あ、ライトセーバーね~。ふ~ん…   作:遺物

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EP・4

『ハァ〰〰〰〰!スゥ―――…ハァ〰〰〰〰!』

 

『なんか、ごめんな…ごめんねまじで。俺魔力無いの、ホントに』

 

なんで俺がこんなことになってるかというと、話は10分くらい前に遡る

 

日本語を見せられた俺は彼女、七星静香に連れられ、部屋に来た

 

そうして、転移がどうのこうのというよく分かんない話を延々と聞かされた

 

その後、この魔法陣に魔力を込めて欲しいと言われた

 

だが、俺には魔力が全くない

 

この旨を彼女に伝えると、彼女は酷く落胆してしまった

 

魔力がないことにはこの世界に来てからすぐに気付いた

 

護衛時代、シルフィが俺に魔術を教えてくれようとした時があった

 

だが、俺には彼女の言っていることを理解できなかったし、実行することも出来なかった

 

アリエル様によると、この世界の常人には基本多かれ少なかれ魔力があるはずなのだが、俺には全くないらしい

 

もっとも、俺にはライトセーバーとフォースがある

 

特段、生活や戦闘で困ることは無かったため、大して気にしていなかった

 

『なんか知らないが、気を悪くさせてしまってすまない。』

 

顔を背けながら深い深いため息をついていた七星が、ようやくこちらを向いた

 

『いや、いいわよ。私と同じ転移者っていう時点で、魔力が無いことを想定しておくべきだったわ』

 

『なら、お前も魔力がないのか?』

 

『えぇ、悔しいことに、全くね。あなたと同じよ』

 

そういうものなのか

 

そうだ

 

いいことを思いついた

 

『ならば、あの人に俺から頼んでみよう。安心しろ。力は信頼できる人だから』

 

『…あっそ?』

 

 

 

「お願いします…彼女を…助けてあげてください」

 

俺は現地語で話しかける

 

俺の話を不満げな顔をして聞いているのが、彼、クリフ・グリモルだ

 

彼はミリス教団の教皇の孫だ

 

それだけの立場なら、優秀な魔術師や研究者との繋がりもあるだろう

 

少なくとも、俺一人で考えるよりは頼りになる

 

「なんで俺がそんな事しないといけないんだ?」

 

「特別生同士は…あんまり仲が…良くないんですか…?」

 

七星とクリフの二人に向かって聞くが、顔を背けられるだけだった

 

「とりあえず…お願いしますよ…クリフさん…」

 

「ハァ~…まぁ、少しだけだぞ」

 

「ありがとう…ございます」

 

『ほら!お前もお礼言っとけよ』

 

俺は日本語で七星に感謝を促す

 

「あぁうん、ありがとクリフ」

 

 

 

そうして、俺達三人は七星の部屋で実験を開始した

 

「で?これに魔力を込めればいいのか?」

 

「えぇ、お願いするわ」

 

床に敷かれた魔法陣

 

これで日本の物を取り寄せるのだそうだ

 

『で、あなたがいる必要ある?』

 

『まぁいいじゃん?せっかくここまでの仲になったんだから、最後まで見届けさせてよ』

 

「二人とも何語を話しているんだ?じゃ、始めるぞ」

 

クリフが手を魔法陣にかざし、青い光が辺りを包んでいく

 

そうして、光が止んだころに、魔法陣の上にはよく分からない塊があった

 

「なんだ…この…塊は?」

 

「僕にも分からない」

 

俺達は七星を見るが、彼女はブツブツとつぶやいていた

 

「ここの部分で魔力が滞った…この書き方が間違っていて…」

 

「…七星?」

 

「あぁごめん。研究の続きをしたいから、アンタたちもう帰っていいわよ」

 

「え…?いや…もう少し聞きたいことが」

 

「この僕の働きはどうなるんだ?」

 

「レディーの部屋に長居しない。ほらもう行った行った」

 

七星に背中を押され、半ば強引に部屋を追い出された

 

部屋の外で、クリフと二人立ち尽くす

 

「なぁ、僕たちどうする?」

 

「う~む…とりあえず…」

 

彼は教皇の孫

 

もし親密な関係になれればアリエル様にとって良い人脈を作れるかもしれない

 

それなら…

 

「飯でも…行きます?」

 

「うえぇ!?会ったばかりだぞ僕ら!」

 

「でも…まぁ…少なくとも…もう友達じゃ…ないですか」

 

そう、友達

 

アリエル様の役に立つ友達だ

 

「友…達…うん。あぁ!友達だな!」

 

そうして、七星の実験を傍観し、クリフと飯を食い、俺の一日は終わった

 

 

 

「おい新人!パン買ってこいニャ!」

 

「ヌーニなの。お腹減ったからさっさと行くの」

 

なんだこいつら

 

俺がそんなことをするのはアリエル様だけだ

 

こういう奴には舐められないように立場を理解させることが重要だ

 

「俺が…そんなことをする…理由はない」

 

「あぁん!テメェやっぱ生意気だニャ!」

 

「お前ムカつくの」

 

こういう人はどの世界にもいるもんだ

 

俺はなるべく問題を起こしたくはないのだ

 

ちょっとキツイこと言えば黙ってくれるだろう

 

そう思った時だった

 

「お前…アイツみたいだニャ。あの~最近入った王族の…」

 

