「ハァッ!」
パウロが剣を振り、タランチュラ・デスロードの群れを一掃する
俺達は、だいぶ順調に迷宮内を進んでいる
「ふぅ…一旦休憩にしますわよ!」
タルハンドやエリナリーゼは馬力が桁違い
ルーデウスは回復をしてくれている
ギースは地図を正確に読んでいる
そして、パウロはシンプルに速く、強い
俺はというと
まじで役に立っていない
ただ近くに来た魔物の位置を感じ取って、パウロに伝える
タルハンドやエリナリーゼは前衛として戦っている
ルーデウスは魔術と回復で支える
ギースは地図を読み、パウロは最前線で魔物を薙ぎ倒している
その中で俺がやっていることといえば、魔物の位置を知らせるだけ
その繰り返しだ
全然戦闘で役に立っていない
…俺、来た意味あったかな
まぁ大丈夫だ
あんまり気に病むな俺
元々半分は好奇心で付いてきたんだ
休憩中、そんなことを考えていると、ルーデウスがブツブツと独り言をつぶやきながら、壁を調べて行った
「何をしている…ルーデウス…」
「ロキシー…ロキシーですか?」
「ちょ…待て…まじで何してん…」
「ロキシーだ!匂いがするぞ!」
「まじでやめろ…やめろって…止ま…止まれって…」
「ウオォォォロキシ————————!」
「ちょ…皆さん…待っといてください…」
彼は壁を破壊し、突き進んでいった
『…マジかよ』
俺は頭を抱えながら、その後を追った
…あいつ、母親を探してるんじゃなかったっけ?
しばらく進むと、やけに開けた空間に来た
そこには、大量の魔物が居た
「なんで魔物が…良し…ルーデウス…一気に行く…ぞ…」
言い終わる前に、彼は全ての魔物を氷漬けにしていた
「…え~…」
「ハァ…ロキシー…ロキシー!」
まぁ行かせとくか
少し時間が経った後、彼は少女を担いできた
青い髪で、服はボロボロ
顔もやつれている
長期間この迷宮に取り残されていた様子だ
となると…
「彼女が…ロキシーか…?」
「えぇ、体調が優れていないようですが、生きています」
その後、俺達はロキシーの回復のために、一度迷宮を後にした
ロキシーが回復した
俺がグースカピーしている間に、皆が介抱してくれていた
起きた彼女と、少しだけ話した
「初めまして…俺の名はスモーク…ルーデウスの友達です…よろしく…」
「あぁ、どうも初めまして。ロキシー・ミグルディアです」
事故紹介の後、彼女は深々とお辞儀をした
「助けていただきありがとうございます」
俺は手を振り、謙遜する
「いえいえ…俺はそんな…一緒に迷宮に行ったというだけで…」
「いえいえ…それでも助けていただいたことには変わりないので…」
「いえいえいえ…」
「いえいえいえ…」
「アイシクルブレイク!」
「泥沼、作ります!」
「おう!」
…なんで戦闘より礼儀の応酬してる時間の方が長いんだ
それはそうと、このパーティーは本当に強い
皆の連携で、魔物を一体も撃ち漏らさないし、決して致命傷を負うこともない
俺はというと、フォースで魔物を一体ずつ、皆の攻撃の直線上に置いとくだけだ
前に出る必要すらないのだ。
…できれば、このまま使わずに帰りたい
「よ~し!休憩だ!」
皆が傷を治したり、武器の手入れをしている
そんな中俺は~?
服のすその汚れをはらってま~す
だってライトセーバーは刃こぼれとか、錆びるとかないし
というか、これを使わなければいけないほどの危機が、このパーティーには存在しない
ひたすら暇をしている
俺は大して活躍できていないな
アリエル様と居た頃の、俺が最高戦力だった時が懐かしい
世界は広いって本当なんだな
第…何階層だっけ
ルーデウスが隠された罠を見つけてくれた
床下に転移魔法陣が隠されていたのだ
性格の悪い迷宮だ
その魔法陣は、今までの物とは違っていた
禍々しい光を放ち、いかにも「立入り禁止」だと告げているようだった
まじで入るのコレ?
「良し、入るぞ」
パウロが意気込んでいる
他の皆もやる気に満ち溢れた顔だ
どうしよう
行きたくねぇ~な~
「お…俺は残るぞ…」
パウロにスゴイ形相で睨まれる
「てめぇ…ここまで来てよくそんなことが…!」
俺に殴りかかろうとするパウロに、ルーデウスが割って入る
「待ってくださいパウロ。彼の考えを聞きましょう」
こっわいよパウロ
俺は必死に手を振り、決して怖気づいたわけでも、自分可愛さでの決断でもないことを説明する
「一人でも…こちら側の魔法陣に…残って居た方が…いいんじゃないか…と考えたんだ」
ルーデウスが顎に手を当て考え込む
「それもありだな…向こうで何があるか分からない以上、最低一人は残っておくのが得策かもしれない…」
そうそうそうそうそうだよなルーデウスさん!
