『なんで俺がこんなことを…いやいや、フィッツの恋路のためだ』
俺は必死に洞窟の中の魔物と戦いながらぼやく
なんで俺が命がけの戦いをしてるかというと、それは今朝の出来事まで遡る
「では、これよりフィッツの恋愛成就大作戦、会議を始めます」
「イェイ!」
ルークがひたすら拍手している
俺とフィッツはポカンと突っ立っている
「あの~…僕の恋愛成就って?」
「お前が不甲斐ないからだ」
そう言われて、フィッツの身体がビクッと動く
まぁ確かに、この一年よく一切正体を明かさずにフィッツとして接したなとは思う
「本当に根性が無いというか、ビビりというか…」
「ひどいよルーク~…スモークも何か言ってよ~」
「俺は…」
スッとルークの横まで移動し、フィッツの方を見る
「…こっち側だな」
「え~…」
パチン
アリエル様が手を叩き、ちらちらとこっちの方を見る
ルークがいそいそとアリエル様の横に行き、ゴホンと咳払いをする
「ではアリエル様、作戦の説明を…」
「えぇ、まず第一段階。フィッツとルーデウスの二人きりで出かけます。第二段階は、私たちの手でハプニングを起こします。第三段階。ここでピンチを乗り越えた二人は、良い雰囲気になり…」
「ゴクリ…良い雰囲気になり…?」
「…なり…?」
「結ばれます!!」
「むす…あわわ…」
「さすがです…アリエル様…」
「ふふん!そうでしょうそうでしょう!完璧な作戦でしょう!」
まるで国家レベルの大作戦を提案してるみたいなテンションだ
自慢げなアリエル様もカワイイな
「では行きましょうスモーク!ルーク!」
ハッ
そんなこと考えている場合じゃない
「え…どこへ?」
めっちゃ温かそうなマントに着替えている
嫌な予感がする
「下調べに決まっているでしょう?さぁ善は急げといいますし!」
俺とルークはヒソヒソと話す
「珍しく…テンション…上がってるな…」
「あぁ…これは言っても止まらないパターンだ」
「行きましょう!」
俺、ルーク、アリエル様は雪山に来た
フィッツにはルーデウスの元へ向かってもらい、二人で出かける約束を取り付けてもらっている
その間に、俺たちは二人を連れてくる場所を探す
というのが、今回の作戦らしい
それにしても魔物が多い
ルークにはアリエル様の近くに居てもらい、俺が先行する
進んでいくと、ラスターグリズリーの群れが近づいてくる
「おいスモーク!大丈夫なんだろうな!」
「…安心…しろ…大丈夫…」
前に立ち、向かってくるグリズリーに対して手をかざす
集中しろ
力を送り込み
彼らと心を通わせる
先頭の一頭が、俺の目の前で急停止した
後ろのグリズリーたちも、それに合わせるように足を止める
一頭がゆっくりと俺に鼻を近づけ、匂いを嗅いでくる
「ははは…くすぐったい…な…ほら…もう行け…」
グリズリーたちが反対方向に走っていく
「じゃ…進みましょう…」
「すごいな…あれどうやったんだ?」
ルークが聞いてくる
彼は魔物との戦闘経験があまりないから、少し怖いのだろう
「…俺達は敵じゃないと…伝えただけだ…」
アリエル様が木の陰から出てくる
「すごいですねスモーク。頼りになります」
「えへへ…ゴホン!…ありがとうございます…さ…進みましょう」
進んでいくと、ちょうど良さそうな大きさの洞窟があった
ここを彼らを良い雰囲気にする場所に使うということだ
だが、俺には分かる
中には大量の魔物がいる
「よし、ではスモーク行ってこい!」
「…は~い…」
洞窟の中に入っていくと、スノウドレイクの群れが居た
『頼む、一時的にここを貸してくれないか?あとでエサを沢山持ってきてやるから。駄目ならいいんだ』
『オマエ シッテル ワルイヤツ』
『は?いやいやちょっと待ってくれよ。訳が分からないぞ』
『シッテル オシエラレタ アカイヤツ カラ』
『赤い奴…?ちょっと待ってくれ話を聞いてくれ』