「う~ん…確か、アリエルとか言ったの」

 

「…あ?…彼女が…なんだ?」

 

「ん?アイツ、王族だかなんだか知らないけど、人間族っていうのは生意気でしょうがないの」

 

「なんニャお前?もしかして、あの女に惚れてるのかニャ?」

 

そう言われた瞬間、俺はだいぶムカついた

 

違う

 

そんなものじゃない

 

俺にこの世界の言葉を教えてくれたアリエル様

 

俺に寝床や職をくれたアリエル様

 

俺が風邪を引いたときに、自ら看病してくれた

 

そんな彼女との関係を、そんな安っぽい感情で決めつけるな

 

「にゃーにゃーうるさい…黙ってろ…雌猫」

 

やばい

 

やっちゃった

 

そう言うと、彼女たちの顔がめちゃくちゃ怖くなった

 

飼っていた猫のしっぽを間違えて踏んだ時のそれに似てる

 

「お前…絶対ぶっ殺してやるニャ!」

 

「ヌーニなの。殺してやるの」

 

あ~…

 

思てたんとちゃう

 

そこまで行っちゃうのか

 

「今日の放課後中庭に来いニャ」

 

「どっちが上か分からせてやるの」

 

「あぁ…受けて…立とう」

 

絶対にヤダ

 

「良い心意気だニャ。そのままあの世に送ってやるニャ」

 

「ヌーニなの。覚悟しておくの」

 

「そっちこそ…な」

 

まじでやめて欲しい

 

喧嘩とか生まれてこの方やったことないぞ

 

こうしちゃいられない

 

作戦を立てなければ

 

 

 

中庭にて、俺は彼女たちと向かい合っていた

 

大丈夫

 

ちゃんと仕込みは済んでいる

 

ここから始まるのは

 

真面目に戦わない為の戦いだ

 

「よく来たニャ!」

 

「ヌーニなの。覚悟だけは認めてやるの」

 

「あぁ…かかってこい…まぁ」

 

俺は手にフォースを込める

 

「まともに…戦えるのなら…な」

 

そう言うや否や、俺は地面に向かってフォースを放つ

 

すると、地面の亀裂から黒い煙が噴き出し、一瞬で中庭に立ち込める

 

「なんニャ?!」

 

「鼻が…!」

 

衝撃を与えることで爆発する煙幕だ

 

七星から貰った香辛料を加工して作った

 

彼女曰く、獣人にはたまらない匂いらしい

 

「お粗末な出来だニャ!視界は無事だニャ!」

 

リニアが一瞬で俺と距離を詰めてくる

 

だが、俺に拳が触れる直前に、彼女の身体が地面に吸い込まれていく

 

「なんニャ—————―――!」

 

先に掘っといた落とし穴だ

 

普通に歩く分には問題ない程度に土をかぶせてある

 

だが、そこはさすが獣人の身体能力と言ったところだ

 

見事に落ちる勢いで踏み込んでくれた

 

「動けニャい!助けるニャ!プルセナ――――――!」

 

ちなみにそこにはクリフ協力のもと、魔法で沼を作っておいた

 

「だんだん嗅覚が戻ってきたの。私だけでも勝ってやるの!」

 

プルセナがスゴいスピードで走ってくる

 

「もう見える策には掛からないの!」

 

確かにもう落とし穴は使えないだろう

 

煙幕も晴れてきた

 

もう用意した策はない

 

目の前までプルセナに攻められ、地面に押し倒される

 

彼女の拳は目と鼻の先だ

 

「詰みなの」

 

「意外と…優しいんだな」

 

その言葉に、プルセナが怪訝な顔をする

 

「甘いぞ…獣人」

 

俺は彼女に手のひらだけ向ける

 

「カッ…ハッ…」

 

プルセナの身体が、ゆっくりと宙へ浮かび上がった。

 

「な……に……?」

 

首を絞めているわけではない

 

触れてすらいない

 

ただ、手のひらを向けているだけだ

 

その通りだ

 

策は残っていなかった

 

だが、俺にはこの力がある

 

拘束が解けた俺は、ゆっくりと立ち上がる

 

「や…やめ…」

 

「悪いな…なるべく…静かに…終わらせたいんだ」

 

彼女の身体から完全に力が抜けるのを確認すると、俺は、フォースでプルセナを先ほどの穴に投げ飛ばす

 

「ニャ!プルセナ!?お前負けたのニャ!?」

 

穴から声が聞こえる

 

「…息はしている…殺してはいない」

 

「ニャ!お前!正々堂々勝負しろニャ!」

 

俺なりに正直にやったつもりだ

 

ライトセーバーを使ったら殺しかねないと思った俺なりの配慮だ

 

「ハ~…治癒魔術が使える…先生を…呼んでおくから…そこで…反省しろ」

 

そう言って、俺はその場を去っていく

 

「おい待てニャ!こっち来て戦えニャ!」

 

無視無視

 

ああいう類は日を跨げば反省するだろう

 

ふぅ、それにしても騒ぎにはなっていなくて良かった

 

まぁ、誰にも見られていないだろうし…

 

そう思った瞬間、背後から聞きなじみのある声が聞こえてきた

 

「何をしているの?スモーク」

 

「ヒァッ!」

 

ま~ずい

 

よりにもよって一番バレたくない相手だ

 

「ア…アリエル様…?」

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