【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!   作:夕姫777

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21. 後輩ちゃんは『サムネ』を作りたい

21. 後輩ちゃんは『サムネ』を作りたい

 

 

 

 翌日。いつものように朝の配信をしてから『姫宮ましろ』宛てに来ている案件の確認や、細々とした事務作業を片付けていく。

 

 今週末には、いよいよ鈴町さんとのユニット『ましのん』の正式発表配信が控えている。その準備も進めなくてはならないしな。

 

「ま……ましろん先輩。おはようございます」

 

「ああ。おはよう鈴町さん」

 

 扉が開き、寝起きの鈴町さんがのそりとリビングに現れた。少し寝癖のついた髪を揺らしながら、トテトテと冷蔵庫に向かい牛乳を取り出す。その無防備な姿を何気なく見ていたオレは、あることに気がついた。

 

 ……ん? 鈴町さんが着ているあのダボッとした部屋着用のTシャツって、もしかして……。

 

「鈴町さん。そのパジャマって『姫宮ましろ』のコラボTシャツか?」

 

「え?あ……はい……そうです……」

 

「へぇ~似合ってるよ。でもそれって去年の夏に限定販売したやつだよな?よく買えたね?」

 

「はい……頑張って、5枚持ってます……」

 

「ご、5枚……そうか……ありがとな」

 

 保存用、鑑賞用、布教用、そして実用ローテーション用といったところだろうか。ガチ勢の鑑のような答えに、オレは少しだけ圧倒されてしまった。顔を真っ赤にして牛乳を飲む鈴町さんは、本当に『姫宮ましろ』という存在を愛してくれているらしい。

 

「そう言えば週末の『ましのん』のユニット発表の配信用のサムネ出来てる?」

 

「あっ……まだです……」

 

「そっか。鈴町さんは今日の配信は夜?もし良かったら、それまで一緒に作ろうか?」

 

「あ……でも……サムネは私が作るって……最初に言ったので……」

 

 迷惑をかけまいと遠慮する鈴町さんに、オレは軽く笑いかけた。

 

「遠慮しなくていいよ。2人の『ましのん』だろ?オレたち」

 

「っ……!はい……よろしくお願いします……ましろん先輩」

 

 『2人の』という言葉が嬉しかったのか、彼女はパッと表情を明るくしてコクコクと頷いた。

 

 そしてオレは早速彼女の部屋にお邪魔し、パソコンのモニターを見ながら色々とアドバイスをしながら進めていく。

 

 ちなみに鈴町さんの部屋には『姫宮ましろ』のグッズが沢山飾られていた。ポスター、アクリルスタンド、ぬいぐるみと、ありとあらゆる『姫宮ましろ』グッズが所狭しと飾られていた。中にはオレ自身「こんなの出したっけ?」と思い出せないような初期のマイナーグッズまである。

 

 ファンにとって、推しの空間を作るのは至福の時なのだろう。……もちろん、彼女自身の『双葉かのん』のグッズも少しは飾られているのだが、圧倒的に『姫宮ましろ』の比率が高いのには思わず苦笑してしまった。

 

「うーん……このイラストなら、もう少しキャラを引き気味に配置した方が面白いんじゃないかな?」

 

「あ……はい……」

 

 パソコンのモニターを並んで見つめながらアドバイスをするが、鈴町さんの反応はどこか歯切れが悪い。あまり納得していないのか微妙な反応をしている。

 

「どうした?何か気になることでもあった?」

 

「いえ……その……サムネのイラスト……他にないかなと思いまして」

 

「鈴町さんはこのイラストはあまり納得いってないのか」

 

「はい……初めての発表ですし、もっと……『ましのん』の……2人の魅力がぎゅっと伝わるような、特別なサムネに……したくて」

 

 普段はオドオドしている彼女だが、こういうクリエイターとしてのこだわりを語る時の瞳は、とても真剣でキラキラしている。

 

 基本的にVtuberの配信サムネイルは、ファンアートのタグをつけて投稿してくれたリスナーさんのイラストをお借りすることが多い。

 

 もちろん、配信で使わせてもらう旨はあらかじめプロフィールや初配信などで公言しているし、暗黙の了解として成り立っている文化だ。

 

 だが、今回の『ましのん』については、まだ事務所から公式にユニット発表をしていない。そのため、SNSを探しても「ましろ」と「かのん」を2人セットで描いてくれたイラストは少なく、鈴町さんの思い描くイメージにぴったりハマるものが見当たらないのだ。

 

 一応、オレのアカウントで「2人のイラスト描いて!」と募集をかけることもできるが……それだと週末の重大発表の前に『ましのん』の存在を盛大に匂わせることになってしまう。サプライズ感が薄れるのは避けたい。

 

 どうしたものかと腕を組んで悩んでいると、ふと良いアイデアが閃いた。

 

「鈴町さん。他のライバーさんに頼んでみないか?」

 

「え?」

 

「事務所のライバーさんなら、水面下で『ましのん』が動いてることは知ってるし、情報解禁前でも気兼ねなく頼めるだろ?」

 

「確かに……そうですね……。でも、誰に頼めば……いいんでしょうか?」

 

「1期生の『神川ひなた』さんなんてどうだ?確か、デビュー前はプロのイラストレーターさんだったはずだよ。絵のクオリティは折り紙付きだし、すごく優しい人だからお願いしやすいかもな」

 

 神川ひなた。Fmすたーらいぶ1期生でオレの同期でもある。見た目は神社の巫女服を着ていて、長い黒髪で美人。いつもニコニコしている癒し系お姉さん。大型企画などでは司会やまとめ役を任されることも多く、模範的でみんなの憧れ。コンセプトは「Fmすたーらいぶ内の癒し系ほのぼのお姉さん」らしい。そして元イラストレーターさん。得意な配信はもちろんお絵描き配信で、プロの技を見られるとあって常に大盛況だ。

 

「ましろん先輩は……ひなた先輩と、仲良いん……ですか?」

 

「いや?企画で通話越しに数回会ったくらいかな。あとは事務的な連絡がたまにくるくらいだよ」

 

「でも……私みたいなのが……いきなり頼んで……迷惑じゃないでしょうか?」

 

「大丈夫だと思うぞ。オレもフォローしてやるから、まずはディスコードで相談だけでも送ってみるといいよ」

 

「えっ……わっ私が……確認するんですか?」

 

「サムネは鈴町さんが作るんだろ?」

 

「うぅ……わかりました……」

 

 鈴町さんは悲壮な決意を固めたような顔で、震える手でマウスを握り直した。

 

 ディスコードの画面を開き、連絡先から『神川ひなた』のアイコンを見つけて、一つ一つのキーを確かめるようにメッセージを打ち込み始めた。

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