俺は感じるんだ
この先、誰か死人が出る
俺が死ぬかもしれないし
他の誰かかもしれない
あるいは、全員死ぬかもしれない
だから行かない
わざわざ目の前にある落とし穴に突っ込む道理はないんだ
「ではスモークさん、ここで残って、僕たちが帰らなかった時は、ギルドに報告してください」
「…分っかりましたー…」
俺は小さくガッツポーズをする
「では、皆さん、行きましょう」
じゃ、皆行ってらっしゃーい!
俺は明るく皆を送り出す
暇だなぁ~
俺は地面に寝っ転がり、ダラダラしていた
でも行くわけにはいかなかったからなー
皆が死んだと判断して、ギルドに報告しに戻るにはまだ早い
そうなれば、俺は一人でこの迷宮を帰らなければいけなくなってしまう
はぁ~
早く帰ってこないかな~
ピカアァッ!
なんだなんだ?
魔法陣が光り出していた
そして、光の中から皆が帰ってきた
全員五体満足だ
やっと帰ってきた~
これで、孤独とはさよならだ
そこで俺は気付いた
皆の顔がとても暗いことに
「ルーデウス…何が…あったんだ…」
「スモーク…」
それから、俺は彼らから話を聞いた
魔法を無効化するヒュドラがいたこと
そして、そのヒュドラがゼニスが囚われている結晶石を守っているということ
「クソ!ルーデウス、てめぇ何で実の母親が死にかけてんのに、そんな冷静でいやがる!」
今は皆が冷静になるべき時だ
でも、俺はそんなことをパウロに言うことは出来なかった
「あのヒュドラは…勝てない相手ではありません!僕たちは、アイツを倒すために全身全霊を尽くさないといけないんです!」
そうして、冷静になったパウロと、作戦会議を始めた
「あのヒュドラ…傷口から再生しおった」
「魔術や、魔力で生成したものを無効化も出来る…」
「おそらく、あれはマナタイトヒュドラです…とっくに絶滅したと思っていました…」
「火力が高く、魔術が効かず、再生持ち…まるで無敵じゃねぇか」
「本で読んだことがあるのですが…ヒュドラの傷口は、焼けば再生しないと聞いたことがあります」
その言葉を聞いた瞬間だった
俺の視線が、腰に下げたライトセーバーへ向いた
…焼けばいいんだろ?
それなら…
俺のライトセーバーなら、有効打を与えられるんじゃないか?
これ使っとけば良いんじゃないか?
「なぁ皆…聞いてくれ…」
「どうしましたの?スモーク」
皆が俺の方を見る
「その…ヒュドラの相手…これを使ってくれ…」
「…」
「…」
「…え?」
全員が俺の方を見る
彼らに、俺は説明する
「俺の…この剣…ライトセーバーは…物体を焼き切る剣だ…」
「焼き切る剣…」
ルーデウスの目が輝く
「それなら、魔力を使わずに再生も妨害できる…!それだ…それで行きましょうスモーク!」
「フッ。お前がこの作戦の要とはな…」
「貴方を全力で援護しますわ!」
「…ん?」
「頼りにしてるぜスモーク!」
「……ん?」
ちょっと待て
なんで俺が率先して戦うことになっている?
俺じゃない気でいたんだけど?
だってパウロでいいじゃん
なんならエリナリーゼでもいいよ
全然ライトセーバー貸すからさ
「…いや…俺が戦うんじゃなくて…皆のうちの誰かに…貸すっていう話だ…」
「あぁ、なるほどね」
そうして、俺はパウロにライトセーバーの使い方を教えた
だが…
「うーん…やっぱ使いずれぇなコレ。たぶんお前が使った方が強いぞ」
ふざけんな嘘だろてめぇ
ならエリナリーゼだ
彼女が駄目ならいよいよ俺が戦わなくちゃいけなくなるだろうが
「ごめんなさいですわ。私も使い慣れた自分の武器がいいんですの。でも、援護は任せてほしいですわ!」
援護は任せて欲しいですわ…じゃねぇんですわよ
パウロが無理な相手と俺が戦える訳ねぇだろうが
「あの…パウロ…俺は…」
俺はパウロの方を振り向くと、彼は土下座していた
俺は慌てて彼を立ち上がらせる
「何を…してるんですか…頭を…上げてください…」
「い~や上げねぇ!俺は今からお前を頼る!俺達家族の問題にお前を巻き込んでるんだ!だから、それ相応の態度を取らねぇと、俺の気が済まねぇ!」
ずるいだろ、それは…そんな顔をされたら、断れるわけがない
俺は別に、英雄になりたいわけじゃない
危険な場所に行きたいわけでもない
でも…
目の前で、家族を助けたいと願っている人間を見捨てるほど、俺は薄情にもなれなかった
「やりましょう…」
「ハ?」
「その…何とかヒュドラをぶっ倒し…ゼニスを助けて…帰りましょう…皆で…!」
そう言うと、パウロが顔を上げてくれた
「あぁ!ありがとう…!」
俺は首を回し、ライトセーバーを手に持つ
「良し…行くぞ…皆…」
「おう!」
さてと…
やってやりましょうじゃねぇか