目の前の玉座には、如何にも偉いって雰囲気の男が座っていた
とても荘厳ないでたちだ
白く光る鎧
長い銀髪
金色の瞳
彼がペルギウスか
「お進みください」
シルヴァリルに言われ、七星たちが歩き出す
俺も後に続く
すごくデカい部屋だ
たくさんの綺麗な垂れ幕がある
ペルギウスの横には、十一人の男女がいる
シルヴァリルも含めたら十二人だ
全員同じ白い服
デザインの細部は違うが…
ここにも校則みたいなものがあるのだろうか
「そこでお止まりください」
皆が止まり、俺もその言葉に従う
「我が『甲龍王』ペルギウス・ドーラである」
太く通った声
イメージ通りって感じだ
「お久しぶりです、ペルギウス様。約束どおり、戻って参りました」
彼女が敬語を使うとは
だいぶビックリだ
それほど偉い相手ということだろう
アリエル様が立ったまま頭を下げ、俺達は膝をつく
「ナナホシか。なにか戻ってきたということは、異世界からの召喚について、何かが掴めたということだな?」
「はい。望む成果があるか分かりませんが…」
彼らの会話は難しくて、さっぱりついていけない
魔法陣のこととか、召喚術について話しているようだ
剣を振ることしか能のない俺には、少々無縁の世界だ
「ところで、随分な大所帯だな」
「はい。彼らは私の研究を手伝ってくれました。その報酬として、ペルギウス様に謁見したいと」
「ほう」
大丈夫かな
ここまで来て、やっぱ無しで~、は流石に心に来るぞ
「お初にお目にかかります」
真っ先にアリエル様が前に出た
いいぞアリエル様
勢いでいっちまえ
「私は、アスラ王国第二王女アリエル・アネモイ・アスラと申します。陛下のような、偉大なるお方にお会いできたことを光栄に思います」
「アリエル・アネモイ・アスラか」
「以後、お見知りおきを」
そう
お見知りおきを
以後よろしくってことだ
このまま助けになってくれたら嬉しいんだがな
でもまぁ…
「知っておるとも。アスラ王国の薄汚い王権争いに負けたにも関わらず、周囲を巻き込んで泥沼の争いを勃発させようとしている、馬鹿な王女だ」
おぉ言ってくれるやないか
俺と同時に、ルークがバッと顔を上げる
だが、そんなことで動じるアリエル様ではない
「これは、手厳しい」
どうだ
まだ負けてないぜ
「ここに来たのは、あわよくば我が力を借りようとしてか?」
「いえ、ただ世界に名だたる英雄に、一目お会いできればと」
「魂胆が透けて見えるぞ、アリエル・アネモイ・アスラ」
そりゃそうだろ
俺達が来た目的なんてそれくらいしかないんだから
「だが、貴様はここに来た。それもまた運命。チャンスをやろう。我が城への滞在を許す」
「ご、ご配慮、感謝いたします」
良かったよ
追い出されたりしなくて
アリエル様は一礼し、俺らと同じところまで下がった
その表情は、少々硬くなってしまっていた
「さて、お前は?」
次に質問を受けたのは、ルーデウスだった
あんまり聞いてなかったが、彼は彼はペルギウスに色々とくぎを刺され、魔術の使用を禁止させられたようだ
可哀想に
まぁ、俺達は自由に出来るだろうがね
「次は、そこのお前だ」
ん…誰に言ってる?
俺はペルギウスの視線の向く方を見る
…俺だ
本当に俺か?
「…俺…ですか…?」
「お前以外に誰がいるというのだ?」
俺だった
何でアリエル様、ルーデウスと来て俺なんだ
だが、それよりも何よりも
ここは、アリエル様の護衛として、恥じない言動をする!
「…オホン…俺は…こちらにおわす…アスラ王国第二王女…アリエル様の騎士…スモーク…レンです…こちらへの滞在を…お許しいただいたこと…大変…ありがたく存じます…」
そう言うと、ペルギウスは鼻で笑った
「ほぉ?お前ほどの者がアスラ王国の騎士だと…なぜわざわざそんな立場に居座っている?」
「なんで…と言われましても…」
そんなの決まってる
この世界に来て、右も左も前後ろも分からなかった俺を、拾ってくれたのが彼女なのだ
それに、俺は彼女のことを知っている
彼女がどれだけ苦しんでたのかも知っている
見過ごせなかった
俺が護衛となり、初めて殺し屋に襲われた夜
その時に見た彼女の顔が頭から離れないのだ
命を張る覚悟を決めた顔
年端もいかない少女のそれではなかった
俺は彼女を守りたいと思った
彼女に二度とこんな顔をさせてたまるものか
いや、俺がさせない
誰に言われたわけでもない
俺が勝手に決意したことだ
「…俺は彼女に救われた…だから…彼女を守りたい…それだけです…」
「ほ~う…」
ペルギウスは意地の悪い笑みを浮かべる
「よりによって其奴につくとは…お前も難儀なものだな…」
どういう意味だ
思い切り怒鳴りたくなったが、流石に平静を保つ
「まぁ良いだろう。貴様も滞在を許そう。ただし…」
ペルギウスの顔が少し険しくなった
「その力の使用を禁ずる。滞在はその代わりだ」
「…え…あ…はい…慈悲をかけていただき…感謝します…」
まじか
俺もダメなの
ていうか、コイツ俺のフォースのことを知ってやがる
どこまで知られている
そんなこと考えていると、ペルギウスに質問は無いかと言われた
特に彼に聞きたいことは…
いや
一つあったな
「他に、何か質問がある者はいるか?」
ザノバとシルフィが質問を終えたタイミングで、俺も聞く
「…一つ…よろしいでしょうか…」
「許す。質問はなんだ」
「…魔物を思いのままに…操る人間に…心当たりは…ないでしょうか…」
「ふむ…」
ペルギウスは顎を触り、少し考え込む
「召喚魔術の類ではないのか?」
「…いえ…既にいる魔物を操るもので…特定の人物を襲わせる…などが出来るというもので…」
「ますます不思議なものだ…魔物を操る術…その問いには答えることが出来ぬ。すまぬな」
「…分かりました…ありがとうございます…」
やはり情報は無しか
だが、あれ以来アイツによる襲撃は起きていない
もうあまり気にしなくて良いのかもしれない
「それでは、我が自慢の空中城塞を、ゆるりと楽しむが良い」
その後、俺は基本的にアリエル様達や、ザノバと一緒に居た
城内を練り歩き、様々な絵画や彫像を見て回った
それを見て、俺達は…主にザノバと俺が興奮していた
だが、俺は気付いていた
見られている
後ろを振り返るたびに、壁から黒い翼が出ている
隠れ切れていないですよ、シルヴァリルさん
全く、俺ってそこまで信用ないかな…