【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します! 作:夕姫777
23. 姫は後輩ちゃんと『共に』決意する
なんとか無事にサムネも完成し、いよいよ重大発表の配信前日となった。
完成したイラストは全体にぼかし加工を施し、『姫宮ましろ』のTwitterアカウントで「明日、重大発表!」とだけ添えて告知ツイートを投稿した。シルエットだけでも期待感が高まったのか、リプライ欄はすでにリスナーたちの熱気で溢れかえり、とんでもない数の反応を頂いている。
今日は事務所で最終の打ち合わせがあるので、桃姉さんと鈴町さんと共に向かうことにした。実は今日は社長と会うことになっている。事務所初のユニット『ましのん』にどれだけ期待値が高いのかを実感させられるな。
鈴町さんはいつも以上に借りてきた猫みたいに大人しくなっていた。事務所に着くと、桃姉さんと別れて会議室に向かう。扉を開けるとそこには既に事務所の代表取締役である星乃社長がいた。相変わらず、凛としたオーラのあるお綺麗な人だ。
「おはよう。弟くん。鈴町さんも」
「おはようございます」
「おおお……おはよ……ござい……ます」
「そんなに緊張しないでいいわよ。楽にしなさい」
そう言われても……極度の人見知りである鈴町さんには「楽にする」という指示そのものがハードル高すぎるだろうな。
オレたちは席についてまずは軽く挨拶を交わした。隣の鈴町さんは、息をするのも忘れているんじゃないかと思うほど顔が強張っている。オレがフォローしないと……今は『姫宮ましろ』だけど、一応『双葉かのん』のマネージャーでもあるわけだし。
「いよいよ明日ね。プレッシャーをかけるわけじゃないけど、このユニット発表は会社の未来を大きく左右することになるわ」
「はい」
「は……はぃ……」
「数あるカップリングの中から、あなたたちを選んだのは実は私なのよ。だからあなたたちの意思を知りたいわ」
そう言って社長はオレたちのことをジッと見つめていた。そして社長はオレたちに語り始めた。
「私たちVtuberの運営は、ただ配信をやらせてお金を稼いでいるわけではないの。確かに企業に所属している以上、会社の利益のために活動することは大前提かもしれないわ。でもね、第一に『自分自身が楽しむ』こと。そして『ファンの人たちを心から喜ばせる』ために活動していく必要があるの。……あなたたちに、その覚悟はあるかしら?」
それは、オレも鈴町さんも、日々の活動の中で痛いほどわかっていることだった。
でも、こうして事務所のトップから改めて真っ直ぐに問われると、なんというか、胸の奥に熱くグッとくるものがある。重苦しいプレッシャーではなく、背中を力強く押されるような感覚だ。
デビューしたての頃、正直オレはこの活動にあまり乗り気ではなかった。ただの成り行きだと思っていた。
でも、隣で震えながらも一生懸命に頑張る鈴町さんを見て、考えが変わったのだ。オレは、この子と共にトップVtuberになりたい。いや、なってみせると。
だから——オレは、社長の目を見返して、はっきりと口を開いた。
「オレは……このFmすたーらいぶ……いやVtuberのトップに立ってみせます。そう思わせてくれたのは1人のオレのファン……そのファンのためにもオレは『姫宮ましろ』のことを誇りに思っています」
「私も……『双葉かのん』として精一杯頑張りたい……と思います……ましろん先輩と一緒に……」
オレと鈴町さんの真っ直ぐな言葉を聞いて、張り詰めていた社長の表情がフッと緩み、華やかな笑顔が咲いた。
「ふふっ。そう……あなたたちを選んで良かったわ。期待してるわよ。頑張りなさい。事務所としてもバックアップは惜しまないから安心してちょうだい。あとはあなたたちがどこまでいけるか見せてもらうわよ」
社長は優しく微笑んでいた。その笑みはどこか嬉しそうな感じにも見えた。会議室を後にして、桃姉さんを事務所の入り口で待っていると1人の少女に話しかけられる。
「ごきげんよう」
不意に、背後から鈴を転がすような、品のいい可憐な声が響いた。
振り返ると、そこには1人の少女が立っていた。艶やかな薄茶色の髪をなびかせた、小柄な女の子だ。きちんと着こなされた制服は、一目見ただけでも質の良さがわかる有名なお嬢様高等学校のものだった。ということは、現役の高校生か?すると彼女は鈴町さんの目の前まで近寄ってきた。
「お久しぶりです。えっと……双葉かのんさん?」
「あ。えっ……あっ……」
話しかけられた鈴町さんは、ひときわ大きく肩を跳ねさせ、凄まじく挙動不審になっている。知り合いなのか?
鈴町さんはパニックになりかけながら、「助けて!」と訴えかけるようにオレの方をチラチラと見てくるが、さすがに事情がわからない以上、どうしようもない。
オドオドする鈴町さんと、優雅に微笑む少女。そんな膠着状態のところへ、ついに救世主が現れた。
桃姉さんだ。桃姉さんもこちらに気付いたようで駆け足で向かってきた。
「あら。こんにちはソフィアちゃん」
「桃さんごきげんよう」
「あっ紹介するわね。この子はFmすたーらいぶ3期生の葉桐ソフィアちゃん。この男の人は私の弟で……かのんちゃんのマネージャーを担当している、神崎颯太よ」
やっぱり3期生か。鈴町さんは未だにオドオドしている。まさかこんなところで会うとは思ってなかったから仕方ないな。というより言ってほしいんだが鈴町さん……
「ふーん……マネージャーさん……ねぇ……」
「どうも。神崎颯太です。よろしく。ソフィアちゃん」
オレは手を差し出すと、その手をじっと見つめながら握ってくれた。なんだか不思議と違和感を感じたが、きっと初対面だからだろうな。