無茶をした光輝に、千香瑠は………
現場を離れ、光輝を恋花の案内でやってきた廃虚に隠すヘルヴォル。今着いたところだ。
恋花「ここよ」
廃墟の中にある扉を空けた恋花。そこには粗方の生活ができそうな空間が広がっていた。
恋花「千香瑠、光輝くんをここに寝かせて」
千香瑠「あ、うん……」
千香瑠はおぶっていた光輝をベッドに寝かせる。そして瑤が軽く応急手当をする。
一葉「…………」カリカリ
藍「かずは? 何書いてるの?」
一葉「書き置きです。私たちのいない間に目が覚めたら、来るまで居てくれと」
恋花「そうだね。あんまり時間空けると来ちゃうから現場に戻ろう」
一葉「はい!」
そして扉を閉め、現場へと走って戻るヘルヴォル。
恋花「いい? 本部の観測班には、さっきの『マギ妨害ヒュージ』のせいで私たちのCHARMの戦闘記録が全部バグって消えたってことにするよ。光輝のことだけど、アイツがヒュージを倒した直後に『自爆』した、あるいは『妨害波の過負荷で消滅した』って報告するの。死体がないのは、あのエネルギーで分子レベルで消し飛んだから、ってね」
一葉「分かりました」
瑤「分かった」
藍「わかった〜」
恋花「千香瑠はちゃんと目の前で人が死んだような態度をししてね。酷だろうけど」
千香瑠「うん。ありがとう、恋花ちゃん……」
そして、現場に戻ったヘルヴォル。すると数分後、上の人間が到着した。
教官「……説明しろ、相澤一葉。観測されていた『未知のエネルギー反応』と、新型ヒュージの死体はどこへ行った」
一葉「報告します。新型ヒュージが放った特殊な電磁妨害により、私たちのCHARMは一時完全に機能停止しました。その絶体絶命の瞬間、例の『謎の戦士』が突如乱入し、ヒュージと交戦を始めました……」
一葉は一度言葉を濁し、なおも続ける。
一葉「しかし、その戦士もヒュージの放つ妨害波の過負荷に耐えきれず、相打ちの形で激しい光とともに爆散、消滅しました。ヒュージの死体がないのは、その爆発のエネルギーに巻き込まれ、跡形もなく蒸発したためです」
教官「消滅、だと? 現場からは未知の、だが極めて高密度なエネルギー結晶の残滓が検出されている。あれがただの相打ちで消滅したという証拠はあるのか?」
すると、恋花が上層部を睨み、ぶっきらぼうに吐き捨てる。
恋花「証拠って言われてもねえ……。こっちだってマギを完全に封じられて、生身で死にかけたんだよ? ログが飛んじゃったのはその妨害電磁波のせい。文句があるなら、そんな危険な特型ヒュージの出現を予測できなかった、本部の索敵班に言ってくれない?」
教官「ッ!」
リリィを「使い捨ての兵器」としか思っていない大人たちは、恋花のこの「索敵班の落ち度」を突いた反論に一瞬言葉を詰まらせる。
―――そして、
瑤「千香瑠なんか、捕縛命令が出てた相手ではあるけど、人が目の前で消し飛んでこんなになってるんだよ?」
千香瑠「ッ…………」
さらに、千香瑠が精神的にショックを受けて放心している(フリをしている)様子を見る。
教官(精神安定剤を与えれば強化リリィ化が促進できるが、この間与えたばかりだ。こんな短期間で立て続けに与えれば過剰投与に繋がり検体の価値を落とす……)
と、判断し、渋々この報告を受け入れた。
教官たちが帰ったあと、一葉たちは小さく息を吐き、お互いの無事を確認します。
一葉「……上手くいった。これで、ゲヘナが彼の存在に勘づくのを、数日は遅らせることができる」
千香瑠「ありがとう、みんな。……光輝くん、待っていてね。今度は私が、あなたを守る番だから」
そして次の日から―――
ヘルヴォルの市街地パトロールでは、3:2のチームに分かれて、それぞれパトロール組、看病組に分かれることに。
ゲヘナの目を盗み、それでも光輝を回復させられるようにヘルヴォルは手を尽くしていた。
千香瑠「…………………」
藍「ちかる?」
千香瑠「藍ちゃん……私は大丈夫だから」
そして―――、
光輝「う、う〜ん……ッ!!」
ガバっ!!
