【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!   作:夕姫777

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30. 後輩ちゃんは『頑張れる』らしいです

30. 後輩ちゃんは『頑張れる』らしいです

 

 

 

 そして、金曜日。

 

 今日は少し時期がズレてしまったが、3期生のハーフアニバーサリー特別企画の番組収録があるため、オレは鈴町さんと共にFmすたーらいぶの事務所へと向かっていた。

 

 隣を歩く鈴町さんはといえば、まるで死刑台に向かう囚人かのように、ガチガチに震えながら重い足取りを引きずっていた。

 

「あ、あの……今日って……誰が来るんでしたっけ……」

 

「今日の企画は『迷える子羊に慈悲を。シスターいのりのお悩み相談室~祝3期生特別Ver~』収録にはFmすたーらいぶ2期生の『輝聖いのり』さんと3期生の『葉桐ソフィア』ちゃん、あと同じく3期生の『朽木ココア』さんが参加する予定だな」

 

『迷える子羊に慈悲を。シスターいのりのお悩み相談室』はFmすたーらいぶ内でも人気企画で突然ライバーを呼んで、近況報告や配信でのやらかし(懺悔)などを聞いて、シスターが優しく(時に厳しく)導いてあげるというバラエティ番組である。今回は事前にライバーが決まっているパターンである。

 

 輝聖いのり。Fmすたーらいぶ2期生で外見は金髪で修道服を着ている女性。見た目は清楚系で、口調も丁寧で物腰も柔らかく、声も綺麗で透き通っている。ただ、センシティブな発言や風紀の乱れには非常に厳しく、少しでもラインを越えると笑顔のまま口が酸っぱくなるほど説教をしてくる、『Fmすたーらいぶの良心』。コンセプトは「Fmすたーらいぶ内の悩みを全て救う聖母様」。得意な配信は清らかな綺麗な声から生み出される歌枠である。

 

 朽木ココア。Fmすたーらいぶの3期生で鈴町さんの同期。外見は元気なオレンジ髪のおさげで、王道の魔女っ子の格好をしている。趣味は可愛いものを集めることで、特に猫が大好き。明るい性格で天然。時々抜けているところがありリスナーからも弄られキャラとして愛されている。コンセプトは「最強の魔法使いになるために人間界に来た魔女っ子」。得意な配信はゲーム配信でホラーゲーム全般とか謎解きなど。

 

「な、なんで……そんなに大勢……胃痛が……あぅ……帰りたい……」

 

「大勢ってほどでもないし、明日の『ましのん』の初コラボ配信だって、オレと鈴町さんにゲスト2人で、合計4人だぞ?」

 

「い、いや……ましろん先輩がいるなら……まだ……うわぁ……帰りたい……」

 

 くるりと踵を返そうとする鈴町さん。オレは慌ててその細い手首を掴み、半ば強引に引き留めた。

 

「大丈夫だって。ほら、もう事務所の入り口に着いたからな。行くぞ、時間なくなるから」

 

 オレは逃げ出そうと怯える鈴町さんの手を引いたまま、ずんずんと事務所の中へと入っていく。

 

 とりあえず収録スタジオに向かわないといけない。スタッフさんに案内されてオレと鈴町さんは収録スタジオの控え室に入る。そこにはすでに他のライバーが集まっていた。

 

「あ。こんにちは颯太さん。かのんちゃん」

 

「れ……ソフィアちゃんこんにちは」

 

「こ……こんにちは……」

 

「ん?かのんちゃん……颯太さんと随分仲良いんだね。手、しっかり繋いで」

 

 玲奈ちゃんのジト目を伴った指摘に、オレはハッとして自分の右下を見た。

 

 しまった……!逃げないようにと入り口で手を引いてから、ここまでずっと手を繋いだまま歩いてきてしまった……!

 

 慌ててパッと手を離すと、鈴町さんは耳の先まで茹でダコのように真っ赤にして、オレを恨めしそうに見つめていた。そりゃあ、同期や先輩の前で男のマネージャーと手を繋いで登場なんて、恥ずかしいに決まっている。完全にオレの失態だ。

 

「初めまして。輝聖いのりです。本日はよろしくお願いしますね」

 

「は、はい……こここちらこそ。あの……その……お会いできて光栄でしゅ……」

 

 最後の最後で噛むなよ……しかも顔まで赤くなってるし。すると今度は隣にいる女の子が話しかけてきた。

 

「やーん。久しぶりかのんちゃん!相変わらずコミュ障全開だね!あ、私は朽木ココアだよ。覚えてる?」

 

「は、はい……お、覚えてますよ……」

 

「もぉ~敬語なんていいよ。私たち同期なんだし」

 

 そう言ってココアさんは鈴町さんに抱き着いてきた。それを見ていた、いのりさんが……コホンッ と咳払いをする。それを聞いたココアさんは慌てて離れると、いのりさんがココアさんを睨みつける。裏でも厳しいのか……いのりさんは。

 

 やがて機材のセッティングが終わり、収録スタジオの準備が整った。オレは鈴町さんの背中を軽く叩いて送り出す。

 

「じゃあ、頑張ってな、かのんちゃん。オレは向こうのブースで事務仕事でもしてるから、終わる頃にまた迎えに来るよ」

 

「あの……まし……マネージャーさん……その……収録見てて貰えませんか?」

 

「え?」

 

「……一緒なら……頑張れるんです。……だ……ダメ、ですか……?」

 

 鈴町さんはモジモジしながら小さな声でそう言ってきた。その姿はまるで飼い主に置いていかれそうになっている小動物みたいで、とても可愛らしく思えた。

 

 まぁ、それで鈴町さんが安心して本来のパフォーマンスを出せるなら、オレとしても喜んで収録を見学する。というより、他のFmすたーらいぶの後輩ライバーたちの『プロの現場』を間近で見学できる機会なんてそうそうない。むしろ好都合だ。

 

「分かった。オレも一緒にいるよ」

 

「は、はい……ありがとう……ございます」

 

 そして収録が始まる。鈴町さんは『双葉かのん』として一生懸命に収録をしていた。時折、オレの方を見ながら。

 

 収録後、鈴町さんは疲れ果てた様子だった。やはり大勢のライバーさんの前で話すのは緊張するのだろう。オレが声をかけようと近づこうとすると、玲奈ちゃんが声をかけてくる。

 

「颯太さん。ちょっといいですか?」

 

「え?」

 

 そしてオレは玲奈ちゃんに連れられて別の部屋に連れて行かれた。

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