【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!   作:夕姫777

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22. 後輩ちゃんは『シンデレラ』らしいです

22. 後輩ちゃんは『シンデレラ』らしいです

 

 

 

「あの……初めまして……Fmすたーらいぶ3期生の『双葉かのん』です。突然連絡してしまい……申し訳ありません……少しご相談がございまして……少し……お通話よろしいでしょうか。……送信。」

 

 鈴町さんは、まるで爆弾のスイッチでも押すかのような決死の覚悟で、マウスのクリックボタンを押し込んだ。

 

 ピコンッ。

 

 すると、こちらが拍子抜けするほどすぐに返信の通知音が鳴る。画面を食い入るように見つめ、そしてすぐにオドオドしはじめる。

 

「あの……ましろん先輩……だ……大丈夫みたいです……どど……どうしたら……」

 

「どうって、別に気にせずそのまま通話かければいいと思うぞ」

 

「でも……私……声小さいですし……緊張して……頭真っ白になって……上手く話せないかもしれません……」

 

「じゃあ、オレがいると余計に話しにくいだろうし、ちょっと席外すよ」

 

「それは……ダメです!」

 

 鈴町さんは首を横に振りながら涙目で必死になってオレの腕を掴んでくる。

 

「わ……わかったから離れてくれ」

 

「あっ!……すいません……」

 

 慌ててパッと手を離した彼女は、ふぅー、はぁーと深呼吸を繰り返し、ぷるぷると震える手でマウスを動かして通話ボタンを押した。

 

 プルルルル……という無機質なコール音が二度鳴り、カチャッと繋がる音がする。

 

 《もしもしー?》

 

「も……もしもし……え……Fm……すたーらいぶ……3期生の……『双葉かのん』と申します……」

 

 やはり電話越しだとさらに小さくて弱々しい声で喋っていた。本当に小動物のような子だな……

 

 《あら~ずいぶん可愛い声だね。かのんちゃん。初めましてFmすたーらいぶ1期生の『神川ひなた』です。それで私に相談したいことって何かな?》

 

 鈴町さんはビクッと身体が跳ね上がっていた。あれ?なんか……鈴町さんの様子がおかしい気がする……なんだか怯えているような……するとオレの方をチラッと見て、何かを訴えかけているような眼差しをしていた。

 

 ……仕方ない。オレはため息を一つ吐くと、鈴町さんの目の前にあるマイクをスッと自分の方へ引き寄せた。

 

 《もしもし?かのんちゃん?》

 

「もしもし、ひなたさん。お忙しいところすみません。『双葉かのん』のマネージャーの神崎です。実は、かのんちゃんが極度の人見知りでして……」

 

 《あー、なるほど。ふふっ、噂には聞いてますよ。神崎さん、お疲れ様です~》

 

「ええ。なので今回は、一旦私の方で要件をお話しさせて頂きますね。実は、『ましのん』のユニットイラストを描いていただけないかと思いまして。週末のユニット発表配信で、サムネイルとして使わせていただきたいんですが……」

 

 《あぁ~、なるほど!そういうことでしたか。もちろん構いませんよ。私たちは同じ事務所の仲間なんですから、遠慮せずにどんどん頼ってくれていいんですよ》

 

 そこからはオレも交えて、少しの間なごやかな世間話で盛り上がった。鈴町さんも、オレがクッションになったことで少しずつ場の空気に慣れてきたのか、相槌を打ったり、小さな声で会話に参加できるようになっていた。

 

 そして、話はいよいよ本題へと入っていく。

 

 《それで。どんなイラストがいいのかな?かのんちゃんの希望はあるかな?》

 

「えっと……かのんは……ずっとましろん先輩のこと……見てきて……同じVtuberになって……そして一緒に活動できて……まるで……シンデレラになった気分で……ずっと、私の憧れで……」

 

 さっきまでのオドオドが嘘のように、鈴町さんは目をキラキラと輝かせ、モニターに向かって熱い思いを語り始めた。推しを語り出すと止まらない、特有のヲタク特有の早口が少し混じっている。

 

 《そう、そんなにましろちゃんに憧れてるんだね。ましろちゃんが聞いたら、きっとすごく喜ぶと思うよ。……よしっ、それなら……シンデレラのストーリーみたいな『ましのんてぇてぇ』イラストにしようか。》

 

「シンデレラ……ですか?」

 

 《うん。ましろちゃんが王子様役でかのんちゃんがシンデレラ、そして私は魔法使いで登場しよっかな……。いや、せっかくだから全員描いちゃお》

 

「ましろん先輩が……王子様……すごく良い……」

 

 そんなこんなでトントン拍子に話し合いは進み、なんと配信前までにラフから完成まで仕上げてもらえることになった。

 

「急なお願いにも関わらず、本当にありがとうございます。イラスト、楽しみにお待ちしております」

 

 《いえいえ、お気になさらず。そうだ、かのんちゃん。ひなたとも、今度ぜひコラボしようね。楽しみにしてるから。それじゃあね~》

 

 そう言って通話は終了した。緊張しながらもイラストについてはOKを貰えてホッとしたのか、鈴町さんは肩の力が抜けて大きく息を吐いていた。

 

「ましろん先輩……本当に……ありがとうございました」

 

「気にするなって。良く頑張ったな。これからはオレも頼っていいから。さっきも言ったけどオレたちは『ましのん』だろ?」

 

 良く頑張ったな……か。まるで子供みたいだよな鈴町さんは。でも、描いてもらう『ましのん』のイラストについては結構細かく希望を言っていたけどな……。まぁそのくらい普段から自分の意見を言ってくれると助かるんだけどな。

 

 そしてその日の夜。神川ひなたさんから素晴らしい『ましのんてぇてぇ』イラストが送られてきた。

 

 それを見た鈴町さんは、無言のまま天を仰ぎ、限界を迎えたように静かに大興奮の震えを堪えていたのだった。

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