【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します! 作:夕姫777
17. 後輩ちゃんは基本『リアタイ』らしいです
オレも鈴町さんの様子を見ながら、同じように缶ビールのプルタブを開け、喉を潤していく。ああ、やっぱり美味いな。特に今日の慌ただしい一日を終えた後のこの一杯は格別だ。普段はほとんど口にしないんだけど。
ふと隣の鈴町さんを見ると、既に頬から耳にかけて可愛らしいピンク色に染まっていた。
「大丈夫か鈴町さん?」
「はい……平気……です……ふぅー……」
と、息を吐き出した。とても平気には見えない。初めてのお酒だろうし、何よりまだこの新しい環境に緊張しているせいか、アルコールの回りが人一倍早いのかもしれない。
「鈴町さん。お腹に何か入れようか。このままだとすぐに酔っ払ってしまいそうだぞ」
「はい……」
素直に頷く鈴町さんに、オレは冷蔵庫からチーズやサラミを取り出し、適当な大きさに切って皿に盛り付けた。
「ほら、鈴町さんも食べな」
「ありがとうございます……いただきます……」
鈴町さんはまるで小さなリスのように、ちょびちょびと酎ハイを口に運びながら、おつまみを少しずつ摘んでいる。その慎ましい姿にオレは思わず自然と笑みを浮かべていた。意外と食べるんだよなこの子。この前のお寿司の時も、結構な量を平らげていた記憶がある。
「おいしいです……」
「好きなだけ食べるといいよ」
「はい……ましろん先輩は……優しいですね……」
「それよりオレさ、鈴町さんのことまだよく知らないから教えて欲しいんだけど」
「え……なにを……ですか?」
何って言われてもなんだが。これから二人で『ましのん』として活動していくにあたって、お互いのことをもっと深く知っておく必要がある。まずは鈴町さん自身について知ることから始めなければ。
「鈴町さんって、何歳なの?オレは今年で24になるんだけど」
「今年、21……に……なりました」
なるほど。まぁ、年相応ではあるか。オレより三つ年下なんだな。
「なんで、飲酒配信やりたかったんだ?」
「ましろん先輩の……配信を見て……いつか、やりたいって思って」
オレの飲酒配信なんて、確か大分初期の頃、しかも一度しか配信していないはずだ。アーカイブも、もう残っていないだろう。確か酔っ払って危ないことを言いそうになって、桃姉さんにこっぴどく怒られた記憶がある……懐かしいな。もうあれから二年も経つのか。
「良く覚えてるな。あれは一回しか配信してないし、結構初期の頃だよな?」
「ましろん先輩の配信は……いつも見ているので……基本、リアタイ……です」
鈴町さんは、本当に『姫宮ましろ』のことを尊敬してくれているんだろうな……この前のVtuberになった理由も、安易に聞いてしまったけれど、あんなにもガチガチに陰キャでコミュ障な鈴町さんが、勇気を出してスパチャを送ってくれたのだとしたら、それは相当な覚悟だったに違いない。配信も、基本リアタイ視聴……
「あれ?鈴町さんは、今日の『姫宮ましろ』の配信も観たの?」
「はい……観てから……二度寝しました……ごめんなさい」
わざわざ、配信前に起きて見てくれていたのか……なんだか申し訳なくなってくるな。そんなこんなで、飲み始めて一時間ほど経った頃、鈴町さんの様子が明らかに変わってきた。
最初は、頬がほんのり赤くなる程度だったのが、次第に呂律が怪しくなり言葉の端々が曖昧になってきている。そして、とろんとした目でこちらを見ていたかと思うと、突然テーブルに突っ伏してしまった。
「鈴町さん?大丈夫か?」
慌てて声をかけると、彼女は顔を上げたものの、目はうつろで辛そうに眉をひそめている。
「気持ち……悪い……れす」
どうやら、限界がきてしまったようだ。オレは急いで彼女を支えトイレへと連れて行く。
「うぅ~……」
「吐くなら、ここにしてくれよ」
「ましろん先輩……苦しいれす……その……胸……」
え?鈴町さんは、おそらくブラジャーのホックを外して欲しいと言っているのだろう。しかし……そんなことできるわけがない。
「あのな、鈴町さん……それは……」
「ましろん先輩……お願い……します……」
そう言って、鈴町さんはいつもとは違う甘えたような声と、潤んだ瞳で訴えてきた。だ、ダメだ。これは断れない……
「わかった……」
オレは、意を決して、震える手で鈴町さんの背中に手を回し、ブラジャーのホックを外した。意外に……あるな……いやいや、別に触ったわけじゃないし、そもそも上は着ているから、直接見えているわけじゃない。焦る必要はない。それから何度か嘔吐した鈴町さんは、ぐったりとした様子でリビングのソファに横になった。
「水、持ってくるから待っていてくれ」
「はい……ごめんなさい……」
「ほら、飲めるか鈴町さん?」
「ん……」
ゆっくりと体を起こした鈴町さんは、オレの手にあるコップを弱々しい手で掴むとゴクゴクと水を飲んでいく。オレは、なるべく鈴町さんの身体を見ないように視線を逸らした。変な想像をすると本当に困るからな。
「ありがとうございます……ましろん先輩」
「気にするな。それより気分は?」
「だいぶ、落ち着きました……」
「そうか。でも、今日はもうお開きにしとこう。また明日もあることだしさ」
「はい……」
オレは、散らかった空き缶やゴミを片付け、テーブルを丁寧に拭いてから、ふらつく鈴町さんをそっと抱きかかえ、彼女の部屋のベッドまで連れて行き横にさせた。
「ましろん先輩……おやすみ……なさい」
「ああ、お休み」
鈴町さんがすぐに目を閉じて、静かに寝息を立て始めた。オレはその様子をしばらく見守ってからそっと部屋を出てドアを閉めた。鈴町さんはどうやらお酒に弱いことが判明した。今日は緊張していたせいもあるだろうけれど、少なくとも今の段階で飲酒配信は無理だな……
「それにしても、鈴町さん……酔うとあんな感じになるのか……普段の大人しい雰囲気からは想像もできないくらい、甘えてくるんだな……可愛いところ、あるんだな……って、オレは何を考えているんだ?」
自らの思考に気づき、オレは自分の頭をガシガシと掻きむしった。鈴町さんの、あの甘えた声と潤んだ瞳が、頭の中で何度も思い出してしまうのだった
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