数日ぶりに光輝が意識を取り戻し、飛び起きた。
光輝「痛っつ!」
瑤「あっ、起きた! 千香瑠!!」
千香瑠「っ! 光輝くん!!」
光輝「千香瑠……それに」
瑤「ああ、そう言えばあの時名前言ってなかったね。私は初鹿野瑤。千香瑠の仲間」
目の前には幼馴染の千香瑠だけでなく、エレンスゲのリリィである瑤がエプロン姿でスープを混ぜていた。
光輝「え、っと……ここは……?」
辺りを見回すと知らない場所。独房か何かなのだろうかと思うが違うようだ。
千香瑠「もう! 目が覚めて最初に出る言葉がそれ? ……本当に、心配したんだから。ここは前に恋花ちゃんが見つけたっていう廃墟。あの後光輝くんをここに運んで私たちで上層部から隠してたの……」
光輝は自分が仮面ライダーとして拒絶されるか、あるいはG.E.H.E.N.A.に引き渡されることも覚悟していた。
しかし、彼女たちが「自分を大人から守るために、命懸けで匿ってくれている」という事実を知った。
光輝「そう…か………」
光輝の胸にヘルヴォルへの深い感謝と、祖父、桐生戦兎譲りの「この子たちのために技術を振るい、必ず守る」という決意が改めて湧き上がる。
千香瑠「……よかった、本当に……本当によかった……っ。あなたまで死んでしまったら、私は、私にはもう……っ」
光輝「言っただろ、君を泣かせるためにベルトを巻いたんじゃないって」
千香瑠「どうして自分の命をそんなに軽々しく扱うの!? 死んでしまったら意味がないのに、バカ……!」
千香瑠が光輝に怒った。すると光輝が、
光輝「お前だって同じだろ、千香瑠。お前も、自分の命をかけても守りたいものがあったからリリィになる道を選んだんだろ? 俺もそれと同じだよ」
千香瑠「ッ!!」
その光輝の言葉――ずるいくらいに真っ直ぐで、あまりにも核心を突いた返し。
千香瑠は完全に言葉を詰まらせ、何も反論できなくなる。
なぜなら、光輝の言った通り、千香瑠自身も「大切な人を守るため、自分の命を危険に晒す覚悟(リリィになること)」を誰よりも先に選んでいたからだ。
自分のことは「仕方がなかった」「守るためだった」と覚悟を決めていたのに、いざ同じことを大切な幼馴染が自分のためにやってのけたとき、千香瑠はその鏡写しのような現実を突きつけられた。
怒って責め立てていたはずなのに、光輝が自分と同じ――「誰かを失いたくない、守りたい」という同じ痛みを抱えてその道を選んでくれたと知った瞬間、怒気は一瞬で消え去る。
代わりに、胸の奥底から熱いものがこみ上げ、言葉の代わりに大粒の涙がポロポロと零れ落ちていく
言葉で言い返すことができない千香瑠は、反論の代わりに、さらに強く、壊れてしまうのではないかと思うほどの力で光輝にしがみついた。
千香瑠「……ずるい……そんなのって、ずるいよ……!」
喉の奥から絞り出すような、泣き声混じりのセリフを零す
光輝「……俺は死なないよ、千香瑠。絶対に、君を一人にしない」
千香瑠「……はい、はい……っ……!」
― つづく ―
千香瑠にとって、光輝はどんなふうに見えたんでしょうね〜
自分のなかでは状況のせいでイチャイチャには入らないつもり
次回、目を覚ました光輝に対し、一葉は……