境界記録帯(ゴーストライナー)×ストーンワールド   作:ターミナル カフェ

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注意事項

・本作品は『Fate/Grand Order』×『Dr.STONE』のクロスオーバー二次創作です。

・原作には存在しないオリジナルキャラクター、オリジナル設定が登場します。

・原作キャラクターの設定や関係性に独自解釈・改変があります。

・原作とは異なる歴史、展開、世界観が存在します。

・今後の展開によっては、複数のFateシリーズ作品および関連作品の設定を扱う予定です。

以上の点をご了承いただいた上で、お楽しみください。


第三話「カルデア」

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 第三話「カルデア」

 

「――ようこそ、人理継続保障機関カルデアへ」

 白い光の中から、誰かの声が響いていた。顔は見えない。声の主が男なのか女なのか、それすら曖昧なのに、なぜかその言葉だけはひどく懐かしい。

「ここは、魔術だけでは見えない世界と、科学だけでは計れない世界を同時に観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐための機関です」

 その瞬間、映像に激しいノイズが走った。記憶そのものが拒絶しているように、色が潰れ、声が途切れる。それでも断片だけは残る。

 霊長の世が定まり、数千年。人類をより長く、より確実に繁栄させるための理――人類史という巨大な航海図。魔術世界では、それを「人理」と呼ぶ。未来を保証するものではない。だが、無数の選択と積み重ねによって、現在へ繋がってきた人類の道筋そのものだ。

 カルデアは、その道筋が突然断ち切られないよう観測し続ける場所だった。

 

「達人。お前は、この夜空をどう見る?」

 場面が切り替わる。幼い少年が、誰かと並んで夜空を見上げている。満天の星。凍えるほど澄んだ空気。少年――幼い達人は、問いかけの意味をよく分かっていないらしく、少し考えてから笑った。

「ぼくは、お父さんたちのお話がだいすき!」

「そうか」

 隣の人物が、小さく笑った気配がした。

「だが、それは彼らの物語だ。いつかお前自身が世界を旅して、自分の目で確かめるといい。英雄の話を聞くだけではなく、その英雄が何を見て、何を選んだのかをな」

 少年は意味を理解しないまま、「うん!」と元気よく頷いた。

 ノイズが走る。誰と話していたのか、顔だけが黒く塗り潰される。

 

 西暦二〇一五年。魔術師は過去に積み重ねられた神秘を扱い、科学者は未来へ向かって技術を積み上げる。本来なら交わりにくい二つの学問だったが、カルデアの目的の前では同じ方向を向いていた。

 ――人類が、より長く存続すること。

 そのために未来を観測し、地球環境を監視し、人類史そのものを計測する。観測は順調だった。少なくとも百年先まで、人類史は存続すると考えられていた。

 しかし、ある日を境に未来領域が消失した。

 何度計算しても結果は変わらない。人類の未来は途中で途切れ、その先が観測できない。そして解析の結果、人類は近い未来に滅亡すると判断された。

 同じころ、日本のある地方都市に、通常の観測では捉えられない異常領域が確認された。カルデアはそこを人類史消失の原因候補と判断し、過去へ干渉するための実験を決行する。

 時間を越えて過去へ向かい、歴史から外れた異常を修正する行為。

 ――聖杯探索。グランドオーダー。

 だが、その言葉が意味を結ぶより先に、また記憶が砕けた。

 

「ねぇ、涼音。どうして、私たちのそばにいてくれるの?」

 今度は幼い涼音だった。知らない女性の隣に座り、首をかしげている。女性の顔も、名前も、まるでそこだけ紙を破り取ったように認識できない。

「■■■は、さびしくないの?」

「……確かに、さびしいかもね」

 女性はそう言って、涼音の頭を優しく撫でた。

「だけど、私たちは■■の化身。■■■■■■■よ。だから、あなたたちが笑っていられるなら、それでいいの」

「よくわかんない」

「今は、それでいいよ」

 幼い涼音が頬を膨らませる。女性は楽しそうに笑っていた。その笑顔を、涼音は知っている。とても大事な人だったはずなのに――名前が出てこない。

 ノイズが走る。

 

