【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!   作:夕姫777

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45. 姫は『恩返し』がしたいようです

45. 姫は『恩返し』がしたいようです

 

 

 

 そして、ついに事務所の夏の大祭典『Fmすたーフェスティバル』の前日の夜になった。

 

 ちなみに明日、明後日の土日は、ライブの配信があるためFmすたーらいぶの所属ライバー全員が「自分の配信はお休み」となっている。でも、いつものイベントの流れなら、誰かが自分の枠を取って「リスナーと一緒にライブを見る」同時視聴配信をやる人が出てくるはずだが、今年はどうなるかな?

 

 オレはリビングのソファに深く腰掛け、スマホでSNSのトレンドやファンの反応をのんびりと確認していた。すると突然、スマホのディスコードアプリから『ピコンッ』とメッセージの着信音が鳴った。

 

 こんな時間に誰だろうと思い、画面を開いて確認してみる。

 

「えっと……『明日のFmすたーフェスティバルの同時視聴をしようと思うんだけど……せっかくだし!1期生で配信したいんだけどどうかな(。・_・。)!?』か」

 

 そのメッセージの送り主は、オレと同じFmすたーらいぶ1期生の『青嶋ポアロ』さんだった。

 

 1期生全員での同時視聴……。リリィさんやひなたさんはどうするんだろうか?オレは今まで、こういう突発的な集まり……いや、コラボも基本は参加してこなかったのだが……。

 

 「……とりあえず、ここで通話がかかってきたらマズいな」

 

 リビングには桃姉さんもいるし、隣の部屋には鈴町さんもいる。オレはスマホを握りしめたまま足早に自分の部屋に戻り、パソコンの電源を入れた。

 

 モニターが明るくなり、改めてディスコードの画面を確認するが、リリィさんとひなたさんからの返事はまだない。

 

「……これ、たぶんオレの出方待ちなのかもな」

 

 オレが参加しないと言えば、彼女たちも「じゃあ今回はやめておこうか」と空気を読んでくれるのだろう。きっと、今までもずっとそうだったのかもしれない

 

「……とりあえず、通話してみるか」

 

 オレはマイクを自分に引き寄せ、そのまま青嶋ポアロさんのアカウントに直接通話をかけた。

 

 プルルル、と一度鳴ったか鳴らないかのうちに、通話は弾かれたように即座につながった。

 

「あ。もしもしポアロさん?」

 

 《ひっ、姫ガチ!?えっ、ウソ、本物!?デビューして3年目だけど、初めてじゃない!?姫からポアロに直接通話してくるの!マジで焦ったんだけど、心臓止まるかと思ったw》

 

「あはは、ごめんねポアロさん。明日の同時視聴の件なんだけど……」

 

 《あっ。ご、ごめんね姫!無理しないでいいからね!ポアロさ、いつもこういうの突発で突然誘うじゃん?だから全然、気にしないで断ってくれていいから!》

 

 オレが用件を口にする前に、ポアロさんは慌てたようにフォローを入れてきた。

 

 その必死な言葉を聞いて、オレの胸の奥がチクリと痛み、ひどく申し訳ない気持ちになった。

 

 きっと、今までもこういう機会は何度もあったはずだ。でも、オレが頑なに参加しないから、結局企画自体が流れてしまったのだろう。事実、Fmすたーらいぶの1期生が全員集まって配信をしたことは、デビューから1度もない。

 

 それはきっと、『姫宮ましろ』が揃わないなら、1期生コラボはやらない。ポアロさんも、リリィさんも、ひなたさんも、みんながそう思ってくれていて……オレを仲間外れにしないように気遣ってくれる、優しすぎる人たちだからだ。

 

「……ポアロさんの枠でいいのかな?」

 

 《……えっ?姫、それって……来てくれるの!?》

 

「うん。もちろん、参加するよ。……今まで、ずっと断ってばっかりでごめんね」

 

 《うそっ、全然気にしないで大丈夫だって!ガチで!?ヤバい、マジで嬉しいんだけど、あたしっ!よーし、明日のサムネ、ひなちゃんに頼んで最強のやつ作ってもらおうかな!?》

 

 興奮しすぎたのか、ポアロさんの普段の一人称「ポアロ」が、すっかり素の「あたし」になってしまっている。

 

 普段は探偵キャラで元気な彼女だが、裏だと普通の女の子みたいに「あたし」になるんだな。でも、ヘッドセット越しに伝わってくるその声が本当に嬉しそうで、オレまで自然と笑顔になっていた。

 

「ふふっ。まずは、ひなたさんとリリィさんが大丈夫かどうか確認するのが先じゃないかな?そのあと、枠取りと告知だと思うよ、ポアロさん」

 

 《そっか!そうだよね、順番間違えた!マジで嬉しすぎてテンパってて、楽しみすぎる、あたし!》

 

「じゃあ、また明日。よろしくね」

 

 《了解っ!また明日会おーう!バイバ~イ!》

 

 ガチャリと通話が切れた後、オレは背もたれに深く寄りかかった。

 

 今からでは遅すぎるのはわかっている。でも、これからは少しでも同期のみんなに『恩返し』がしたい。そう、強く思った。

 

 そして翌日。

 

 リリィさんとひなたさんも当然のように快諾してくれたため、ついにFmすたーらいぶの『初めての1期生』が実現することになった。

 

 配信のサムネは、神川ひなたさんが徹夜で仕上げてくれた素晴らしいイラストで、告知ツイートが投稿されるや否や、Twitterや各SNSで爆発的に拡散され大バズりした。やはり、待ちに待った初めての1期生コラボということもあって、涙を流して喜んでいる古参ファンが多いようだ。

 

 ポアロさんの同時視聴枠は19:00からのスタートなので、ライブ本編が始まる19:30までの最初の30分は、4人で雑談することになる。まぁ、あの優しい同期たちとなら問題なく楽しくやれるだろう。

 

 現在、時刻は18:40分。ディスコードの待機ルームを開くと、そこにはすでに全員のアイコンが揃っていた。

 

 とりあえず、チャットで挨拶をしておくか。

 

 ましろ:「こんばんは。早いねみんな」

 ひなた:「あ、ましろちゃん来た」

 リリィ:「こんばんは。いよいよ初コラボね」

 ポアロ:「おおおおお!本当に全員揃ったんだけど(((・・;)夢じゃないよね!?」

 ましろ:「え?ポアロさん、ましろが来ないと思ってたの?」

 ポアロ:「だって今まで姫ってそういうの来なかったじゃん(((・・;)だから、直前で「やっぱりやめときます」って言われるんじゃないかって、ほんの少しだけ……」

 ましろ:『酷いなぁ。信用ないねましろ』

 ひなた:『ふふっ、ポアロちゃんずっとソワソワしてたもんね』

 

 確かに、そう思われても仕方ないよな。実際、デビューしたばかりの頃のオレは全く乗り気じゃなくて、ただ与えられた台本をこなすだけで、他のライバーと関わることなんて避けてばかりいた。

 

 ただ、今は違う。

 

 優しく待っていてくれた同期がいて、一緒にステージを目指す可愛い後輩がいる。そして何より、こんなオレの配信を心待ちにして、応援してくれるリスナーやファンがたくさんいる。

 

 色々な経験を経て、色々な感情を知った今のオレは――Vtuber『姫宮ましろ』として活動することが、心から好きで、楽しくて仕方がないんだ。

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