『いや本当に…お恥ずかしい限りで…』
『いえいいんですよ。アイシャが治療のためにと服を脱がせてたんですから』
誤解は解けた
だが、俺の尊厳には消えない深い傷を負った気がする
『じゃあ俺は帰るよ。治療については、世話になったな。』
『ま、待ってくださいスモーク!せめてお礼をさせてください。あの後どうなったかも知らないで…』
そう言えば、何日たったんだろう
ゼニスやパウロ、エリナリーゼ達のあの後どうなったのかも知らない
『確かに…皆の様子は?』
『まずはあなたのことでしょう…あなたは、丸3日眠り続けていたんですよ。他の皆さんは、大したけがはしていません。ただ…』
…ただ、ね
その言葉を聞いた瞬間、嫌な予感が胸をよぎった
『ゼニスは…身体的な傷などはないのですが…その、記憶が全て無くなってしまい…』
『…そうか』
その時、ルーデウスがアイシャに目で合図をした
しばらくして、アイシャがゼニスを連れてきた
『ゼニス…』
彼女の眼はうつろで、何も分からない赤子のような表情を浮かべていた
『そうか…残念だったな…』
『はい…ですが、助かったのは事実ですし、今も治療法を探しています』
なら良かった、となるのか
でも、別に家族でもない俺がそんなことを気にかけていいのだろうか
『あ、それと、ロキシーと結婚しました』
『へ~そう、おめでと…え?』
結婚?
ロキシーとルーデウスが結婚
…でも?
シルフィとルーデウスも結婚
…ほう?
『それはその…どういう流れでルーデウスさん?』
『敬語にならないでください』
『いや、急に新婚さんが別の女と結婚したって言われたら、そりゃ敬語にもなるだろ』
そして、俺は彼とロキシーの思い出を聞いた
『なるほどね。それは納得だ。納得だけどさ~?』
俺は肘をガンッとつき、不機嫌をあらわにした
『シルフィは納得してるわけですかね~?』
『彼女は…その…』
ルーデウスは萎れてしまった
『納得というか、許してはくれました。ですが…彼女を裏切ったという思いと、ロキシーが馴染めるかという不安が消えません』
『そうか…』
彼もあの戦いで相当参ってしまったのだろうか
そこをロキシーに突かれたのだろう
言い方は悪いが
『じゃ、今度こそ帰るよ。家族だんらんを邪魔しちゃ悪いしさ』
『だから待ってくださいって!せめてお礼をさせてください。みんなが待ってるんですよ!』
『だからいいってば…え、皆?』
俺はルーデウスに連れられ、酒場へと連れていかれた
そこには、共にあの戦いを乗り越えた皆が居た
「やぁっと起きたかスモーク!あれ?先輩、ロキシーはどうしたんだ?」
「ロキシーはもう少し後で家から来るそうです。さぁ、皆で飲みましょう!」
「なぁ…ルーデウス…」
俺は机の陰でひっくり返っているパウロを指さしながら言う
「パウロ…もうだいぶ飲んでるぞ…」
「飲んでねぇ!!」
「ハァ…パウロ…」
俺達はその後しこたま飲んだ
エリナリーゼが脱ぎだしたり、ギースが吐いたりしていた
タルハンドの目つきが…なんか怖かった
後から来たロキシーが、俺の酒を間違って飲んでしまい、一口で顔を真っ赤にしてしまった
そんなことがあったが、まぁ楽しかった
皆が潰れたころ、パウロが話しかけてきた
「よぉスモーク…あぁ~頭が痛ぇ…」
「はは…飲み過ぎだ…パウロ」
「お前…意外と酒に強いんだな」
まぁ確かにな
俺ももう自分が何杯呑んだか分かっていない
「まぁな…で…ルーデウスとは…どうなんだ…」
「…それを聞くかよ」
それ以外聞きたいことが余り無いからな
彼らの関係は親子というより…何て言うんだろう
友達か、仲間
親子らしい素振りは見えなかったな
「…アイツには、そろそろ子どもが生まれる。俺はアイツに父親らしいことを余り出来ていない…」
「…なるほどね…」
俺はパウロのジョッキに酒を注ぎながら聞く
「アイツは天才だ。俺が教えるまでもなく、勝手にどんどんと成長していった。どうせ、ゼニスのこともアイツがなんとかしてしまうんだろうな…」
「そうか…そうか…」
確かに、生まれたころからあんな要領の良さをしていれば、子育てを不安に感じることもあるだろう
「俺はアイツに何をしてやればいい?アイツの喜ぶことってなんだ?
「…女じゃないか…?」
「そうか…女か…」
パウロがうなだれてしまった
俺には父親になるということが良く分かっていない
だけど、とてもじゃないが見ていられない
ちょっとしたアドバイスくらいならできるかな
「俺の父は…無愛想な人だった…」
「あ?何の話だ」
「まぁ聞け…父は…山に釣りに…連れて行ってくれた…その時には…父の方から喋りかけてきたり…笑いかけてくれた…」
気付けば、パウロは真面目な顔で聞いてくれている
「俺にとって…父親とは…そういうものだった…」
「父親らしさというのは…家庭によって…違うものだ…」
「だから…パウロにとって…良い父親像を…貫けばいい…」
「そうして…彼とぶつかって…話し合えばいい…と…俺は…思う…」
少し語ってしまったな
パウロにとっていい影響を与えられればいいが
「おぉ…おぉ!確かにな!俺の考える良い父親ね…ありがとなスモーク!助かった!」
「…なら…良かった」
彼の悩みを解消できたようで良かった
せっかく親子揃って生きているんだ
仲良くないと楽しくないだろう
そして、俺はこの後、寮に帰る途中で盛大に吐いてしまった
…これは内緒のことだ