俺は目を覚ました
もうお馴染みの、知ってる天井
ルーデウス邸だな
身体を動かそうと試みるが、少々痛む
当たり前のように服がないので、かけられてる布を腰に巻いてから部屋を出る
窓の外を見ると、既に日は落ち、月が見えていた
あんまり覚えてないが、また倒れたのだろう
でも、なんでルーデウスの家なんだ
治療ならばケイオスブレイカーでやればいいのに
局部はちゃんと隠しているので、堂々と家の中を散策する
『何が出るかな~何が出るかな~』
適当な部屋に入ってみると、ルーデウスが寝ているのが見えた
何日経ったのか分からないが、彼も疲れているのだろう
そっとしておいてあげよう
すると、彼が飛び起き、ロウソクを持って扉の方に近づいてくる
『よっ』
『うわぁ!?なんだ煙田か。驚かさないでくれよ』
『いやぁ悪い悪い』
俺達は二人で歩きながら、ルーデウスに近況を話してもらう
『またで悪いんだけどさ…俺が寝ている間に、何があったんだ?』
『アトーフェをぶっ飛ばした後、ケイオスブレイカーに帰って…それで、七星は完治したんだ。だけど、ペルギウスから妙なことを言われてな…』
『なんて言ってたんだ?』
『なんか…「今はスモークを城塞に入れることは出来ない。ナナホシに連絡するから、しばし待たれよ」だってさ』
『え~まじか…俺なんかしたかな…で、お前は何してんの?』
『あ~…いや、なんか地下室に行きたくなってさ…別に理由とかないよ』
『あぁ、そう…』
地下室の扉の前に行くと、ルーデウスの顔が少しだけ曇った
ドアノブに手をかけ思い切り扉を開く
中には別に何もない
『…と、見せかけてドン!』
突然ルーデウスが後ろに手を突き出す
何もないってのに
『……深夜テンションか?あんまシルフィに見せんなよ』
俺はツッコミながら部屋の中へ入っていく
…ん?何か端で動いたような…気…が?
俺は戸棚の下に、何か動くものを見つけた
かがみこみ、恐る恐る覗き込んでみると……
「?チュー!」
『ギャアアアア!!!!』
プチッ―――
『死ね!オラ!くらえ!くらえ!オラ!』
『おいおい煙田!何してんだ!』
息を切らしながら、もはや原型を留めていないネズミだったモノを見せる
『悪い…俺、ネズミはホント無理でさ…棚壊しちゃって悪い』
『あぁいいよ…まぁ、この死骸は後で捨てとくよ…』
数日後、怪我が完治した俺のもとを、七星が訪ねてきた
彼女はちゃんと自分の足で立って歩けており、顔色もよくなっている
『あの…スモーク…さん』
『おぉ、なんだ元気そうじゃん。良かったな』
俺は部屋に戻り、茶を用意する
椅子を引っ張ってきて、七星を座らせる
…なんか滅茶苦茶動きがぎこちないな
コイツが好きな茶を出したのに、全然飲まないし
もしかして…
『なぁ、まだどこか悪いのか?』
彼女が顔をあげる
『え?』
『いや、なんか全然喋んないし。いつもの調子出てないなら、ソーカス草やろうか?俺も育ててるから』
どうやら俺は、ちゃんとあの後、ペルギウスの精霊からドライン病だと診断され、ソーカス茶をぶちこまれたのだ
今も自室の一角で栽培している
ちょっとくらいなら分けられる量まで育てているのだ
『いえ…全然、元気なんです。でも…』
『ク…ククク…』
俺がしゃがみ込むと、七星が肩をさすりに来る
『だ!大丈夫ですか?!』
『いや…ホント無理だ!やめてくれそれ!ギャハハハ!ハハハハハ!ハー…腹痛い…!』
『あ…えと…』
『もっと悪態とか吐けよ!ハハハ!なんだよその態度。逆に狙ってんの?だとしたら大成功だよ!アハハハハハハ!』
七星が下を向き、プルプルと震えだす
耳まで真っ赤だ
それすら可笑しく感じる
今ならホントに箸が転んでも笑うかもしれない
『もう!せっかく人が下手に出てればいい気になって!敬語使って損したわよ!』
叫びながら俺の胸をポカポカ叩いてくる
コイツこんなに子供っぽかったっけ?
『ゴメン!ホント悪い!ギャハハハハ!あぁやっぱ無理だぁアハハハハハ!』
『もういい!ホントの用事だって言ってあげないんだから!』
『ハハハ…はぇ?用事?何それ』
いつもの調子を取り戻した七星は、立ち上がって茶を一気に飲み干す
『ング、ング、プハー…え?何って、行くわよ!ペルギウスの所に!』
再び彼の空中城塞に訪れた時には、かなり様子が変わっていた
ところどころにひび割れや破壊の跡がある
なにか激しい闘いがあった跡のようだ
七星と別れ、シルヴァリルさんに案内される
彼女に聞いても、「ペルギウス様に聞いてください」としか教えてもらえない
言われた部屋に入ると、精霊たちが数人待っていた
「あの…ペルギウスは…?」
「もう少しお待ちください。すぐにいらっしゃいます」
「…はぁ…」
なんか一人めっちゃ俺のこと見てくる奴がいるが…
まぁ……あんまり気にしないでおこう
「待たせたな」
言葉通り、ペルギウスはすぐに部屋に来た
「いえ…そんなには…」
「そうか……まぁ、皆も呼んでいるのだが、お前だけ呼んだのには理由があるのだ」
そんなに改まってどうしたのだろう
「どんな…用件ですか…?」
「貴様は、センチュリーという名を知っているか?」
彼の口から出たのは、数日前に、あまり気にしなくていいと割り切った名だった
そういえば奴は今何をしているのだろう
というか、そもそも直接会ったことが無いのだ
「その名を…どこで…?」
「本人が言っていたのだよ」
「…本人が?!」
思わず立ち上がってしまった
奴がここに来たのか
戦闘の原因は奴なのか
俺は席に座りなおす
あまりの衝撃で気付かなかったが、俺が立った瞬間、精霊たちが一気に戦闘態勢になっていた
そんな怖がらなくてもいいじゃん…
俺だってちょっとは傷つくぞ
「あぁ…カロワンテ。コヤツの今抱えている最大の秘密を話してみよ」
「は?え、ちょ」
「はい。彼はエリナリーゼと寝たことが、クリフにばれないかどうか悩んでいます」
『あ!あー!あ――!やめて!クソ!頼むやめてくれ!わー!!』
「…だ、そうだ。故に、お前と奴の本質は別物だと、我は定めた」
「…は…奴って…?」
「正直に言おう。客人として、友人として…」
先に言っておくが、はっきり言って俺は、こんなことになっていると思っていなかった
俺自身、そんなことを考えつくはずもなかったし、一瞬でもよぎることもなかった
だからこそ、これは俺に衝撃を与えるのには十分すぎる出来事だった
「…センチュリーは、貴様と同一の存在だ。スモークよ」