魔法陣に乗り、俺の身体が光に包まれる
しばらくすると、目の前から光が消える
目が慣れてくると、部屋の最奥にどデカい竜がいる
「あれが…マタタビヒュドラ…」
「マナタイトヒュドラです。スモーク」
「あれが…マナタイトヒュドラ…」
パウロが二本の剣を抜き、俺達の前に出る
「俺が先行し、アイツに隙を作る。そこをスモーク、お前が叩っ切れ!」
「…承知した…」
俺は、ライトセーバーをしっかりと両手で握りこむ
ライトセーバーの光が周囲を照らす
「それが…」
「ライトセーバー…」
俺は構えを取り、脚に力を込める
「…行くぞ…皆…」
「おぉ!」
俺が走り出した瞬間、パウロが視界から消えた
彼を置いて行ってしまったようだ
いや、このまま行っていいんじゃないか?
一瞬でヒュドラの首の真下に走り込み、飛び上がる
ヴォン!
首を一本切り落とす
その勢いのまま、俺は天井を蹴りつけ、もう一本首を落とす
着地した瞬間、俺は振り返り、皆が別の首と戦っているのを見る
向こうの援護に行かなくては
しかし、本当に再生しているな
でも俺の剣で斬った首は、頭がないままだ
今の一瞬で二本落とせたのだ
これをあと四回やればいい
なんだ
意外と簡単なお仕事じゃないか
そんな油断は、魔物との戦いで絶対にしてはいけない
…なんて、思った
それが、いけなかった
皆を助けないと…
向こうにある首は七本
今の俺はノーマークだ
そう思い、俺はヒュドラに背を向けてしまった
「避けろ――――――スモーク―――――!」
避けろっていったい何から…
そう思った瞬間、俺の身体は正面の壁に叩きつけられていた
「ガア゛ァ——————―――――ッ!」
背中が熱い
口の中に血の味が広がる
ヒュドラの方を見る
「あぁ…シッポね…」
そりゃ竜なんだからあるよな…
なるべく痛みを感じないように、ゆっくりと立ち上がる
身体の感覚を探る
この感じ、骨は左手首しか折れてない
シッポで吹き飛ばされてから、壁にぶつかるまでの間に、フォースで体の表面を包んで正解だった
でも表面しか守れていない
この吐血は…
内臓も多少やられているな…
でも、動けないほどじゃない
今は興奮状態だから、あまり痛みを感じていない
だが、もう少ししたら、俺は立ち上がれなくなるだろう
だから…
今…
ここで…
『ぶっ殺してやるよクソトカゲ…!』
俺は感覚の無い足を無理やり動かし、皆に向かって走り出す
俺が倒れてる間に、彼らはまだ首を斬り落とせていない
あのパウロでも、弾くのが限界のようだ
てかマズイ
ロキシーが危ない
いや
あれは…
あのまま行くと喰われるじゃないか!
『おおぉらぁっ!』
空中で回転しながら、剣を振り、もう一本落とす
「ハァ…無事…か…」
「いやそれはこっちのセリフです!今すぐ回復魔法を…」
「あぁ…助かる…」
いいね…
だいぶ楽になった
でも左手は動かせない
「ありがとう…ロキシー…」
パウロが俺と同じところまで下がってくる
「お前大丈夫か!頭が真っ赤になってるぞ!」
「…問題ない…ここで…倒すぞ…!」
「フッ、当然だ!」
俺はパウロと一緒にヒュドラの首に向かって剣撃を繰り出す
残っている六本のうち、四本の向かってくる首に囲まれる
すると、パウロがかがみこみ、手を差し出す
「スモーク!」
それを見て、俺は直感で彼が何をしようとしてるか理解する
「…分かった!」
彼の手を踏み台にし、俺は空中に飛び出す
下から二本の首が俺を喰おうと大口を開けている
俺は全力で剣を振り、一撃で二本の首を斬り飛ばす
残り四本
すると、ヒュドラが急に後退した
首元の色が変わり、口から熱気が漏れる
「スモーク!ブレスだ!」
ルーデウスが叫ぶ
「皆!俺の後ろに!」
彼が水魔法を溜めている
いや
無理だ
間に合わない
ヒュドラの方が火力が上だ
せめて三本なら耐えれるか…?
ここから走ってヒュドラのとこまでは行けない
フォースで軌道をずらすか?
