【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します! 作:夕姫777
27. 姫はJKちゃんの『プロ意識』に感銘する
「ところで……颯太さんって『姫宮ましろ』先輩に会ったことありますか?」
「え?」
完全に油断していたオレは、間の抜けた声を出してしまった。
「かのんちゃんがユニット組んでるわけですし、担当マネージャーなら絶対会ったことありますよね?裏の姫先輩って、どんな人なんですか?」
「……なんで、急にそんなこと聞くんだ?」
「だって、謎すぎるからですよ。私がデビューしてもう半年以上たちますけど……同じ事務所なのに、姫先輩には一度もお会いしたことないし、ディスコードも最初の挨拶だけで話したことすらありませんから」
探るような、けれど純粋な好奇心に満ちた瞳。彼女の言いたいことは痛いほど分かる。
葉桐ソフィア――佐伯玲奈ちゃんは、3期生の中では一番チャンネル登録者数が多く、ファンからの熱狂的な人気も高い。それは彼女が天性の才能を持っているだけでなく、裏での凄まじい努力家であるからだ。配信は少なめだが、その代わりSNSの投稿頻度は高く、ファンが求めるものを常に考え、親しみやすいキャラクター性を維持している。
Fmすたーらいぶのライバー同士は、お互いのことを結構認知していて、同期や先輩との絡みは積極的に行っている。裏で一緒にゲームをして遊んだり、オフコラボの企画を立てたりと、和気あいあいと仲良くしているライバーが多いのも知っている。
……でも、オレは「男」だから。他の女性ライバーと裏で気軽に通話したり、オフで絡む機会なんて『物理的』に作れるわけがないのだ。
「いや、ほら……姫宮さんは、すごく忙しいんじゃないかな?トップライバーだし」
「いやいや。姫先輩が多忙なのは分かりますけど、配信の枠数やSNSの更新頻度なら、他の中堅ライバーさんの方がよっぽどこまめにしてます。それに、大型のコラボ配信の話にも、事務所のスタジオを使った企画物の収録にも全然出て来ませんし、そもそも事務所にすらほとんど顔を出してませんよね?……私、ずっと気になってたんです。あの姫先輩が、どうしてここまで同業者の間で話題に上がらないのかって」
まずいぞ……。鋭すぎる。
なんかオレ自身を疑っている……というよりは、「姫宮ましろには何か裏の事情があるのでは」と、ジト目で勘繰られている。この話題は、ボロが出る前に早く変えないと……!
「まあ色々事情はあるんじゃない?ほら姫宮さんはFmすたーらいぶのエースみたいな存在だから、それに今は『双葉かのん』とユニット組んだしさ」
……自分で自分のことをエースと呼ぶのは死ぬほど恥ずかしくて笑えてくるが、そこまで嘘でもないし、あながち間違いではないはずだ。
すると玲奈ちゃんは真剣な表情でオレを見つめてきた。そして衝撃の一言を言い放つ。
「颯太さん。私、姫先輩とコラボしたいんです。なんとか取り付けて貰えないですか?」
「ごほっげふっ!ちょっ待って!?」
その言葉を聞いた瞬間、オレは驚きのあまり飲もうとしていたコーヒーを吹き出しそうになった。
「……何でそうなったの?」
「もっともっと『チャンネル登録者を増やしたい』んです。それに先輩方と色々絡みたいし、だからコラボしたいんです!」
「コラボ?」
「はい。私は高校生ですから、学校から帰って夕方から配信準備をして夜に活動することが多いんです。でもFmすたーらいぶの先輩方は、もっと深夜帯に活動している方がメイン。正直、平日だと時間帯が合わなくて、なかなか裏でも会えません」
そうか……。確かに、学生である彼女の生活リズムからすれば、深夜帯が主戦場である他のライバーたちとは時間が絶望的に合わないのだろう。
「私は……もっともっと有名になる……自分の力だけで生きていくために……そのためにもFmすたーらいぶで1番になりたい。だから、今一番話題性があって人気の姫先輩と一緒に配信が出来れば、きっと私のファンの方たちも喜んでくれるし、知名度も爆発的に上がると思います」
そこまで一気に語った玲奈ちゃんの瞳には、静かだが確かな炎が宿っていた。
「かのんちゃんがユニットを組んだことは同期として嬉しいですけど……悔しい気持ちもありますから」
そう言った玲奈ちゃんはとても力強く、そして本気なんだと痛いほど伝わってきた。ただの「可愛い妹キャラ」の裏にある、強烈なハングリー精神と上昇志向。しかし、いきなり玲奈ちゃんとのマンツーでのコラボは厳しいような気もする。
「それなら……『ましのん』の枠でコラボしてみようか?」
「え?颯太さんが決められるんですか?」
「あっいや……実はまだ内緒なんだけど、『ましのん』の枠では色々な企画を予定していて、定期的にFmすたーらいぶ内のライバーさんを呼んで配信することになってるんだよ。それで良かったらどうだろうと思って」
これは本当のことだ。この前の打ち合わせで決まったことで、『姫宮ましろ』と『双葉かのん』にとっても他のライバーさんとのコラボは効果があるからな。
まぁ、極度のコミュ障である鈴町さんは、その方針を聞いたとき「ゲスト……初対面の先輩……」と呟きながら、顔面を真っ青にして気絶しかけていたけれど……
「本当ですか!?それなら……私を呼んでください。お願いします!」
「分かった。提案はしてみるよ。」
「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
それからしばらく、今後の配信のトレンドや、学校生活との両立の苦労などについて玲奈ちゃんと語り合い、カフェの前で別れた。
まさか、玲奈ちゃんがあんなに熱い想いを隠し持っていたなんてな……。ただの要領の良い女子高生だと思っていたけれど、とんでもない。凄まじくプロ意識が高く、強烈なハングリー精神を持ったクリエイターだ。
「そりゃ、ダントツで人気もでるよな……。オレも鈴町さんも、ウカウカしてられないぞ」
夕闇が迫る街を歩きながら、オレはそんなことを呟いた。
後輩の圧倒的な熱量に触れ、オレの胸の奥にも、さらなる闘志のようなものが静かに燃え上がり始めていた。