この、リリィのマギを無効化するマギジャミング波を備えた特型ギガント級ヒュージという、百合ヶ丘を襲った悪夢を、百合ヶ丘のリリィたちは死傷者どころか重傷を負ったものすらいない大勝利で退けた。
この知らせは、全国各地のレギオンへと即座に噂として流れていた。
― 東京 ―
御台場女子高等学校―――
初「聞きました? 純。百合ヶ丘の話………」
純「ええ。姉さま。そんな相手をどうやって……、マギを遮断されたら、私と姉さまでさえただの無力な少女に成り下がるというのに………」
純(マギが遮断された状況を想定した訓練など、百合ヶ丘の連中は一体どこまで先を見据えているというのか……)
正確には、百合ヶ丘はマギが遮断された状態を想定した訓練など行っていないのだが、状況とリリィの常識が勘違いさせてしまっていた。
勝ち気な性格である純は、悔しさと焦燥感を混ぜる様な表情をしていた。
御台場のレギオン、"ロネスネス"を率いる船田姉妹、そして隊長である船田純。
百合ヶ丘がどんな手を使ったのかと気になっていた。
神庭女子藝術高校―――
灯莉「定盛ー! 夢結様たちや梨璃たちすごいよね〜?」
姫歌「ひめひめって言いなさい! でも、ホントにどうやって………」
紅芭「私たちと同い年ぐらいの少年技術者が入ったって噂を聞きましたけど、信憑性にかける話なんですよね……」
叶星「一柳隊の皆さんに連絡とってみましょうか……」
高嶺「良いかもしれないわね」
百合ヶ丘と親交のある神庭女子のトップレギオン、"グラン・エプレ"のメンバーも気になっていた。
が、こちらは噂程度だが詳細なデータが入っていた。
リリィ達と同世代の少年技術者。仮にそれが本当だとしても、同世代と言うことは子供。
そんな技術を持ってるとはどうしても思えなかったのだ。
―――そして、東京六本木のエレンスゲ女学院では、
教官「おい、どうなってるんだ! ヒュージの能力を考えたら、百合ヶ丘の戦績はいくらなんでも異常だぞ!?」
教官「今、戦闘映像公開を要求してるところだ! 幸い他のガーデンからも要求が入っている。運はこちらに味方してるぞ!」
G.E.H.E.N.A.と深い関わりのあるエレンスゲ上層部。兵器開発や今後の研究のためにも是非ともデータが欲しい。
すると、百合ヶ丘からデータファイルが各ガーデンに一斉に送られてきた。
さすがに秘密にしておくと同様の『マギジャミング波』能力を持ったヒュージが現れたときにリリィたちが危ないと危惧した百合ヶ丘が公開を決めたのだ。
教官「よし、では早速……」
教官が映像を開いた。するとそこには―――、
教官「な、なんだこれは!?」
そこには、自由自在に空を駆け、空中や地上からまるでガトリング砲のような勢いで弾を連射する射撃班。
炎や風と言ったマギの属性を持たない属性斬撃を叩きつけるリリィ。
レアスキル、"縮地"を持っているリリィたちが、"縮地"の限界速度を遥かに超えるかのような勢いで移動し、ヒュージの背後から重量級射撃を叩き込むリリィたち。
とんでもない影像が映っていた。
教官「マギジャミング波が発生しているという事は、この弾丸の雨はマギじゃないということか? おまけになんだ今の炎の斬撃は! リリィが自在に空を飛んでるぞ!?」
教官「しかも"縮地"のスピードがあまりにも早すぎる! 明らかにレアスキルとしての限界速度を超えてるぞ! 強化リリィでもなければ、ブーステッドスキルもないというのに!!」
他のガーデンでも、映像を見た教官陣。みんな呆気にとられていた。
そしてエレンスゲは校内放送で全校生徒を呼び出し、映像を見せた。
リリィたちはその映像に、『マギによる物では無い』という事実に驚愕。こんな装備をいったい誰が作れるというのか。
―――しかし、唯一の例外がいた。
それは、
一葉(光輝さんですね)
恋花(あの子だね)
藍「こー「だめ」むぐっ」
瑤に咄嗟に口を押さえられた藍。
瑤(こんな装備を作るんだ、あの子……)
千香瑠は………、
千香瑠(百合ヶ丘でも、誰も死なせないために力を振るってるんだね……。なら、また会うまで私も死ぬわけにはいかない!!私の『ヘリオスフィア』は、そのためにあるんだから……!)
そう。その例外とは、かつて光輝に救われ、光輝を匿って百合ヶ丘に逃がしたヘルヴォルだった。
光輝が無事に百合ヶ丘に着いて、そこで生活している事実が分かり、胸のなかでホッとしていたヘルヴォル。
そして、エレンスゲを筆頭に各ガーデンは、この装備の情報提供を要求したものの、百合ヶ丘はそれを拒んでいた。
しかし、『いつか百合ヶ丘と御校が共闘する機会があり、相手のヒュージにもよるが、苦戦するほどの相手であればもしかしたらその時にあの子から装備がプレゼントされる可能性はある』
とだけ各ガーデンに通達があったという。
― 続く ―
かなり手こずりました。