百合ヶ丘の生徒たちが仮想空間の「ランク戦ブース」で連日連夜しのぎを削っているその裏で――システムの持ち主である男。光輝は、また別のとんでもないものを生み出していた。
研究室のデスクに山積みされた空のフルボトルと、無数の回路がむき出しになった基盤、そして工具たち。
不敵な笑みを浮かべた光輝が手に持っていたのは、今まさに完成を迎えたばかりの小さなハードウェア――『CHARM強化パッケージ』だった。
光輝「さて、こっちはこっちで現実の装備を一段階ブーストさせてやるとするか」
光輝が開発していたのは、彼が持つ「ビルド」のシステム中枢にある『フルボトル』の戦闘概念や特殊能力を、リリィの扱う対ヒュージ決戦兵器『CHARM』の規格へと完全適応・移植する特殊拡張ユニットだった。
その仕組みは極めてシンプル、かつ凶悪だった。
一つのCHARMに対し、最大2本分のフルボトルの能力を同時に装填・付与できるという代物である。たとえば――。
『ラビット&タンク』の特性を組み込んだCHARMでは、超高速の機動力を維持したまま、重戦車並みの凄まじい一撃を叩き込む変則軌道ブレード。
『ゴリラ&ダイヤモンド』のような物理特化の属性の掛け合わせでは、最高硬度による強烈な一撃という、文字通り「要塞をも粉砕する」最強の銃身。
フルボトル特有の相性による爆発的な相乗効果が、リリィたちのマギシステムと融合することで、これまでの概念を覆すケタ違いの戦闘力を生み出す。
光輝「一本のCHARMに2本のボトル……。これを使いこなせたら、リリィたちはさらに喜んでランク戦で暴れ回るだろうな」
光輝がボトルのバルブをカチリと鳴らし、ニヤリと口角を上げる。
「ランク戦ブース」での模擬戦に明け暮れる少女たちの日常に、今度は「さらに反則スレスレの狂気の強化パーツ」が投下されようとしていた。
そして―――、
1週間後―――、
光輝が手元で微調整していたのは、『CHARM強化パッケージの仕様書』だった。
先ほども言った通り、一つのCHARMに対し、最大2本分のフルボトルの能力(属性や特殊効果)を同時に付与できるだけでも十分すぎるほどのオーバースペックな代物なのだが、光輝が仕込んだ「真の凶悪さ」はそこではなかった。
光輝「……で、極めつけがこれだ」
光輝はニヤリと笑い、ユニットの内部構造を指でトントンと叩く。
光輝「このシステム、構造上一切のマギを経由しないように設計してある」
リリィの戦闘において――CHARMの変形、特殊弾、バリア、すべては「マギ」の運用によって成り立っている。
だからこそ、ここに来る前の千香瑠たちを襲ったようなヒュージが放つ「マギジャミング」や、特殊な環境下においては、どれほどの高ランクリリィであっても機能不全に陥り、一瞬で無力化されるというリスクを常に抱えていた。
しかし、光輝が持ち込んだビルドの技術体系は、その根本が異なる。
フルボトルが持つエネルギーや物理法則の改変、特性の付与は、リリィたちの体内魔力や周囲のマギの流れに依存しない。
純粋な物理的・システム的な「物理法則の書き換え」としてCHARMに作用する。
つまり――。
光輝「どれだけ濃密なマギジャミングを浴びようが、自身のマギ残量が削られようが関係ない。このパッケージを挿したCHARMは、平然とフルボトルの能力を発揮し続ける」
極限の戦場において、敵の妨害で手元の一番強力な武器がただの鉄くずになる――そんな絶望的な状況を、この「マギ非依存型」の拡張ユニットは真っ向から無力化してしまう。
そう。このパッケージを使った装備を使うのでれあれば、マディックでさえ平然とリリィの隣に立つことができるのだ。
そしてこれは、使用者本人の身体には一切の負担がかからない。
光輝「さて、これを彼女たちに配ったら、いよいよ『ただのリリィ』の枠には収まりきらなくなるな」
光輝がフルボトルをカチリと鳴らし、どこか楽しげに肩をすくめる。
ランク戦での泥臭いパワーアップに続き、実戦そのものの概念をひっくり返す「禁断のハードウェア」が、静かに百合ヶ丘の少女たちへと手渡されようとしていた。
― つづく ―
ラスバレやってたら、マギリフレクターとかのマギ干渉型のヒュージには、倒せてもかなり相性悪かったのでこういうシステムを作りました。