いや
この距離じゃちょっと弾くことしかできない
どうする
俺は手元のライトセーバーを見る
…これなら行けるか
この方法ならば
『オォラッ!』
俺は大きく振りかぶり、ヒュドラの目に向かってライトセーバーを投げる
ーグギャアアアアアァァァァァ!ー
よっしゃ、命中した
一本の首が火を吐きながら顔を振ったことで、隣の首を完全に焼き尽くした
残り三本
これで耐えれるだろう
「グ…ウオォォ!」
ルーデウスは、無事水の盾で耐えることが出来ているようだ
すると、ヒュドラが何か怪しい動きをしている
自分の焼かれた傷口に噛みつき、再生できるようにしているのか
噛みちぎった新しい傷口から、頭が生えてくる
残り四本になってしまった
俺はそれを見て、相当キレてしまった
『余計なこと…してんじゃねぇよ!』
俺はフォースでヒュドラの目に刺さったままのライトセーバーを引っ張り、首を引き裂く
残り三本
パウロが水から飛び出し、首を弾き飛ばす
ルーデウスが俺に回復魔法をかけてくれる
一本の首がまたブレスを溜めている
撃たせるわけにはいかない
そうだ
『ルーデウス!風魔法だ!』
『え?!魔法はアイツに効かないんだぞ!』
『違う!』
俺は自分を指さして言う
『俺に向かって撃ってくれ!アイツの方に吹き飛ばしてくれ!』
『分かった!』
『おし!やれ!』
『やるぞ!』
彼が俺に杖を向けた瞬間、俺の身体は空中に飛ばされていった
その勢いを利用し、俺はブレスを溜めている首を斬り落とす
残り二本
着地して、戦場を見渡す
一つの首が俺の頭上を通っていった
その首は、エリナリーゼの方に向かって行く
させるか
俺は後ろに向かって走り出す
すると、頭上から轟音が響いた
次の瞬間、首の一本が大量の岩に押し潰された
…天井を崩したのか
ルーデウスが岩砲弾を天井に撃ち込んでいたのだ
俺は断面にライトセーバーを押し当て、再生を防ぐ
残りは
…一本!
そう思って、皆が止まった瞬間だった
首がルーデウスに向かって突っ込んでいった
その刹那、パウロがヒュドラとルーデウスの間に割って入った
死ぬだろそれは
お前はルーデウスの父親だろう
お前が死んじゃあだめだろ
「グッ…」
パウロは気付いたら走り出していた
自分の息子のために、身を投げ出す時が、いつかは来ると思っていた
パウロは自身の死を覚悟していた
息子を助けられるのなら本望だと思っていた
だが、いつまで経っても、攻撃は来なかった
目を開けると、ヒュドラは鼻先で止まっていた
「早く…やれ…!」
パウロが声の方を見ると、スモークが必死の形相で手を伸ばしていた
彼は、血まみれになりながらも、立ち続けていた
ヒュドラの身体が、見えない何かに押さえつけられている
「斬れ…パウロオオオォォォ!」
パウロは言葉を理解するより早く剣を振るっていた
「オオオラアアアアアァァ!」
パウロは先ほどからヒュドラに対して攻撃を加えることが出来ていなかった
だが…
彼の息子への思いと
スモークに命救われたという事実により
彼の剣は、彼の人生史上
最高の一撃を繰り出した
切り落とされた首が天高く飛び上がる
「まだだ!燃やせ!」
パウロの言葉を聞いたルーデウスとロキシーが火を放つ
首の残り
なし
ヒュドラは倒した
まだ終わってない
本来の目的はゼニスの救出だ
俺は結晶石の方へ向かう
すると、結晶が急にひび割れだす
ヒュドラを倒したからなのだろうか
完全にひびが全体に行き渡り、結晶が崩壊する
中から出てきたゼニスが倒れこむ
「エリナリーゼ…彼女の…容体は…?」
ハッという顔をしたエリナリーゼが、ゼニスに近づく
「えぇ…息をしてますわ!」
「そうか…」
良かった
俺は安堵し、その場に倒れこむ
ずっと張り詰めていたものが、そこで一気に切れた
「スモーク!?大丈夫ですの!?」
「おい!アイツにも回復をかけてやれ!」
身体に力が入らない
強烈な痛みも襲ってくる
もう無理だ
一歩も動けん
「どうだ?」
「息はしてるようです…回復をかけます」
「彼は儂が担いでいこう…」
皆の声が聞こえる
悪いね
…すごい
…眠い
…もん…で
知らない天井だ
どこだここ
まじでどこだ
『あぁ…痛たたた…あれ、俺の服どこよ…?』
立ち上がり、部屋を見回す
置いてある鏡に映っている俺の身体は、ほぼ完全に回復している
ちょっと左手が動かしずらいな
ライトセーバーもないぞ
扉を開け、廊下へと歩いて行く
大丈夫なのか?
知らん場所でモロ出しで歩き回っているけど
階段があったので、下に降りてみる
そこで初めて気づいた
ここはルーデウスの家だ
俺は焦ってしまった
その時、見つけたのだ
『あ!服!』
俺の服が机の上にたたまれていた
これさっさと着て、早く出よう
そうして、服を掴んだ時に、重大なことに気付いた
それはそれは重大なことに
さっきまでソファの後ろ側しか見えなかったが、ソファには…
シルフィとロキシーが寝ていた
シルフィがいるのは…そりゃそうだ
ルーデウスの家なんだからいるに決まっている
ロキシーはなんでいるんだろう
いや、そんなことはどうでもいい
この状況を見られたらどうなる?
寝ている妊婦といたいけな少女
横にいるのは全裸の男
殺されても文句は言えない
早く服を着なくては
上着を着て
パンツをはいて
そしてズボンを上げて…
「帰ったよ~!」
「ただいま帰りました!」
「ただいま~」
ルーデウスとアイシャ、それにノルンだ
ズボンが半ケツ状態で止まっている
これはズボンを上げているともとれるし、下げているともとれる
三人が俺を見る
俺を見る
俺の半ケツを見る
「あ…お…おかえり~…」
「遺言はそれでよろしいですかスモーク~?」
『慈悲をくれルーデウス』