事件。
七瀬刃人はオール・フォー・ワンとの戦闘で本能力を初使用した。
この一撃によってオール・フォー・ワンは七瀬刃人を、
「ワン・フォー・オール級の価値を持つ個性保持者」
として認識したとされる。
欠点
凄まじい反動を伴う。
使用後は著しく消耗し、戦闘継続能力が大幅に低下する。
連続使用は不可能。
そのため生涯を通して切り札扱いされた。
第三武装
《深海の釣竿》
索敵・奇襲特化武装。
確認されている能力は、
障害物透過
生体探知
内部攻撃
捕縛
である。
正面戦闘には向かないが、対能力者戦では非常に高い性能を発揮した。
第四武装
《機導兵装》
変身型武装。
保持者自身が乗り物へ変形する能力。
確認されている形態は、
高速バイク形態
装甲車形態
飛行形態
重機形態
など。
戦闘能力は七武装中で低い部類だが、
人員輸送
物資輸送
災害救助
復興支援
では圧倒的な実績を残している。
後世では、
「最もヒーローらしい武装」
との評価を受けた。
第五武装
《愚者の財宝》
武装保管型武装。
空間へ漆黒の門を展開し、その内部に保存された武器を呼び出す能力。
後に
「黒き武器庫」
という異名で呼ばれるようになる。
能力
武器創造
武器保存
武器射出
即時換装
極めて高い汎用性を誇り、近接戦闘から遠距離戦闘まで対応可能。
制約
武器を創造するためには、
設計図を書けるレベルで完全理解していること
が必要。
理解が必要な項目は、
構造
材質
動作原理
内部機構
など。
理解不足の武器は創造不可能。
逆に完全に理解している場合、現実には存在しないオリジナル武器の創造も可能。
そのため、
知識量がそのまま戦闘力へ直結する武装
として知られている。
第六武装
《死告の鎌 モルス》
長期戦特化武装。
攻撃命中時に《死蝕印》を刻む。
第一印
身体能力低下
第二印
平衡感覚低下
第三印
疲労蓄積
第四印
個性出力低下
第五印
判断力低下
第六印
聴覚喪失
第七印
視覚喪失
長引くほど優位性が増していくため、
「最も戦いたくない武装」
として恐れられた。
第七武装
《仮面舞踏会》
七武装輪転最大の謎。
そして個性学史最大の未解決案件。
能力は極めて単純。
視認・解析した個性を仮面へ保存し、その劣化版を使用する。
しかし研究者達が真に驚いたのはその先にある。
仮面人格変化現象
《仮面舞踏会》最大の特徴。
保持者は仮面を装着すると人格傾向が変化する。
完全な人格交代ではない。
しかし思考様式そのものが明確に変質する。
学会ではこの現象を
「仮面人格変化現象」
と呼称している。
怒りの仮面
個性:《闘争本能》
人格傾向は好戦的になる。
戦闘そのものを楽しむ思考へ変化し、戦うことへの躊躇いが著しく減少する。
負傷への恐怖も薄れるため、
本来なら撤退する状況でも前進を選ぶ傾向が確認されている。
学会では
「狂戦士型人格変化」
と分類している。
哀劇の仮面
個性:《水操作》
人格傾向は冷静さと協調性の向上。
感情の起伏が小さくなり、状況を俯瞰して判断する傾向が強まる。
他者との連携能力も向上するため、
保持者自身からも高い評価を受けていた。
学会では
「調停者型人格変化」
と記録されている。
微笑の仮面
個性:《投射呪法(劣化)》
人格傾向は攻撃的かつ傲慢。
戦闘能力への自信が極端に高まり、自身の優位を疑わなくなる。
速度と効率を最優先する思考へ変化し、
遠回りな戦法を極端に嫌う。
また挑発的な発言が増加する傾向も確認されている。
学会では
「天才型戦闘思考への人格変化」
と分類されている。
賢者の仮面
個性:《大賢者(劣化)》
人格変化が最も顕著な仮面の一つ。
感情の優先順位が低下し、合理性を最重視する思考へ変化する。
個人の感情よりも成功確率や利益を優先して判断する傾向が強い。
