この"戦いが終わったら"、要項の通り主人公は基本的裏方に徹します。
仮面ライダーを取り逃がしたあと、急ぎ足で指定された避難所へと駆け込むヘルヴォルの面々。
すると、そこには不安そうな面持ちで待っていた光輝の姿があった。扉が開く音に振り向き、彼はこちらへまっすぐ駆け寄ってくる。
光輝「千香瑠、大丈夫だったか!? 皆さんも……!」
声をかける光輝に、先頭をにいた一葉は少しだけ肩の力を抜き、やわらかな微笑みを浮かべて首肯した。
一葉「ええ。なんとか……全員無事です」
その言葉に胸をなで下ろす光輝を見て、千香瑠はふっと安堵の息をもらす。
先ほどまでの戦闘の緊張感や、謎の戦士に対する動揺が、幼馴染の変わらない優しさによって少しだけ解きほぐされていくようだった。
そして、その日はヘルヴォルはエレンスゲへと帰投した。
― エレンスゲ女学園 ―
教官「仮面ライダーを取り逃がしただと!? この役立たずが!」
教官「あの戦士が危険な存在だったらどうするつもりだ!!」
帰投したヘルヴォルを待ち受けていたのは、上層部からの厳しい叱責と詮索だった。
ヒュージが出現した地区での失態、そして各ガーデンに警戒令が出ていた仮面ライダーを取り逃がしたことに対する責任の追及。
尋問室の冷たい空気の中、上官たちの視線が突き刺さる。
だが、一葉をはじめとするヘルヴォルのメンバーの心証は違っていた。
ヘルヴォル(――あんな人が、本当に悪い人なのか?)
敵対する意思があったのなら、わざわざ千香瑠をヒュージの攻撃からかばう必要などない。
一葉がどうしても引っかかっていたのはそこだった。
一葉(それに―――)
あの戦士を、エレンスゲ上層部やG.E.H.E.N.A.がどう扱おうとしているのかは分からない。
しかし、リリィの命を救って走り去った背中を見た彼女たちには、彼が邪悪な存在ではないのでは?という疑問が生まれていた。
自室に戻り、静けさの中ベッドに腰を下ろした千香瑠は、ふと今日の出来事を思い返していた。
冷や汗の滲む緊迫した戦闘、突如現れた赤と青の戦士、そして鮮やかなバイクのドライビングテクニック。
千香瑠(あの時……最後の……)
あの時、仮面の戦士がこちらを一瞥した時の仕草。
千香瑠「……どこかで、見たことがある……?」
呟いたその声は、静まり返った部屋の中に吸い込まれるように消えていった。
忘れていたはずの幼き日の記憶と、今日出会ったばかりの謎の戦士。
その二つの点がぼんやりと重なり合うような違和感を抱えながら、千香瑠は窓の外の夜空を静かに見上げるのだった。
――翌日、東京。六本木市街地
エレンスゲのある東京港区、六本木地区の市街地では、千香瑠と光輝が共に歩き、光輝が千香瑠の買い物に付き合っていた。
千香瑠「ありがとう光輝くん。藍ちゃん本当によく食べるからいっぱい買わないとなの」
光輝「あのちっこい子な。よく食べるのは分かるな。千香瑠の手料理美味しいし……昔食わせてもらったことあるからな」
千香瑠「もう…」
"昔、地元の公園で泥だらけになって遊んだ時の話"や"千香瑠の手料理の話"など、他愛のない会話を交わす2人。
エレンスゲで常に"母性あふれるお姉さん"として張り詰めていた千香瑠が、光輝の前でだけは、ふっと肩の荷を下ろした「普通の女の子の笑顔」を見せていた。
すると、
『――緊急警報。ヒュージの接近を確認。市民は速やかに避難してください』
急なヒュージ警報が鳴る。千香瑠は顔を強張らせ、手持ちのCHARMを起動する。
千香瑠「光輝くんは避難して!」
そして、自身のリリィとしての身体能力で、現場へと向かう千香瑠だった。
光輝「っ!」
光輝(千香瑠……!)
現場では、ラージ級のヒュージを筆頭に、その周囲をミドル級やらスモール級のヒュージが群れで取り囲み陣形を組むような形で暴れていた。
辺りからは火気が上がり、煙が立ち込め、焦げ臭い匂いが充満する。
千香瑠「っ!」
現場に着いた千香瑠。そこへヘルヴォルのほかの面々も到着する。
一葉「千香瑠様!」
千香瑠「一葉ちゃん!」
恋花「なに、今回のヒュージ……見たことない形してるんだけど……」
瑤「どんなヒュージか、戦いながら解析する必要がある」
藍「はやくはやく! たたかう〜」ダッ!!
藍がCHARMを片手に突っ込んだ。
千香瑠「藍ちゃん待って! 解析が先―――」
次の瞬間………
ズゥウウウウンッ!!
ラージ級のヒュージを中心に、何か領域のよう空気の圧が展開される。
突進した藍は、その中に入ってしまった。
――すると、
プツン
藍「え?」
なんと、CHARMに流れていたマギが霧散。CHARMはただの鉄くずへと変わってしまった。
恋花「マギが!!」
一葉「っ! 私たちのも!」
いつの間にか領域は辺り一帯を包んでいた。マギがCHARMに通らず、これではリリィは戦えないただの少女に成り下がる。
千香瑠「っ! 藍ちゃん逃げてーーー!!」
藍「あっ……」
突っ込んてしまった藍は、今空中にいる。そのままCHARMと身体の質量落下に伴い、ヒュージの群れの中へとダイブしてしまう運命にあった……
瑤「あっ……」
誰もが動けなかった。―――すると、
ブウォオオンッ!!
