【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します! 作:夕姫777
37. 後輩ちゃんは『同じ』がいいようです
無事に鈴町さんと仲直り(?)したオレは、『双葉かのん』のオリジナル曲作成についてどうするかを考えていた。
Fmすたーらいぶでは、デビューして半年くらい経つと、ライバーとしての活動の幅を広げる色々な企画が解禁される。この前のコラボ解禁や、今回のオリジナル曲の制作もその一つだ。最初の半年間は、とにかくVtuberとしての配信のペース配分や機材の扱いに慣れてもらうための、事務所の育成方針らしい。
一応、事前に桃姉さんに相談してみたところ、最近は実績のあるボカロPに楽曲提供を依頼するのが業界の主流らしい。
桃姉さんからいくつか候補のボカロPをピックアップしてもらったオレたちは、現在リビングのソファに並んで座り、ノートパソコンのスピーカーから流れるサンプル曲を一緒に聴き漁っていた。
「どう鈴町さん?」
「いっぱいあって……迷います……」
「うーん、確かにな。クオリティが高すぎて逆に迷うよな。でも、あんまりのんびり選んでる時間もないからさ。『双葉かのん』の妖精っぽくて元気なイメージに合った曲調で、なおかつ鈴町さんの声質でも歌いやすいキーの曲を作ってくれそうな人に絞った方がいいよ」
オレはパソコンの画面を見ながら、鈴町さんにアドバイスをする。ちなみに、今流れている曲は、アイドル系のポップソングっぽいもので、『双葉かのん』が歌って踊っても違和感が無い曲だ。
「あの……ましろん先輩は……普段の配信で、歌枠とか……やらないですよね?」
ふと、鈴町さんが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「え?あー……オレは男だからな。ボイチェン通して女性の曲を歌うのは息継ぎとかキーの調整が難しくて歌いにくいし、そもそも最近の流行りの曲をあまり知らないからさ。それに、歌うこと自体そこまで得意じゃないし」
「そう……なんですね……」
「ちなみに鈴町さんは好きな曲とか、良く聴く曲とかあるの?」
「……『ホワイトプリンセス』……です」
「……うん。『姫宮ましろ』の曲だな」
「はい。『ホワイトプリンセス』はバンドみたいに疾走感あるリズムとメロディーで、ましろん先輩のお清楚イメージとは違った曲で、でも歌詞はとてもお姫様みたいに可愛くて、その最強のギャップがすごくエモくて尊くて……!」
「分かった分かった!恥ずかしいからやめてくれ」
推しの話題になった途端、普段のコミュ障が嘘のように超早口で熱弁を振るい始めた鈴町さんを、オレは顔を真っ赤にして慌てて制止した。
まさかとは思ったが……やはりそうか。本当に『姫宮ましろ』のことが骨の髄まで大好きなんだな、この子は。
一応、オレもオリジナル曲はあるし歌わせてもらっている。オリ曲が少ないのは、歌声を『姫宮ましろ』のトーンに違和感なく加工するミックス作業が、エンジニア泣かせなほど大変だったからだ。
でも、最近はAI搭載の高性能なマイクやプラグインのおかげで、かなり生の歌声に近いニュアンスを出せるようになったらしいけどな……
「あの……ましろん先輩のオリ曲は……確か、ボカロPの『AME』さんに……作ってもらってましたよね?」
「お、良く知ってるね。オレの曲はFmすたーらいぶ1期生デビュープロジェクトの一環だったから、オレ自身が作曲者を選んだ訳じゃないんだけどね。『ホワイトプリンセス』はAMEさんに作ってもらったよ」
ボカロPの『AME』。
ハイトーンが特徴の曲が多く、可愛らしさの中に少し毒が溢れた歌詞と、ドラマチックに転調するサビのメロディーが中高生を中心に人気を誇るクリエイターだ。
オレとしては、『ホワイトプリンセス』のデモ音源を初めて聴いた時、いかにも女の子全開でキャピキャピした可愛らしいだけの曲じゃなくて、心の底から安堵した記憶がある。中身は一応男だし、あまりにも恥ずかしい曲調だったらレコーディングで精神が崩壊していたかもしれないからな。
「『AME』さんは……男性ですか?女性ですか?」
「さぁ?オレは直接やり取りしたことないから」
「あの……ましろん先輩。もし……もしもですよ。私が『AME』さんに依頼したら……ましろん先輩に……迷惑かかりませんか?」
「え?別に大丈夫だろ。それにこれは会社の仕事だから。鈴町さんがお願いしたいなら頼んでみるけど」
「本当……ですか?じゃあ……ぜひ……お願いします。初めての曲は……ましろん先輩と同じ人に……お願いしたいから……」
ボカロPの『AME』さん、か。
そういえば、今まで直接会ったことも話したことも無いんだよな。オレの大事な曲を作ってくれた恩人でもあるし、一体どんな人なんだろうか。ちょっと興味が湧いてきたかも。
それから鈴町さんは、一応リストアップされた残りの数曲のサンプルも全部真面目に聴いた上で、やはり最終的に、ボカロPの『AME』さんにお願いすることに決めたのだった。