戦闘中でも冷静さを失わず、常に最適解を探索し続ける。
学会では
「超合理主義型人格変化」
と分類されている。
憤怒の仮面
個性:《生命進化》
人格変化が最も大きい仮面。
最大の特徴は圧倒的な自信。
自らを生物として最上位の存在と認識し、
敗北する可能性そのものを考慮しなくなる。
一方で知性や判断能力は失われない。
むしろ向上する傾向が確認されている。
また環境への適応と生存を最優先する思考となり、
危機的状況ほど冷静になる。
研究資料では
「最も七瀬刃人らしくない仮面」
と記録されている。
無貌の仮面
個性:《夢牢》
人格傾向は感情表現の極端な低下。
会話量が減少し、
他者との距離感も希薄になる。
対象を人間ではなく観察対象として認識する傾向が強くなるため、
人格への影響は最も危険視された。
七瀬刃人自身も使用を避け、
生涯を通じて最終手段として扱っている。
学会では
「感情希薄化型人格変化」
と分類している。
観測者の仮面
個性:《猫は選択者》
仮免許第一次試験で初確認された仮面。
《仮面舞踏会》の中でも特に危険視された能力の一つ。
能力
世界には無数の可能性が存在する。
成功。
失敗。
命中。
回避。
生存。
敗北。
《猫は選択者》は、その中から一つの結果を選択する能力である。
使用例
攻撃が外れる可能性がある → 外れる
相手が躊躇う可能性がある → 躊躇う
発見されない可能性がある → 発見されない
など。
可能性が存在する限り選択可能。
制約
不可能は選択できない。
可能性が零の結果には到達できない。
あくまで
「存在する未来の選択」
であり、
未来そのものを創造する能力ではない。
人格変化
最も異常とされた人格変化。
保持者自身が学習していない知識を語り始める事例が確認されている。
また物事を第三者視点から観察する傾向が非常に強くなる。
仮免許試験中にはシュレーディンガーの猫について突然講義を始めた。
理解できた受験生は確認されていない。
後年本人は、
「何で知っていたのか分からない」
「何で話したのかも分からない」
と証言している。
学会では
「観測者人格への変質」
と記録されている。
個性出典不明問題
《仮面舞踏会》に保存された能力群は個性登録記録と一致しない。
確認されている能力は、
猫は選択者
投射呪法
大賢者
生命進化
夢牢
など。
対応する個性保持者は歴史上発見されていない。
再現元不明問題
さらに不可解なことに、
《仮面舞踏会》は本来、
「解析した個性を保存する武装」
である。
しかし、
猫は選択者
投射呪法
大賢者
生命進化
夢牢
については、
誰から解析したのかその記録自体が存在しない。
これが個性学会最大の謎とされている。
個性学会総評
《七武装輪転》は、
武装系。
能力系。
変身系。
収集系。
その全ての特徴を併せ持つ特殊個性である。
しかし研究者達が最も恐れたのは、
第二武装《双銃・崩壊と再生》でも、
第六武装《死告の鎌 モルス》でもない。
第七武装《仮面舞踏会》である。
理由は単純。
出典不明
再現元不明
発生原理不明
人格変化機能あり
という個性学では説明できない要素を内包しているからである。
そのため《七武装輪転》は後世において、
「最強個性候補の一角」
であると同時に、
「最も多くの謎を残した個性」
として記録されている。
教科書補足
「本人ですら説明できない能力を第三者が説明できるはずがない。」
― 相澤消太
「何で観測者が出てきたのか俺にも分からない。」
「シュレーディンガーの猫の話をした理由も分からない。」
― 七瀬刃人 晩年インタビュー
この二つの証言は、現在でも個性研究者達を悩ませ続けている。
元ネタの能力が知りたい人は質問してください。