【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します! 作:夕姫777
31. 姫は『専属』のようです
そしてオレは玲奈ちゃんに連れられて別の部屋に連れて行かれた。
パタン、と静かにドアが閉められる。防音の効いた室内には、オレと玲奈ちゃんの2人だけ。なんだか妙にソワソワする空間だ。
「どうしたの玲奈ちゃん?」
「颯太さん。単刀直入に聞きますけど……もしかして、かのんちゃんと付き合ってるんですか?」
「ぶふっ!?」
突然の質問にオレは思わず吹き出してしまう。
「い、いや……そんなことないよ。ただのマネージャーだし」
「本当ですかぁ?かのんちゃんは収録の間ずっと颯太さんを見ていましたし、それに手だって繋いでいたじゃないですか」
玲奈ちゃんはニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべ、オレの顔を下から覗き込んでくる。
「あ、あれは、かのんちゃんが極度のコミュ障で『帰りたい』って泣きそうになり始めたから、逃げないように仕方なく……」
「……本当にそれだけですか?もしかしたら違うんじゃありませんか?私には分かりますよ。女の勘です。きっとかのんちゃんは颯太さんのことが好きなんですよ」
自信満々に断言する玲奈ちゃん。
鈴町さんが好きなのは、画面の向こうで輝く『姫宮ましろ』であって、中身のオレじゃない。
そう……あの熱を帯びた憧れの眼差しも、嬉しそうに綻ぶ笑顔も、配信の時の楽しそうな姿も。どれも『姫宮ましろ』に向けられたものであり、ただの男であるオレに向けられたものではないのだ。
「安心してくれ。オレとかのんちゃんはそんな関係じゃないから」
これは本当のことだ。だからはっきり否定しておく。すると玲奈ちゃんは、少しだけつまらなそうに肩をすくめた後、クスッと笑みをこぼした。
「あはは。冗談ですよ冗談」
「は?」
「颯太さんがどんな反応するかなって、少しからかっただけです。ごめんなさい」
「……大人をからかうのは良くないぞ」
まったく……この子は。まぁJKに言われるオレもオレだけど。
「ごめんなさい。本題は『姫宮ましろ』の件なんですけど」
「え?」
なぜ『姫宮ましろ』の名前が?まさかオレが『姫宮ましろ』だとバレたのか……いやそれはあり得ない。じゃあ一体……冷静を装うが内心では動揺していた。
「実は……お礼を言いたくて颯太さんに」
「お……お礼?」
「はい。颯太さんに相談したあと、明日の企画のゲストに呼んで貰えましたし、なのでお礼を言わせて下さい。ありがとうございます」
玲奈ちゃんは頭を下げてお礼を言ってくる。なんだそういうことか。よかった……一瞬焦ったぞ。
「いや……お礼なんていらないよ。オレはただ提案しただけだから」
「それでも……です。こんなに早く姫先輩と一緒の企画に参加できるなんて思ってなかったですし、すごく嬉しいんです!」
「そうか。喜んで貰えて良かったよ」
そんなことを話していると鈴町さんがやって来る。
「あの……ま……マネージャーさん終わりました……その終わるの……待ってます」
「お疲れ様。かのんちゃん」
「かのんちゃん。颯太さん借りちゃってごめんなさい。もう用事は済んだから」
その後、オレは玲奈ちゃんと別れ、鈴町さんと一緒に帰ることにする。
すっかり日が暮れた歩道を並んで歩く。しかし、今日の鈴町さんはいつも以上にオレとの距離感が遠く、歩幅も合わない。チラチラとこちらを見るものの、すぐにプイッと目を逸らしてしまう。
……また不機嫌なのかもしれない。もしかして、オレが玲奈ちゃんと2人きりで話していたからか? やはり年上の男が女子高生とコソコソ話しているのは、傍から見て嫌悪感があったのだろうか。
オレは思い切って聞いてみることにした。
「あの鈴町さん?怒ってる?」
すると……鈴町さんは立ち止まり、こちらを向いたかと思うと、そのまま何も言わずに俯いてしまう。やはり年上の男が女子高生と話しているのは嫌だったのだろう。ここは素直に謝るしかない。オレは鈴町さんに向き合い、そして謝罪をする。
「ごめん。さっき玲奈ちゃんと話をしてたんだけど、それが気に障ったなら悪かった。変な意味はなくて、明日の配信のことでお礼を言われてただけなんだ」
「違います……ただ……不安になったんです……玲奈ちゃん、すごく可愛くて、コミュ力もあって、キラキラしてるから……。もしかして……他のライバーさんのマネージャー……になるんじゃないかって……」
「そんなわけないだろ。オレは鈴町さん……『双葉かのん』専属だよ」
「でも……私みたいな、すぐテンパるコミュ障陰キャ女よりも……その……愛想が良くて、可愛いライバーさんの担当になった方が……颯太さんも、いいって思ったり……しないですか?」
そんな風に思われてたのか。オレは鈴町さんの言葉を聞いて、思わず笑ってしまう。なんで笑うんですか……と言わんばかりに鈴町さんは拗ねた顔で見つめてくる。だって、そんなの当たり前だ。オレがマネージャーとして鈴町さんを選んだ理由。それは、他の誰でもない彼女自身にしかないものだからだ。
「しないよ。オレは不器用でも必死にVtuber『双葉かのん』を頑張る姿を見て担当したいと思ったんだよ。それに……オレに勇気をくれた『姫宮ましろ』のファンの鈴町さんを支えたいしな。それにコミュ障でもいいじゃないか。足りない部分は、オレがカバーするし。それに……鈴町さんも可愛いよ?」
最後の一言は、自分でも驚くほど自然に口から出ていた。
それを聞いた鈴町さんは、目を見開いて硬直した後、みるみるうちに首の先まで真っ赤に染め上げ、湯気が出そうなほど恥ずかしそうにオレを見上げてきた。
……というか、さりげなく可愛いと言ってしまったオレ自身も、遅れてとてつもない気恥ずかしさに襲われていた。
「やっ……約束……ですよ?」
「あ、ああ、もちろん。任せてくれ」
「あの……ましろん先輩……あそこ……コーヒー……飲みたいです」
「コーヒーショップ?ああ。それじゃ買って、飲みながら帰るか」
オレと鈴町さんはコーヒーショップでコーヒーを購入し、明日の配信について話ながら帰ることにした。横を歩く鈴町さんはまだ少し頬を赤くしながらも、どこか足取り軽く嬉しそうにしていた……と思う。
ちなみに鈴町さんは一番大きいサイズの「ベンティ」を注文していたけど……。こういう意外なギャップも、彼女の魅力の一つなのかもしれない。こうしてオレと鈴町さんの距離は少しずつ縮まったような気がした。