【11】
── それはいつもの仕事のはずだった。
難民を連れ、シティへ護送する。
コスモドロームでの目覚めからずっと続いたライフワーク。
「…様子がおかしくありませんか?」
ゴーストが不安げな声を上げる。
遠くから聞こえるのは戦闘音。
それもシティの方角からだった。
難民達を待たせて先行する。
── 火が上がっている!?
最後の安全な都市 ── その事実は脆く崩れ去りシティの至る所に煙が上っていた。
空に浮かぶトラベラー ── ガーディアン達の光の源にはその巨大な姿に比する装置が取り付けられる。
瞬間、全身から力が抜けるような感覚が走る。
傍らに浮いていたゴーストは墜落し、すんでの所で受け止めた。
── 光が失われている。
その事実に驚きながらも行動する。
── ここはもう安全とは言えない。
再起動したゴーストを連れ、引き返す。
最後にシティの上空を見る。
空を埋め尽くす艦船は話だけしか聞いたことがない ── カバルのものだった。
【12】
難民達のキャンプ、その周辺のパトロールをしているときのことだった。
飛び出した影に反応する。
しかしそのクロークは見覚えがあるものだ。
「おいおい、いつぞやの新入りじゃねぇか!?」
その軽薄に笑う顔にヘルメットは無く、青い肌と輝く瞳 ── アウォークン、かつて彼を送り出したハンターだった。
彼はシティからの難民達を連れていた。
あの女性のウォーロックもいる。
── 彼は殿を勤めているのか?
そこにはあの大柄な男はいなかった。
ハンターの顔から笑顔が消える。
「彼は死んだ」
ウォーロックが無機質に言う。
「私が命じたの」
── 盾になれと。
足元が崩れるような感覚がした。
「…あいつは最期まで笑っていやがった」
── かっこつけやがって。
ハンターが吐き捨てるように言う。
そんな言葉を聞いても信じられない。
── 彼は今の自分を見てどう思うだろう。
その答えは永遠に失われたのだ。
【13】
難民達を守るために三人でファイアチームとして行動する。
「いいか、新入り」
ハンターは手にあるエキゾチックな見た目のハンドキャノンを見せる。
「光の戦士にとって最も大事な物は何か?」
的代わりの空き缶が吹き飛ぶ。
構える瞬間など見えなかった。
「 ── 見た目だ」
銃口からは煙が上がっている。
「こいつはファースト・カース」
「見た目だけでしょう」
ハンターは不満そうにウォーロックを見た。
「報酬のほとんどをつぎ込んで…」
── 合理的じゃないわ…
「絶望に対するための美学と呼んで欲しいね」
ハンターは軽薄に言い放った。
「…坊や」
思わずムッとする。
そこまで子供扱いされるいわれは無い。
「彼の言うことには正しい部分も確かにある」
肯定されたハンターは笑みを浮かべる。
「でも全てというわけではない。何が大事かは自分で決めるの」
── 物事の本質を見抜きなさい。
パトロールの傍らで彼らに生きるための術を学ぶ。
そんな日々が続いた。
【14】
「私達は反抗作戦に合流する」
── ここでお別れよ。
意味が分からなかった。
自分達は光を失っている。
死にに行くようなものだった。
噛みつく自分に彼女はフードを外す。
そこにあるのは機械の貌 ── エクソであることを示していた。
彼女は無機質だが確かな温かみがある声で言う。
「確かに合理的じゃないわ」
彼女が肩に手を乗せる。
「でもいつかきっと解る時が来る」
ハンターが笑う。
「じゃあ俺からはこれだ」
彼から手渡されたのはハンドキャノンだ。
「代わりにお前の銃を預かる」
── 帰ったら返してもらう。
受け取ったファースト・カースを握りしめる。
「強くなりなさい、タイタン」
そう言って二人は去って行った。
彼は待ち続ける。
── シティからの使者が難民達を護送する。
彼は待ち続ける。
── 使者は何も言わず、彼が来ないことを受け入れた。
彼は待ち続ける。
── 守り抜いた難民達が気遣わしげな視線をよこす。
彼は待ち続ける。
それでも二人は帰ってこなかった。