俺は無理やり体を起こし、ルーデウスの元に向かう
病気の進行度や、具合の様子も彼女とは違う
七星は動けないくらい衰弱している
俺は平気な顔をして動ける
まぁ…ものスッゴい頑張ればの話だが
少しは剣を振るうことも出来る
時間の問題だ
そのことは、俺が一番分かっている
俺の吐血量は、体感だが、日に日に増えている気がする
ルーデウスの話によれば、ある人物ならば、治療法を知っているかもしれないとのことだ
ソイツの名は、魔界大帝キシリカ・キシリス
彼が言うには、ムカつくクソガキだと
まぁ、もし病気を治療してくれるのならば、俺は王とでも神とでも呼んで差し上げるつもりだ
キシリカがいるのは、魔大陸というところらしい
名前とどんな場所かは知っているが、行ったことは無い
通常、魔大陸に行くには長い年月がかかる
しかし、今回はペルギウス協力のもと、転移魔法陣を使うことによって、一瞬で行けるらしい
良かった
流石に行く道中で息絶えるなんてのは、たまったものじゃない
「魔大陸に到着しました…では、行きましょう!」
「えぇ、クリフ、本当に大丈夫ですの?」
「あぁ…覚悟は出来てる」
行くメンバーは俺とルーデウス、クリフとエリナリーゼ、そしてザノバの五人だ
「スモークどのも、ナナホシどのを助けたいのですな」
「あぁ…じっとして…いられない…からな」
ホント、色んな意味でじっとしてられませんわ
俺が一番追い詰められるのが、まさか病気だとは思わなかったしね
「まずはギルドに行って情報収集、キシリカの居場所を突き止めます」
「その…キシリカの正確な位置は分からないのか?」
クリフが聞いてくれる
俺もそれ気になってた
「彼女は常に魔大陸中を放浪していて、居所が掴みにくいんです」
へ~
面倒くさい質の奴だな
ずっと家に引きこもってくれてるとかなら楽なのに
「…じゃ…ひとまず…情報を…集めないとな…」
「そうですね。行きましょうか」
すると、文字通り馬面の男が話しかけてきた
魔族の言語だろうか
「ルーデウス…通訳…頼む…」
「分かりました」
なぜか彼は凄く嫌そうな顔をしていた
それにしても、魔人語も勉強しとけばよかったな
同じ転生者なのに、俺とルーデウスは大違いだ
彼は博学で、水王級魔術師で、嫁二人
俺にあるのは、ライトセーバー、フォース、以上
あまりにも違いすぎるな
治って暇になったら、ちゃんと勉強をしよう
「彼が言うには、キシリカはこの辺りには居ないようです。この地に居る魔王への謁見も出来なかったし…」
空気が重いな
俺も治らないんじゃないかって、心臓バクバク言ってるんだぞ
「そうですの…一度休憩にしましょう。クリフ、ご飯を買いに行きましょう」
「あぁ、そうだな。君らも来るか?」
ルーデウスとザノバはクタクタでへたり込んでしまっている
「いや…俺は良いよ」
「余も…疲れて…」
「そうか…じゃあ…俺は…行ってくるよ…」
最近立ち眩みがヒドくなっている
肉を喰わないとやってられない
クリフたちに飯を持ってもらい、俺は金を払う
すると、なんだか少し異臭がした
気のせいか?
「食べ物を…恵んでくれ…」
気のせいじゃなかった
なんだあの小汚いガキは
「頼む…食べ物を…」
俺はガキの前に出て、追い払おうとする
金を払ったのは俺だぞ
ここは退いてもらおう
他の誰かが恵んでくれるだろうしな
だが、クリフに止められてしまう
「クリフ…この手の輩は…一度許したら…後が怖いですよ…」
「良いんですのよ。困ってる人を見捨てられない、ただのクリフの性分ですの」
「そういうもの…ですかね…」
クリフが飯をガキに分け与える
「どうだ?元気になったか…?」
おい、このガキ全部喰いやがった
「なったなら…帰れ」
「おいスモーク。子供だぞ」
「フ…」
笑った?
よほど飯が嬉しかったのか
「フフ…」
様子がオカシイな
危ない物やってるんじゃあないのか?
