どうやら俺は異世界帰りの元勇者らしい~目が覚めたら元いた世界(?)にダンジョンが出現していたので、自分の中に秘められた力で無双してみる~ 作:記憶喪失22号
未だ全く理解の追いついていない、現代ファンタジーなパラレルワールドへの転生。はたまた、この世界での
元居た世界では、コミュ障根暗陰キャ、それが災いして結構ハードないじめを受けていた俺君もこの世界では違うかもしれない。
そんな淡い希望を、フウカとの再会で抱いていたのだが……今この瞬間にそれは呆気なく打ち破られた。
「おい、なんか言ってみたらどうだ、万年最下位?」
しかも、その虐めの主犯格が元居た世界と同じ人間ってのも質が悪い。
「お、おはよう……鈴原くん」
見上げるほどの高身長に、厳つい丸刈り。高校生徒は思えぬ屈強な筋肉はそれだけで強烈な圧力がある。
──元居た世界では高校が別になってこいつから逃げられたけど、こっちの世界では無理だったんだな……。
大きな変化点を感じながら、俺はバレないように他にも元の世界で同級生だった奴がいないかを探してみる。
だが、ざっと見た感じでも見覚えがあるのはスズハラのみで、それ以外はみんな初めまして。……そりゃそうだ。
そもそも、ここは俺が生まれ育った地元ではない。ぽんぽんと知り合いが出てこられても困る。だからこそ、どうしてこいつがいるのか……。
──おいおい、こんな暴力男が探索者の卵だって?
そりゃ悪手じゃろ……。今にも理不尽な言葉や、果てには暴力をしてきそうなスズハラにゲンナリしていると、不意に予鈴を告げるチャイムが鳴った。
今日は俺が寝坊していたこともあって登校するのが遅かった(幼馴染談)。すぐに担任らしき女性教師が教室に入ってきた。
「全員席に着け、朝のホームルームを始める」
「チッ……運だけはいい奴だよな、お前って」
流石のスズハラも教師の前では横暴な態度を取ることができないようで、去り際にさり気なく腹パンをかまされながらも、そそくさと自分の席に戻る。解せぬ。
俺も自分の席(ゴミ溜め)に一旦座った。それを見た美人な担任教師は淡々と連絡事項を話し始めた。
──……何となく予想はしていたけど、この状況は全スルーなのね。
それだけで、このクラスの劣悪さが容易に察せられる。
「はぁ……また中学時代の時に逆戻りか」
小さく溜息を吐きながら、やはりここは自分の知る世界じゃないのだと再認識させられた。
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軽くネットで調べてみれば、簡単に学校の情報が出てきた。
東京都立探索者養成学校。
それがこの学校の正式名称だ。
「世界に
一限目の授業は歴史。おさらいするかのように、壮年の歴史教師の言葉に誰もが静かに耳を傾ける。
その話を要約するとこうだ。
世界の地下に突如として出現した広大な
ダンジョン内はこの世とは別物の生物や資源が存在し、まさに異世界そのもの。そこから齎されたダンジョン資源が現在のエネルギー産業の殆どを支えていて、人類とは切っても切れない存在となっているんだとか。
しかし、前述した通り、ダンジョンにはこの世とは別の生物──危険なモンスターが蔓延っていた。
しかも、モンスターには現代兵器が一切効果が無く、唯一の対抗策は魔力に適合した解放者の揮う特殊な力と、それに準じた新兵器のみ。この新兵器とやらは魔力に適合した解放者にしか扱えないものらしい。
故に、ダンジョンに入ることができるのは実質的に解放者のみとなり、彼らはそのうち〈探索者〉とその呼び名を変えた。
そして学校名の通り、都内の広大な一等地に鎮座するこの学校は、そんな探索者を養成する教育機関であると……。
──聞けば聞くほどこてこての現ファ世界じゃないですかヤダー。
元居た世界ではこう言ったファンタジー小説やマンガに熱心に触れてきたし、案外すんなりとこの世界観を受け入れることはできた。
それでも、完全にすべてを理解できたわけではないし、疑問は止まらないし、謎は深まるばかり。
そもそも、俺はこれからどうするべきなのか?
それが一番の問題だ。
──ダンジョン、モンスター、探索者、他にも気になる単語がエトセトラエトセトラ。
実に厨二心を擽る単語の数々であるが、それはフィクションの場合であって、実際に現実として出てきてしまうと反応に困る。
──だって、普通に危ないですやん? 危険が危ないですやん?
こちとら、昨日まで平凡な根暗陰キャ高校生をやっていた凡人だ。更にいえば帰宅部。ゴリゴリのインドア派だ。
そんな弱者男性が急にこんな世界に放り込まれても何もできるはずがない。俺には秘められた力なんて存在しないのだ。
そんな思いが六割。逆に言えば、残り四割の呑気な俺はこの現代ファンタジー世界を満喫してみたい気持ちもある。
命の危険に目を瞑れば、こんな世界に来たのだからテンプレな探索者ライフとやらを体感してみたい。
──そもそも、元の世界に帰れるのか?
それすらも不明だ。
置かれている状況的に、遅かれ早かれダンジョンに潜ることは確定している。不安がってばかりいても仕方がないのも事実だ。
──腹括るしかないよなぁ。
とりあえずの目標はこの世界に順応する為に色々と情報収集して、できれば元の世界へ戻る方法を模索すること。
まあこれはあくまで仮の指針。その時のテンション感でいい感じに調整していくとしよう。……後は死なない程度に今からでも頑張って強くならないといけないか。
「くすくす……」
「ねぇ、やめたげなよ」
「いやいや、レイヤさんの命令には逆らえないから」
そんなことを考えていると、不意に横から何かを投げつけられ、押し殺したような笑い声が聞こえた。
チラリと声のする方を窺ってみれば、そこにはいかにも三下の男子生徒が適当に丸めた紙くずをこちらに放ってきていた。
「またこてこてな……」
世界がどんなに変わろうとも、思春期のこういった醜い虐めの実態は変わらない。
元居た世界では中学卒業まで虐めを受けて、高校に入ってからは目立たずひっそり息を殺して上手く立ちまわることができた。
友達は疎か、クラスにも馴染めずにボッチであったが、あの平穏な日々が既に懐かしい。
──流石にあと一年半以上も虐められるのは勘弁だなぁ。
別にぼっちでも問題はないが、周りでガチャガチャとちょっかいをかけられるのは目障りだ。どうにかしたいところだが、「それじゃあどうやって?」と聞かれてしまうと何も思いつかない。
ただでさえ慣れない環境で色々と四苦八苦しているのに、そこに人間関係まで入ってくるのは更に面倒くさい。だから人付き合いは嫌いなんだ。ボッチ最高。
……取りあえずは、ネットや授業なんかで色々とこの世界の情報収集に努めよう。
幸いというべきか、この世界のキヨタカ君も俺と同じで授業の板書はちゃんと取るタイプだったらしい。これだけでも、かなり助かる。
──……そういや、さっきスズハラに理不尽に腹パンされたけど、別に痛くなかったな。
情報過多でだいぶ印象が薄くなってしまったが、昨日までの俺なら普通にその場で蹲ってしまうレベルの威力だった。
──もしかして、こっち世界の俺は結構身体が頑丈なのかもなぁ?
ぺらぺらと過去のノートを流し見しながら、ぼんやりとそんなことを考える。
まあ探索者になれるくらいの才能はあるわけだし、それもあり得なくはないだろう。