『オマエ ココデ コロス』
『ちょ…』
気付けば、スノウドレイク達に囲まれていた
『カカレ――――!』
もしこいつらが洞窟から出てしまうとどうなる
スノウドレイクの相手はルークには荷が重いだろう
そうすると、二人が危険にさらされる
…主にアリエル様が
なら、俺がやることは一つ
こいつらを一体も出さずにここで全滅させる
出来れば、これは使いたくなかった
俺は腰に付いてる剣を取り出し、ボタンを押し込んだ
――ヴゥ…ン
緑色の光刃が伸びていき、暗い洞窟を明るく照らす
四方八方から爪が伸びてくる
俺はかがみこみライトセーバを振りぬく
『グギャア――――!』
フォースで集団のドレイクを弾き飛ばし、地面に叩きつける
『グ…ググ…』
セーバーを横たわっているスノウドレイクに突き刺す
俺は止まらなかった
戦い続けた
セーバーを一度振るごとに、叫び声が…
爪が地面を掻く音が…
光刃が肉を断つ音が…
洞窟に響き渡る
気が付くと、足元には血が溜まっていた
踏み出すたびに、赤い波紋が広がった
残っているのは俺とさっき会話していたリーダーのようなドレイクだけだ
『ヤハリ オマエハ ミンナ コロシタ』
『お前が先に仕掛けたんだろう。それに、聞きたいことがある。赤い奴ってなんなんだ?魔物か?』
『ダマレ ヤハリ ニンゲンノイウコト キクンジャ ナカッタ』
人間の言うこと?
赤い奴は人間ということか
だとすると、一つ疑問が湧く
俺以外に魔物と話せる人間がいるのか?
いや、それだけじゃない
「赤い奴」は、こいつらに俺の存在を伝えている
考えてるうちに、ドレイクが勢いよく向かってくる
俺は身を翻し、脚部にセーバーを刺す
『もう一度聞く。赤い奴ってなんなんだ?』
『グゥッ…』
苦しんでいるが、口は回るようだ
『答えてくれ』
また聞くが、ドレイクは足を自分で引きちぎった
『シネ ニンゲン』
ドレイクが牙をむき出しにして迫ってくる
俺はドレイクの首を掴み、逆向きにねじ切った
これで全部倒したか
アリエル様を呼んでこよう
そう思って立ち去ろうとすると、声が聞こえた
あのドレイクがか細い声で呟いていた
『セン…チュリー アカイ…ヤツ』
セン…チュリー
センチュリー?
それが赤い奴の名前なのか
にしても、魔物を操る謎の人間
これから赤い奴…センチュリーとやらには、注意しなくてはいけないだろう
…やはり、できればこうしたくはなかった
例え魔物でも、殺すという行為は総じて気分が悪いものだ
だが、俺一人の問題じゃない
アリエル様やルークまで危険に晒すわけにはいかなかった
これは、必要な殺しだった
…そう、自分に言い聞かせる
俺は洞窟を出て、二人を探した
「終わりましたよ…二人とも…」
彼らは木の下で休んでいた
怪我してないとはいえ、俺は一応戦ってきたのにこの二人ときたら…
アリエル様がこちらに気付いて走ってくる
「あぁ、終わりましたスモーク?」
「えぇ…でも…中のドレイク達に…襲われました…」
そう言うと、アリエル様はとても驚いた様子だった
「えぇ?!襲われたのになんで助けを呼ばなかったのですか?!」
二人を危険にさらさない為だったのだが、返って心配させたようだ
「すいません…一人でも…なんとかなりそうだったので…」
そして、俺は一番気になることを聞く
「あと…アリエル様…センチュリーという言葉に…聞き覚えは…?」
彼女はしばらく黙ったあと、口を開いた
「すいません…その言葉には全く聞き覚えがありません。その言葉はなんなのですか?」
嘘は
…ついていないようだ
「いえ…なんでも…」
彼らを謎の危険にさらすわけにはいかない
この件は出来るだけ俺一人で解決したい
その後、三人で洞窟の掃除、整備を終わらせ、フィッツいちゃいちゃ大作戦の準備は完了した
ただ
どうしても
『センチュリー…ね…』
その言葉だけが、俺の頭から離れなかった