【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します! 作:夕姫777
39. 姫は『ましのん』のために
スパイシーな香りが食欲をそそる本格インドカレーを味わいながら、オレたちは『双葉かのん』の初オリジナル楽曲についての具体的な打ち合わせを進めていくことにした。
ちなみに、鈴町さんの目の前には、彼女の顔より大きいんじゃないかという特大サイズのナンと、なみなみと注がれた大盛りのカレーが置かれている。……本当に、よく食べる子だ。その小柄な身体のどこに消えていくのだろうか。
「それで、かのんさんのオリジナル曲ですが……どういう曲のイメージがいいですかね? 何か具体的な希望とか、取り入れたい要素などはありますか?」
「えっと……私……本当にましろん先輩のことを尊敬していて……できれば……『ホワイトプリンセス』と同じ感じで……お願いしたいなって……思ってます」
そう言えば鈴町さんの歌って聞いたことないけど、疾走感ある曲なんて歌えるのか?いつもオドオドして、声も小さくてすぐに噛んでしまう鈴町さんが?う~ん……ちょっと想像できない。
「かのんさん。『ホワイトプリンセス』の歌詞って分かりますか?」
「もちろん……です。一言一句……分かります……!」
「ホワイトプリンセスは名前の通り、『姫宮ましろ』という名前から、童話の『白雪姫』をコンセプトにした歌詞になっています。いつか白馬に乗った王子様にお迎えに来てもらいたい……そんな、お姫様の切なくて強い祈りのような気持ちがこもった曲です」
オレは横で静かに頷いた。確かに、曲調は激しいけれど、歌詞の端々にはヒロインとしての切実な想いが散りばめられていたな。
「双葉かのんのコンセプトは、がんばり屋の『妖精さん』なんですよね?それなら……その『白馬に乗った王子様』を、大好きなお姫様の元へと導いてあげる。そんな、献身的で力強い妖精の曲……というのはどうでしょう?」
「あ。……すごく……いいです。ましろん先輩のために……頑張る妖精の曲……最高です……尊いです……」
「世界観の繋がりを持たせるために、少し『ホワイトプリンセス』のメロディーラインをアレンジして、かのんさんの曲のサビ前や間奏に入れ込んでみましょうか。もしその方向性で良ければ、早速デモの制作に取り掛かりたいと思います」
「どう?かのんちゃん?」
「ぜひ……お願いします」
その後、具体的な打ち合わせを終わらせた。帰り道。すっかり満腹になった上、最高の楽曲の打ち合わせができた鈴町さんは、終始上機嫌だった。夜風に揺れる髪を押さえながら、ふんふんと小さな声で鼻唄まで歌いながら歩いている。
オレは半歩後ろから、その楽しそうな横顔を微笑ましく見つめていた。
視線に気づいたのか、鈴町さんがこちらを振り返り、一瞬ハッとして顔を赤くする。
「今の『ホワイトプリンセス』だろ?」
「はっ……はっ……恥ずかしい……」
そのあまりにも無防備で年相応な反応を見て、オレの口から無意識のうちに言葉がこぼれ落ちていた。
「可愛いな……」
「へっ?かっ……可愛い?……え……!?」
ピタッと足を止めた鈴町さんは、まるで壊れたおもちゃのようにオレを振り返り、目を白黒させてあたふたしている。
やばい。心の声が完全に漏れていた。
顔を真っ赤にしてフリーズする彼女の姿を見て、オレ自身も一瞬にして全身の血が沸騰したように身体が熱くなるのを感じた。
「あっ!いや……!その、今の変な意味じゃなくて!ただ思ったことが口に出ちゃっただけで……変なこと言ってごめん!」
「いっ……いえ……別に……っ。その……嫌じゃ、ないので……」
俯きながら、消え入りそうな声で紡がれたその言葉。
なんだこの、致死量の砂糖をぶち込まれたような甘酸っぱい雰囲気は。これじゃまるで……初々しい付き合いたてのカップルじゃないか。オレも鈴町さんも、とっくに成人した立派な大人だぞ。
……付き合ってもいないのに、この空気は心臓に悪すぎる。
とにかく何か話題を逸らさないとオレの精神がもたない。オレは慌てて、不自然なほど大きな声を発した。
「きっ、気に入った曲ができそうで、本当に良かったな!」
「あ……はいっ。でも、AMEさんには……世界観を繋げてほしいとか……無理な注文してしまったかも……です……」
「そんなことないんじゃない?AMEさんにとっても『ホワイトプリンセス』は自分を救ってくれた大事な曲って言ってただろ。だからこそ、そのアンサーソングみたいな鈴町さんの曲も、絶対に気合いを入れて最高の形で作ってくれると思うよ?」
「……ましろん先輩は……AMEさんのあの昔話……知ってたん……ですか?」
鈴町さんが、熱の残る瞳でオレを見上げてくる。
「いや?あんなドラマチックな理由があるなんて、今日初めて知って驚いたよ」
「そう……なんですね」
「オレは男だし、いかにもアイドルって感じの可愛すぎる歌詞や楽曲は歌いづらいから、ちょうどいい感じにカッコいい『ホワイトプリンセス』で助かったーって思ってた。……ただ、本当にそれだけだよ」
鈴町さんはそれを聞きクスリと笑った……ように見えた。そして小さく呟く。
「……もっと……聴きたいです。ましろん先輩の……歌」
「……オレの歌?」
「はい。……男の人が無理して歌ってる……なんて、リスナーの誰も思ってないです。ましろん先輩の歌には……ちゃんと人を惹きつける力が……ありますから……!」
そんな風に真っ直ぐ褒められると、悪い気はしない。いや、むしろすごく嬉しい。
「……なら『ましのん』配信で歌枠でもやるか?」
「え?……いっいいんですか?」
「ああ。オレも今日、AMEさんの話を聞いて、『ホワイトプリンセス』を歌わせてもらえていることを、改めて誇りに思ったからさ。それに、せっかくユニットを組んだんだ、色々なことを『ましのん』の配信で挑戦していきたいしな」
オレが少し照れくさそうに笑うと、鈴町さんはパァッと顔を輝かせた。
「まぁ、今は何よりも『双葉かのん』のオリ曲の完成が先だけどな。オレもマネージャーとして全力でサポートするから」
「ありがとうございます……っ!絶対、歌枠やりましょう……すごく楽しみにしてます……!」
満面の笑みを見せる鈴町さん。
こうして、オレたちの間にまた1つ、『ましのん』としての新しい目標ができたのだった。夜空には、まるで2人の前途を祝福するかのように、綺麗な星が瞬いていた。
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