【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します! 作:夕姫777
26. 姫はJKちゃんと『デート』する
そして無事に『ましのん』ユニット発表配信は終了する。終わった瞬間、鈴町さんはガクッと机に突っ伏してしまった。
「お疲れ様。鈴町さん」
オレがそう言うと、鈴町さんはゆっくりと身体を起こしてこちらを見た。その表情はどこか吹っ切れたような清々しい笑顔をしていた。
こうして、『ましのん』にとって大きな一歩となる記念すべき初配信は、大成功のうちに幕を閉じたのだった。
ちなみに後日、SNSではこの配信のことで話題になっていたらしくトレンド入りした。
さらに、他のFmすたーらいぶの所属ライバーたちも、自身の雑談配信などで『ましのん』の話題を取り上げてくれていた。中には面白がって切り抜き動画を拡散してくれる先輩もいて、身内からの反響も嬉しい限りだ。
今まで以上に応援してくれているファンたちが増えた気がする。これも全て鈴町さんのおかげだろう。本当に感謝してもしきれない。だから、今度はオレが彼女に恩返しをする番である。それが何なのかはまだ分からない。でもいつかきっと……。
事務所での配信が終わって数日が経った。オレは『双葉かのん』のマネージャーとして案件の仕事を確認し、スケジュールを調整したりと仕事に追われる日々を送っていた。
パソコンの電源を落とし、凝り固まった首を回す。明日の『姫宮ましろ』の朝活配信のネタを頭の片隅で考えながら、事務所のエントランスを抜けようとした時だった。
「颯太さん」
オレが振り向くと、そこにはFmすたーらいぶ3期生の『葉桐ソフィア』ちゃんがいた。
葉桐ソフィア。鈴町さんこと『双葉かのん』の同期でFmすたーらいぶの3期生。透き通るほどの白の長い髪の幼女ハーフエルフ。コンセプトは『Fmすたーらいぶに迷い込んだみんなの妹はぐれハーフエルフ』その可愛さと萌え萌えのロリ声と毒舌を使いこなす雑談やゲーム配信が人気で3期生では一番チャンネル登録者も多いライバーさんだ。
「えっと確かソフィアちゃんだっけ?お疲れ様。どうしたの?」
「いや私のマネージャーがちょっと急用があって今日の打ち合わせが急遽なくなっちゃったんですよ。それで、帰ろうとしてエントランスに向かったら、ちょうど颯太さんの後ろ姿が見えたので」
「なるほど。そういうことか」
「あの良かったらお茶に付き合ってもらえませんか?わざわざ事務所に来たのにこのまま帰るのもなんか勿体無いなって思って。」
小首を傾げ、上目遣いでオレを見つめてくる。
「ああ。別に構わないよ。丁度オレも今日はもう終わりだし」
「やった。じゃあデートですね。行きましょう」
ソフィアちゃんはそう言ってオレの袖を掴んで歩き始めた。ちょうどオレも1人で帰るつもりだったし、後輩の誘いを無下に断る理由もなく承諾したのだが……数歩歩いてから、冷静な思考が戻ってきた。
……良く考えたら、ほぼ初対面の現役お嬢様JKと、スーツ姿の成人男性が夕暮れの街でお茶とか、絵面がヤバすぎないか……!? 事案だと思われないか、これ。警察に職務質問とかされないよな!?
内心で冷や汗をかきながらも、袖を引かれるまま大通りを歩く。
「颯太さんっていつも忙しいんですか?」
「うーん、どうだろうね。人によっては大変かもしれないけど、オレはマネージャーになってまだ日が浅いし、右も左もわからないから勉強することばかりだよ」
本当は毎日が忙しいけどな。『姫宮ましろ』の配信は朝だけにしているからそこまでは忙しくないが、今度は『ましのん』の配信もあるし、『双葉かのん』のスケジュールの管理もあるからな。
「あ。そうだ、私の本名は佐伯玲奈っていうんです。せっかくなので名前で呼んでください。あと敬語もなしでお願いします」
「玲奈ちゃんか。でもなんでオレに本名を教えてくれるんだ?」
「だって、会社のマネージャーさんでしょ? それに、同期のかのんちゃんの専属マネージャーさんでもあるし。今後、私の個人的な相談にも乗ってくれたらいいなっていう、先行投資の期待を込めてますから」
クスッとイタズラっぽく笑う彼女。若いのに、驚くほど抜け目がなく、立ち回りが上手い子だ。
オレたちはそのまま大通りから一本路地に入ったところにある、少し薄暗いアンティーク調の落ち着いたカフェに入った。適当なテーブル席に向かい合わせで座り、コーヒーを注文する。
一応、玲奈ちゃんもオレからしたら同じFmすたーらいぶの所属Vtuberで、可愛い後輩には違いないんだよな……。
「やっぱりこういう落ち着いた雰囲気の店は落ち着きますね」
「え?ああそうだね」
「颯太さん。もしかして変に緊張してますか?」
「そりゃJKと2人きりだからな……周りから変に思われてないかな……」
「あはは。気にし過ぎですよ。仲の良い兄妹にしか見えませんよ」
「そっか……なら良いんだけどさ」
自分の自意識過剰さを笑われ、オレは少しだけ肩の力を抜いてコーヒーの香りを吸い込んだ。
だが、安堵したのも束の間。
玲奈ちゃんは自分のカップをソーサーにコトリと置き、ジッとオレの目を見つめながら、少し間を置いて核心を突くような質問を投げかけてきた。