「ファーハハハハハ!」
ほらやっぱり
ろくなことにならな…
「妾の名はキシリカ・キシリス!人呼んで、魔・界・大・帝!貴様は妾の命を救ってくれた、さぁ、なんでも願いを言うがよい!」
「…は?」
「さぁ!妾を救ってくれた礼だ!何でも望みを言うが良い!その前に名を名乗れ!」
「え…コイツ…キシリカ…まじか…えぇ…えぇ…?」
「く、クリフ・グリモルです」
…
おぉ…
あ、あぁ!
やっぱそうだと思ったよ
うん
オーラから違うね、魔界大帝ってのは
もちろん最初から気付いてたさ
いやホント
そうですとも
「さぁ、何でも願いを一つ、申すがよい!」
「…な、なら、ドライン病の治療法を教えてください」
「ほう?懐かしい名前じゃの~」
よしよしよし
手ごたえありだ
「それで、治るのか?」
「無論じゃとも。あんなもの、ソーカス草の葉を茶にでもして飲むだけで、ウンコと一緒に出て行くわい」
『よっしゃおら!』
口に出てしまった
俺は皆から一歩離れてガッツポーズをする
エリナリーゼがビックリしてしまった
俺はジェスチャーで謝る
「ソーカス草? 聞いた事ないな。どこにあるんだ?」
「ふむ……幻の都マイオ」
「幻の都マイオ!?」
「幻…」
幻か…
幻ね…
なんか無理そうな予感がしてきたぞ
「そこより北にある赤竜山脈の端、赤竜の尾と呼ばれる渓谷にある、ドラゴンテイルの洞窟。その奥深くに群生していたのが、ソーカス草」
なんでこんな新しい地名ラッシュが入るんだ
RPGの新章みたいだな
いやいや、こんな他人事みたいなこと考えてる場合じゃない
これは厳しい旅路になりそうだ
「第二次人魔大戦の終わりに、龍神と闘神の戦いの末、大陸に大穴が開き、消滅した」
「…え」
『だぁ!チクショウがあぁ!』
『落ち着け煙田! ステイ、ステイだ!』
駄目じゃねぇかてめぇ、おぉ?
そのツノぶった切ってやろうか
「じゃあ、もう、ソーカス草は存在しないってことですか?」
「いや、あくまでドラゴンテイルの洞窟が、最初に発見された場所というだけじゃ」
ほぉ?
「ソーカス草は、日の差さない深い洞窟の奥地に生える」
それで?
「なので、妾が命じ、各魔王どもの城の地下で栽培を始めたのじゃ!」
『…』
「なにせ、ソーカス茶はうまいからな。それに、あれを飲んでおるものは、みんな長寿じゃ。なにせ、不死魔王の血族はみんな飲んでおるしな。ファーハッハッハッハ!」
『…フゥ―…』
「取りにいかされると思ったか?おもったじゃろ?残念じゃったな~。そこのキシリカ城でも栽培しておるわい!ファーッハッハッハッハッハ!」
スゥー
右手にライトセーバー
左手に殺意
よし
魔物は殺したことあるんだけどな
この世界に来て初めてのことだな
何事も初体験というものは良いものだ
人を殺そう
『ヴァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』
「落ち着けスモーク!全部吐かせてからだ!」
「ザノバ!抑えてろ!」
「分かりました!落ち着いてくださいスモーク殿!」
俺が残りの寿命全部使う覚悟で暴れていると、周りに黒い鎧の騎士が集まってきた
警察か何かか?
「我らはガスロー地方が不死魔王アトーフェラトーフェ様の親衛隊である!アトーフェ様の勅命である。キシリカ様をこちらに渡し、今すぐ城へと出頭せよ」
ま~た面倒くさい奴が増えやがった
せっかく治療法が見つかったというのに
「嫌だと…言ったら…?」
「容赦はしない」
エリナリーゼと向こうの兵士の、双方が剣を抜いた
これ以上時間がかかるのは御免だ
「ルーデウス…どうする…」
「…まずは、この場を収めて…」
すると、一人の兵士が兜を取った
「お願いします。来ていただかないと、我々が罰せられるのです。どうか…」
いやいやいいだろ
そんなことは、ソーカス草を手に入れた後でいい
出会って一分も経っていない男どもがどうなったって知るか
ほら言ってやれルーデウス
お前らに渡す分のキシリカはないってな!
「キシリカ様がアトーフェ様の大事にしてる酒を一人で全て飲み干してしまい…それに、話を聞く限り、ソーカス草が必要なのでしょう。それならば、我々でも用意可能ですので…」
あー…
俺とルーデウスは目を見合わせる
互いの思いは一つだった
俺達はキシリカを組み伏せ、捕縛し、献上した