【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!   作:夕姫777

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41. 姫は『ヘルプ』するようです

41. 姫は『ヘルプ』するようです

 

 

 

 夜の帳がすっかり下りた、午後10時。

 

 オレは自室のパソコンに向かい、明日の『姫宮ましろ』の朝活配信で使うサムネイル画像の作成や、トークテーマの整理といった裏方作業を黙々と進めていた。

 

 ちなみに鈴町さんはというと、この時間は自分の配信の準備をしたり、慌ててお風呂に入ったりと、足音をバタバタと響かせて意外に騒がしい。

 

「今日の鈴町さんは何をするんだ?」

 

 オレはTwitterを確認すると一番上に『双葉かのん、無人島から脱出します!絶対クリアするまで寝ません!』という強気なタイトルと共に、待機所のURLがツイートされていた。

 

「そう言えばこの前、何のゲームを買うか真剣に相談されたっけな……。無人島の脱出ゲームか。それにしても、鈴町さんも煽り文句をつけるくらいには、だいぶ配信の空気に慣れてきたようだな」

 

 少しだけ親心のようなものを感じながら目を細めていると、突然桃姉さんから連絡が来る。

 

「もしもし?」

 

 《ごめん颯太。今どこにいる?》

 

「どこって部屋で明日の配信準備してたけど、どうしたんだよ、そんなに慌てて?」

 

 《良かった、PCの前にいるのね!本当に悪いんだけど、今すぐヘルプしてほしいのよ。3期生の朽木ココアちゃんの配信が、機材トラブルで思い切り事故ってるの!》

 

 えっ?マジで?

 

 オレはスマホを耳に当てたまま、急いでブラウザのタブを開き、朽木ココアのチャンネルへと飛んだ。

 

 読み込みが終わった画面を見ると、ゲームのタイトル画面や可愛いアバターが映っているはずの配信画面は、一面の漆黒。完全に真っ暗で、ただココアちゃん本人の「えっ? あれっ?」という焦った声と、マウスをカチカチと連打する音だけが虚しく流れている状態だった。

 

「おお……結構な放送事故だな」

 

 《まだ開始5分だけどこのままじゃコメント欄が荒れるわ。3期生だから、まだこういうトラブルに慣れてないし、少しパニックになってるし、これで自信なくしたり病んじゃったら大変だわ。このまま放置するわけにもいかないでしょ?お願いできる?やり方は任せる。今こっちも動いてるから》

 

「……分かった。なんとかしてみる」

 

 ……今までは他のライバーのことは別にどうでもいいと思っていた。だけど、今は違う。鈴町さんをはじめ、Fmすたーらいぶのライバーたちは、一緒に上を目指すオレの大事な仲間だ。後輩がピンチの時に助けるのは、先輩として、そして裏方で動けるマネージャーとして当然のことだ。

 

 オレはPCの前に座り、ヘッドセットを装着してマイクの設定をして朽木ココアちゃんにディスコードで通話をつなぐことにする。

 

 普通、配信中のライバーにアポ無しで通話をかけるのはご法度だ。しかしそんなことも言ってられない。すると、誰からの着信か確認すらしていないのか、コール音が1回鳴っただけで「ガチャッ」と通話が繋がった。相当焦っているな……

 

 コメント

『画面映ってないぞー』

『ポンココが出たw』

『真っ暗で草』

『難解な謎解き配信まだ~?』

『音声は聞こえてるよ!』

 

「ごめん……どうしよ……ここを……何で画面が……何もできないよ~」

 

 《こほん。……こんばんは。本日限定『まっしろココア』の夜ラジオをお聴きのリスナーさんいかがお過ごしですか?》

 

「……えっ?えっ……だ、誰ですか……?」

 

 《誰って、私はあなたの先輩ですよ。さて、リスナーの皆さんはもうお分かりでしょう》

 

「あ……あ……あああぁああっ!!まさか……ましろ先輩!?」

 

 コメント

『え?』

『本物?』

『姫が来たぞ』

『うおおおおおっ!』

『救世主降臨!』

 

 《はい。そうです。みんなの姫こと、姫宮ましろです。ココアちゃんには何とは言いませんがガチャガチャやりながら話してもらいましょうか》

 

「えっ……あの……え?」

 

 《ほら、早くしてください。真っ暗な画面の前でリスナーさんたちが待ってますよ》

 

「あっはい!が、がんばります!」

 

 《その前にココアちゃん。ちょっと確認なんだけど……この一面真っ暗な画面が、今日やるって言ってた『難解な謎解き』なのかな?この画面の中に答えがある。パーフェクトダーク的な?高度な演出だったりする?》

 

「ちっ違います!すいません今直しますから~!」

 

 コメント

『草』

『パーフェクトダークwww』

『姫がいじめてる』

『姫様のS気質』

 

 《はい、冗談ですよ。ちなみに、ましろは今、自分のスマホでココアちゃんの配信コメントをしっかり観てますから、リスナーさんたちは安心してくださいね。……まぁ、このメイン画面には綺麗なまでに何も映ってないですけど》

 

「うわ~ん。ましろ先輩がいじめる!」

 

 よしよし。ココアちゃんのパニックは、「大先輩への焦り」へと上手くすり替わったようだ。コメント欄も「放送事故」への不満から、「突発コラボのてぇてぇ」へと完全に空気がひっくり返っている。

 

 とりあえず、何とか場繋ぎは出来そうだ。あとは、ココアちゃんが復旧するまでの時間稼ぎだ。

 

 《ココアちゃんさ、せっかく繋がったんだし、ましろに何か聞きたいことある?なんでも答えてあげるよ?》

 

「いっ色々ありすぎるんですけど、とりあえずこういう配信事故った時どうやって乗り切ったらいいんですか!?」

 

 《え?それは……リスナーさんのコメント欄に聞きたいこととか聞くしかないかな。それしか出来ないもんね。でもねココアちゃん。この配信中に画面が直って謎解き配信したら、サムネやタイトルは嘘じゃなくなるから。命懸けで直そうね?》

 

「はひ……」

 

 コメント

『怖い……』

『ガチトーンやめてくれ』

『ココアちゃんがんば』

『姫のドSが炸裂』

『圧がすごい』

 

 こうして、何とか最悪の放送事故を『ラジオ企画』へと昇華させることには成功した。あとは画面が映るように何とか直してくれよココアちゃん。

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