「お、どうしたんだ?スモーク」
「あぁ…なんだ、ルークか…なんだルークか…?」
俺は思わず目を疑った。
なんでルークがここにいる?「よ!」
「おはようございます。スモーク」
後ろからアリエル様がヒョコッと顔を出した
「アリエル様…!」
「おはよ。ちなみに、僕もいるからね」
アリエル様の肩の後ろからシルフィが出てきた
「フィッツまで…!?」
このままではマズイ
一刻も早くこの場を去らなければ
「そう言えば、あれって誰の部屋なの?君の部屋じゃないよね?」
余計なことを言うんじゃねぇフィッツ!
「時間的に…泊っていたの?」
黙ってろフィッツ!
お前の異名は「無言のフィッツ」だろうが!
「あら、そうなのですか?」
「いや…その…これは…」
「ねぇねぇ、誰とお泊りしてたの?ねぇってば!」
止まれフィッツ!
止まってくれ!
ガチャ
ん?
ガチャ?
「あのスモーク?忘れ物ですわよ?」
その場に居た全員がエリナリーゼの方を見た
彼女が手に持っていたのは――
―――俺の下着だった
「ッ!」
「おぉ!」
「キャ!」
『ちょっと待てエリナリ―———ゼ—―――――――ッ!』
俺は瞬き一つの間に、フォースで下着を奪い取り、廊下の窓から飛び降り、そのまま全力で逃走する
『すいませんアリエル様―――――――!』
残された一同はポカンとしてしまった
「あの~…あなたは?」
「あぁ、私の名はエリナリーゼ・ドラゴンロード。彼の…友達ですわ」
俺はな~んで逃げたんだろう
あのままエリナリーゼと話を合わせていけば、もしかしたら場が丸く収まったかもしれないのに…
でも、あんな状況で冷静に話を合わせられる奴がいるか?
まじで、な~んで逃げだしちゃったんだろう
暗い気持ちのまま教室に行き、へなへなと席に座り込む
はぁ~
「ん?ボス~。なに落ち込んでるニャ?」
「ヌーニなの。らしくないの」
リニアとプルセナだ
今はこいつらのお気楽さが救いになるかもしれない
「はぁ…その…ね…ちょっと…人生って…難しいことが…あるよね…」
「ふ~ん。ま、そういう日もあるニャ」
「それは大変なの。パンを食べると元気出るの。おいしいの」
興味なさそうだな
はぁ~
何か気分転換できるようなことないものかね
七星でも誘って出かけようか
そんなことを考えていると、教室のドアが開いた
なんだ
もう生徒は全員いるはずだが
「どうも、ルーデウス・グレイラットです」
いや、そうだった
コイツが居たんだった
取りあえず、コイツの情報を集め、報告だけしておこう
「師匠――――――!」
なるほど
ザノバとは仲が良い…と
後で俺も話しかけてみよう
授業が終わったのち、彼に話しかけてみる
「初めまして…俺はスモーク・レン…よろしく…」
「あ、どうも、改めまして、ルーデウス・グレイラットです。どうぞよろしく」
別にこちらを警戒する様子もない
「君は…無詠唱魔術の使い手…なんだよな…」
「えぇ、まぁこんなもの、出来たところでですけどね」
自分を卑下する言動
「剣術も…優れていると聞く…冒険者としての経験も…活かされているのか…?」
「はい、冒険者としては、中々の実力があると自認しています。こう見えて、結構戦えるんですよ」
話をすればするほど分からない
普通過ぎる
自身の特筆した能力や経験を見せびらかさず、凡人に徹している
あまり警戒する必要はなかったようだな
敵意は感じられない
少なくとも、今のところは
「貴重な話をありがとう…ではまた…」
「えぇ、今日からともに頑張っていきましょう。スモークさん」
ルーデウスと授業を受ける日々が、何日か続いた
ある日、俺の部屋の扉を叩く音がした
何の用事なのだろうか
扉を開けるとリニアとプルセナが居た
「何の用だ…お前ら…」
「ボス、果たし状ニャ」
「ヌーニなの。売られた喧嘩は買ってやるの」
俺はマントを羽織りながら聞く
「それって…俺も行かなきゃ…ダメなヤツか…」
「群れの喧嘩はボスの喧嘩ニャ」
「早く行くの。相手はもう待ってるの」
え~
やだな~
あれから気まずくてアリエル様達には会えてないし
ルーデウスの情報や経歴を調べても分からないことだらけだし
最近散々なんだよ
彼女たちに無理やり担がれ、俺は中庭に行った
そこには、ルーデウスとザノバが居た
「なぁ…喧嘩相手って…あいつらか?」
「そうニャ!」
「立場を分からせてやるの…!」
「おいお前ら…」
ルーデウスが話し出す
「あ…なぁ…俺はホントに…無関係で…」
「さぁ?ボスを呼んだところで、俺にボコボコにされる準備は出来たか?我が師匠、ロキシーの人形を破壊した罰を受ける準備が?」
ロキシー?
人形?
何の話か分からない
おいお前ら
まじで何してんだ
「なあ…俺は…何も…知らんのだが…」
「かかってこいニャ!新入り!」
「もう、リニアはすぐにキレる…ヌーニなの」
「黙れ…おまえらごときが神の像を汚してはならない!」
本当になにやってんだお前ら
そう思っているうちに、二人が俺の横から飛び出していった
プルセナがザノバと追いかけっこを始め、ルーデウスとリニアが殴り合っている
「あの…」
「ぶっ殺してやるニャ!」
「ウオォォォ!」
「ちょっと…話を…」
「フシャァァァァ!」
「ハアァァ!」
そうこうしているうちに、いつの間にか彼女たちは捕縛されていた
「あ…あの…」
事の発端を聞きたいのだ
さっさと教えて欲しい
「は!まだボスがいたか!」
「…は?」
「ウオォォォ!」
ザノバが腕をワチャワチャ振りながら走ってくる
俺は壁に向かってジャンプし、そのまま壁に張り付く
そこにルーデウスが岩砲弾を撃ち込み、俺は壁を走って避ける
壁をよじ登ってくるザノバをフォースで空高く吹き飛ばす
壁を蹴ってルーデウスの近くに着地する
接近戦に持ち込み、彼の腕を掴み組み伏せる
だが、急に強烈な風が吹き、弾き飛ばされてしまう
たぶん風魔法だろう
そうして、二人で見合う
俺は手を上げ、ちょっと待っての姿勢を取る
「なぁ…話を…しよう…というかしてくれ」
「え?あなたは知らないんですか?」
「だから…その…概要を…教えてくれ…」
そう言うと、彼らはヒソヒソ話をする
「師匠、そう言えば、彼は余の例の決闘に関与しておりません」
「なるほど…なら、お教えしましょう。彼らが神に何をしたのかを!」
そうして、俺は彼らの大切な人形をアイツらが一方的に破壊したらしいことを知った
それは確実にアイツらが悪い
「なるほど…じゃあいいや…好きにしてくれ…」
そう言うと、彼らはゲスイ笑顔になり、彼らを担いでいく
「分かりました!それではお元気で!」
「さ、行きましょうぞ師匠!」
そうして、よく分からないまま彼らと戦い、戦いが終わる頃には、おおよその事情を理解していた
最初から言ってくれれば、戦う必要はなかったのでは?