エンジン音が鳴り響き、昨日の戦士。仮面ライダーがバイクで跳躍。
空中で藍を抱えると、そのままバイクはヒュージの上を通り過ぎて建物の壁を走って地上に降りてヒュージを迂回。
ヘルヴォルの元へと送り届けた。
瑤「藍ちゃん!」
恋花「良かっ……た」ガクッ
千香瑠「っ!」
安心で崩れ落ちるヘルヴォル。だが、まだ危機は去っていない。
一葉「あ、あの……!」
ビルドはヒュージに突っ込んだ。仮面ライダーの通常形態のアーマーのパンチでも、スモール級のヒュージなら一撃で粉砕。核まで破壊できた。
ビルド(うぇっ…ばっちぃ……)
だが、ミドル級はそうはいかない。触手を伸ばし、ビルドを攻撃してくる。
ビルド(なら!)
タカ/ガトリング《ベストマッチ!》
《Are You Ready?》
ビルド「ビルドアップ!」
天空の暴れん坊、ホークガトリング! イェーイ!
ビルドはベストマッチフォームの1つ、ホークガトリングにフォームチェンジ。
ホークフルボトルの力で空中へと飛翔。ホークガトリンガーから角度をつけた超速連射の集中射撃を食らわせてミドル級に風穴を開ける。
恋花「すごっ!」
一葉「っ………」
そして地上に降りるビルド。残るはラージ級だ。
ビルド「この感覚……電磁波……いや、電波か!」
ならばとビルドは、オクトパスフルボトルとライトフルボトルを振り成分を活性化。ホークフルボトルとガトリングフルボトルを抜き取り、ベルトに2つを差し込む。
オクトパス/ライト!《ベストマッチ》
《Are You Ready?》
ビルド「ビルドアップ!」
稲妻テクニシャン!オクトパスライト! イェーイ!!
ビルドアップは電気を操るフォーム、オクトパスライトにフォームチェンジ。
そして半身のオクトパスの部分から触手をヒュージに向かわせて巻きつける。
ビルド「これで……どうだぁっ!!」
バリィイイイッ!!
触手からライトフルボトルの特性の高圧電流をヒュージに向けて放電。
すると、
ボンッ!
ヒュージの中から爆発のような音が響き、隙間から煙が上がる。
――すると、
ブゥウウウンッ!、
一葉「っ! マギが……!」
千香瑠「戻ってきた!」
そう。ビルドはこのマギの妨害が電波であることを見抜き、「ならば発生機関は生物的なものであっても機械のような精密な物である」可能性が高い事にかけて高圧電流を放ち、妨害波の機関をショートさせて焼き切ったのだ。
恋花「これならイケる!」
ドン ドン ドンッ!! ガン ガン ガンッ!
恋花が自身のCHARM、《ブルンツヴィーク》を射撃モードに。射撃をヒュージへと叩き込む。
一葉「私たちもいます!」
ザンッ! ガキッ!!
一葉も、CHARM、ブルトガングを近距離モードに変えて斬撃を叩き込む。だが、ヒュージの固い装甲に阻まれる。
藍「らんもやる〜!」バッ!
ここで先程の少女、藍が巨大な斧型CHARM、モンドラゴンをヒュージに振り下ろす
バギィイイッ!!
モンドラゴンのあまりの質量と藍の小柄な身体に見合わない怪力にヒュージの身体に日々が入る。
千香瑠「あそこを狙って!」
瑤「分かった!!」
千香瑠と瑤さんもCHARMを射撃モードにして藍ちゃんの入れたヒビを狙って射撃。今度は明らかに攻撃が通っている。
一葉「よし! 押し切れる!」
そして、一葉ちゃんがそう言った瞬間―――
ヒュージ『ギイィイイイーーッ!!』
ヒュージは騒音を上げたかと思うと、触手をやたらめったら振り回し、リリィたちを近づけさせないようにしてきた。
身を守りにかかり、そしてあわよくばリリィを仕留めるという動きに、ヘルヴォルはCHARMで流して受け身を取る。
一葉「くっ!」
千香瑠「一葉ちゃん!」
千香瑠が、遠距離からCHARMを構えると、
ビュッ!!
千香瑠「え………?」
ヒュージの予備動作のない突然のレーザー攻撃。千香瑠のすぐ寸前まで迫っていた。
恋花「千香瑠!」
一葉「千香瑠様!」
瑤「千香瑠ちゃん!」
藍「ちかる!」
千香瑠(あ……)
千香瑠が死ぬ。そう思った。――瞬間!
ビルド「っ!」
バチイイイッ!!
ビルドが割って入り、千香瑠を狙った攻撃を身体で受けた。
千香瑠「っ!!」
一葉「っ! また……!」
一葉(また、千香瑠様を庇った………?)
ふっとばされるビルド。後方の地面に叩きつけられる。
ドシャッ!
千香瑠「っ! 大丈夫ですか!」
意図は分からないが、自分を庇って傷を受けたのだ。千香瑠の性格なら、心配するのは当たり前だ。
そして、ダメージが甚大だったのか、仮面の戦士、ビルドの変身が解けた。
千香瑠「……………へ?」
光輝「ぐっ………」
そこには、体中傷だらけで血を流し、だが、まだ立ち上がろうとする光輝の姿だった。
千香瑠(なんで……なんで、光輝くんが……っ!)
千香瑠の脳裏に、かつて親友を失ったあの光景がフラッシュバックしようとしていた。
― つづく ―
千香瑠ちゃん……精神状態ヤバくなりそう