元引きこもりのTS転生美少女と素直になれない一軍ギャル〜勇気を出して助けたら恋人になっていました〜   作:あかぱん

7 / 10
張り込み開始

金曜日、夜八時四十五分。

 

俺は駅裏の薄暗い路地、自動販売機の影に身を潜めていた。

黒いキャップを目深に被り、大きめのパーカーのフードを被った完全な不審者スタイルである。

 

(……待てよ)

 

自販機の反射ガラスに映る自分の姿を見て、俺は冷や汗を流した。

 

(薄暗い路地裏で息を潜め、友達のバイト終わりを待ち伏せする女子高生……これ、客観的に見たら俺自身が完全にストーカーなのでは???)

 

前世の引きこもり男が、美少女の身体でギャルの後をつけて張り込んでいる。

もしもここで、今お巡りさんに職務質問されたら、どんな言い訳をしても社会的に即死する自信がある。

……というか、捕まる自信しかない。

この場で、『いえ、ストーカーを警戒するためにストーキングしてまして……』などという供述が警察に通るはずもない。

 

(……て、いやいや、今はそんなくだらない自虐をしてる場合じゃない……!)

 

頭を振って雑念を振り払い、ドラッグストアの従業員用裏口へ視線を戻す。

 

勝負の時間は九時。

路地裏は街灯が切れていて、自販機の青白い光と、遠くの駅前通りの喧騒がかすかに届くだけの死角だ。人通りはほぼゼロ。

張り込みを始めて十分が経過した、その時だった。

 

カサリ、と路地の奥から乾いた足音が響いた。

 

(……来た!?)

 

息を殺して自販機の隙間から覗き込む。

裏口の鉄扉から十メートルほど離れた、ゴミ集積所の物陰。そこに、いつの間にか一人の男が立っていた。

 

暗くて顔まではよく見えないが、年齢は三十代から四十代くらい。ヨレたウインドブレーカーを着て、視線をじっと従業員用ドアに固定している。

ただの通りすがりなら、こんな暗がりで立ち止まる理由がない。

 

(ビンゴだ……! 本当に待ち伏せしてる……!)

 

心臓がドクンと跳ね、喉の奥がカラカラに乾いていく。

ネットの情報とマップの分析通りだったという達成感よりも、生々しい悪意がすぐそこにある恐怖が勝って、膝がカタカタと震えだす。

 

(落ち着け……スマホはポケットの中。防犯ブザーアプリは起動済み、ショートカットも親指の届く位置にある……)

 

何度もシミュレーションした手順を頭の中で反芻する。

 

ガチャン――。

 

重い鉄の扉が開く音が、静かな路地に響き渡った。

カバンを肩にかけ、疲れた様子で私服に着替えたリオが裏口から出てくる。

 

「ふー……今日も疲れたぁ……」

 

小さく伸びをするリオ。

その無防備な背中に向かって、ゴミ集積所の男がスッと音もなく足を踏み出した――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。