「あいつらの子供とはな……」

 今度は、金色の鎧を纏った人物が二人の前に立っていた。豪奢な装飾。傲岸不遜な笑い声。幼い兄妹を見下ろすその瞳には、面白がっているような色と、遥か先まで見通しているような知性が同居している。

「よもや、七つの■■■を攻略し、人理に証明を刻んだ者たちが――こんな普通の生活を選ぶとはな。フハハハハハハ!」

 幼い達人が涼音を庇うように前へ出た。相手が何者か理解していないのに、妹を守ろうとする癖だけは、このころから変わらない。

「よろこべ、雑種の童どもよ。貴様らには、退屈とは程遠い運命が待っている」

 何を言っているのか分からない。けれど、その声にも覚えがあった。

 ノイズが走る。もう一度。さらにもう一度。

 断片だった記憶が、今度は引き裂かれるように崩れていく。

 ――俺は、何かを忘れている。

 ――私は、何かを忘れている。

「俺は……何を忘れてる?」

「私は……何を忘れてるの?」

 問いに答える者はいない。手を伸ばしても、思い出そうとしても、そこには黒い空白しかない。

 

 そして、二人の意識が届かない場所で、機械的な音声だけが淡々と処理を続けていた。

『人理停滞を確認。カウンターガーディアンの正常な活動を確認できません』

『メインプラン失敗。サブプランへ移行します』

『対象個体を確認――藤丸・K・達人。藤丸・K・涼音』

『両名を〈人理最後のマスター〉として暫定認定』

『英霊憑依型召喚システム――フェイト・レプリカントをインストール』

 無数の数値と光が流れ、二人の身体を包んでいく。だが本人たちの意識はすでに深い場所へ沈み、何が行われているのか知ることはない。

『両名の記憶封印は強固です。強制解除は精神負荷の危険性あり。自然解凍を最優先事項とします』

『石化現象への直接曝露を確認。回避処理へ移行』

『レイシフト技術を応用した時間座標跳躍を実行します』

 世界が緑色の光に呑まれていく。同時に二人の周囲だけが、別の何かによって引き剥がされるように揺らいだ。

 達人も、涼音も知らない。

 自分たちが石化を免れたことも。三千七百年後へ送り出されようとしていることも。両親や、かつて出会った人々に関する記憶の多くが封じられていることも。

『タイムジャンプ開始まで――三、二、一』

 一瞬、幼いころに誰かから頭を撫でてもらった感触が蘇る。けれど、それもすぐに光へ溶けた。

『――人理の復活を、期待します』

 そして二人は、文明が消えた未来へ落ちていった。

 機械音の向こうでは、さらに幾つもの警告表示が流れていた。だが、それを二人が知ることはない。彼らの意識に残るのは、見知らぬ誰かの笑顔と、聞き覚えのある声の断片だけ。いつか旅の中で、その断片が一つずつ意味を取り戻していくことになる。

 

時間座標の固定処理が進むたび、二人の存在を示す数値は現代の観測域から少しずつ外れていく。これは眠りではない。石化したまま時を待つことでもない。二人だけが、本来歩くはずだった三千七百年という時間を飛び越え、文明が失われた未来へ直接送り出されている。

 

 その事実を、本人たちは知らない。知るために必要な記憶そのものが封じられているからだ。カルデアという名前も、レイシフトという技術も、自分たちが何を継承しているのかさえ、目覚めた時には言葉として取り出せない。ただ、完全に消えたわけではない。声、匂い、手の温度、英雄たちの姿――意味を失った断片だけが深い場所に残され、それぞれが再び必要とされた時を待っていた。

 

強制的に思い出させることはできる。だが、その場合に失われるものが大きすぎる。記憶は単なる情報ではなく、二人が今の人格を形作る土台でもある。だからシステムは、封印を壊すのではなく、本人たちが経験を重ねるたびに必要な部分だけが自然に戻る道を選んだ。遠回りでも、それが二人を二人のまま未来へ送り届けるための方法だった。

 

第三話 了

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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は少し特殊な構成で、達人と涼音自身がまだ知らない過去を、読者側に断片的に見せる回となりました。

フェイト・レプリカント、記憶の封印、そして二人がストーンワールドへ辿り着いた理由。

ただし、まだすべてが明らかになったわけではありません。

兄妹自身がこれらの真実へ辿り着くのは、もう少し先になります。

次回もよろしくお願いします。
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