セラリス・オブ・カラーリー ―赤箱世界冒険譚― 作:ぶーく・ぶくぶく
ヴァレリアは、石床に横たわっていた若いエルフのそばへ膝をつくと、その肩の下へそっと腕を差し入れ、頭が床へぶつからないよう注意しながら、ゆっくりと上体を抱き起こした。
牢の中には、長い間閉ざされていた空間に特有の湿った空気が淀んでいた。冷たい石壁には黒ずんだ染みが浮かび、床には粗末な寝藁さえなく、囚人がどのような扱いを受けていたのかを想像するには、それだけで十分だった。幸い、男の衣服には大量の血が染み込んだ跡も、激しい暴行を受けたことを示すような損傷も見当たらなかったが、その顔色は悪く、頬はやつれ、目の下には幾日も満足に眠れなかった者だけが見せる深い影が落ちていた。
まだ若いエルフだった。
カラーリーの者らしい整った顔立ちをしており、本来ならば、もう少し生気に満ちた青年だったのだろう。しかし今は、顔全体から血の気が失われ、唇も乾ききっている。身体のどこにも目立った外傷がないことが、かえって長い拘禁によって心身を消耗させられていることを物語っているようだった。
ヴァレリアは、まず呼吸と脈を確かめた。
脈は弱く、身体も冷えているが、今すぐ命が危険にさらされているような徴候は認められなかった。彼女は少しだけ安堵すると、男の肩を支えたまま、その顔へ身を寄せた。
「聞こえますか? 私の声がわかりますか?」
穏やかな声で呼びかけると、男の瞼がかすかに動いた。
最初は、その動きが意識の回復によるものなのか、それとも単なる反射なのか、判断がつかなかった。しかしヴァレリアがもう一度呼びかけると、男は苦しげに眉を寄せ、やがて重そうな瞼をゆっくりと持ち上げた。
焦点の定まらない瞳が、まずヴァレリアを見た。
続いて、その背後に立つミハイル、鍵束を抱えたダリヤ、そして牢の入口からこちらを覗き込んでいるセラリスへと、視線が移っていく。
男は、しばらく何が起きているのかわからないようだった。
無理もないことだった。ラヒブの配下に捕らえられ、冷たい石室へ閉じ込められた者が、突然、見知らぬ冒険者たちに囲まれていることに気づいたのである。救援が来たのか、それとも新たな尋問が始まるのか、すぐに判断できなくても不思議ではなかった。
「……誰だ」
男が、ひどく掠れた声で尋ねた。
「あなたを助けに来た者です。どうか安心してください」
ヴァレリアは、慎重に答えた。
すると、男の表情が変わった。
それまで朦朧としていた瞳に、突然、強い意志の光が宿ったのである。
「……ラハシアは?」
第一声が、それだった。
自分がどこにいるのかも、なぜ見知らぬ者たちが現れたのかも尋ねず、彼はただ、ラハシアの安否だけを確かめようとした。
セラリスは、その名を聞いた瞬間、少しだけ表情を和らげた。
「ラハシアなら無事だよ。コタ・フタンの村にいる」
男は、食い入るように彼女を見つめた。
「……本当に?」
「うん。私たち、あの娘に頼まれて来たんだよ。昨日も会って話をしたから、そこは安心していいよ」
セラリスの言葉を聞くと、男はしばらく動かなかった。
それから、ゆっくりと目を閉じた。
まるで、身体の奥で固く結ばれていた何かが、ようやく解けたようだった。
それまで気力だけで支えていたらしい身体から、急に力が抜けていく。ヴァレリアが慌てて肩を支え直したが、男は再び倒れ込むこともなく、ただ長く息を吐き出した。
「……よかった」
それだけを呟いた。
その声には、言葉の短さとは到底釣り合わないほどの、深い安堵が込められていた。
彼がどれほどラハシアを案じていたのかは、その様子を見れば誰にでもわかった。
自分が牢へ閉じ込められ、いつ解放されるとも知れない日々を過ごしている間、彼はおそらく何度も考えていたのだろう。ラヒブの手が村へ伸び、ラハシアが再び狙われているのではないか。自分が戻らないことで、彼女は無理をして神殿へ来てしまうのではないか。そして、その結果として、自分と同じように捕らえられてしまうのではないか。
そうした不安が、どれほど彼を苦しめていたことか。
彼は自分の身の危険よりも、村に残した婚約者のことを気にかけていたのである。
ダリヤは、その様子を見つめながら、ふと何かを思い出した。
「あっ……!」
彼女は慌てて腰の荷物を探り、丁寧に丸めて収めてあった羊皮紙を取り出した。
ラハシアから預かっていた、行方不明者を捜すための似顔絵だった。
ダリヤはその一枚を広げ、描かれた若いエルフの顔と、目の前でヴァレリアに支えられている男の顔とを見比べた。
頬は痩せ、目元には疲労の影が落ちている。
しかし、眉の形も、鼻筋も、顔全体の輪郭も、確かによく似ていた。
そして何より、彼が目を覚まして最初に尋ねた名前が、ラハシアだった。
「……先生」
「なに?」
「この人、ハサリアンさんです」
男が顔を上げた。
「……私を知っているのか?」
セラリスは、すぐに彼のそばへしゃがみ込み、目の高さを合わせた。
「ラハシアから聞いたんだよ。あなたが、婚約者のハサリアンだね?」
「……そうだ」
男は頷いた。
声はまだ弱々しかったが、意識は徐々にはっきりしてきているようだった。
「彼女が……手紙を出したのか?」
「うん。ミスタメアまでね。使者が届けてくれたから、それを読んで私たちが来たんだ」
「……ミスタメア?」
ハサリアンは、驚いたように目を見開いた。
彼にしてみれば、信じがたい話だったのだろう。
コタ・フタンからミスタメアまでは、決して近い距離ではない。まして、村は既にラヒブの脅威にさらされているのである。そのような状況で使者を送り、遠い土地から救援を呼び寄せたというのだから、ラハシアがどれほど必死だったのか、想像するだけでも胸が痛むことだった。
しかも、その救援が今、現実に自分の目の前へ現れている。
彼は何かを言おうとしたが、乾いた喉からは、うまく声が出なかった。
セラリスは、その様子を見て、小さく首を振った。
「詳しい話はあとでいいよ。まず、水を飲もうか」
ヴァレリアが水筒を取り出し、男の手へ渡した。
ハサリアンはそれを受け取ると、待ちきれないように口をつけたが、最初の一口で激しく咳き込んでしまった。
「……ごほっ、げほっ!」
「慌てないでください。少しずつでいいですから」
ヴァレリアは水筒を支え、彼が落ち着くのを待った。
ハサリアンは苦しげに息を整え、それから言われたとおり、少量ずつ水を口へ含んだ。
冷たい水が乾ききった喉を潤すにつれて、彼の表情にも、少しずつ生気が戻ってきた。
ヴァレリアは、もう一度身体の状態を確かめた。
「目立った怪我はありませんね。ただ、かなり衰弱しています。お食事も、十分には取れていなかったのでしょう?」
ハサリアンは、苦笑した。
「……捕らえられてから、まともなものはほとんど食べていない」
「何日くらいになりますか?」
セラリスが尋ねると、彼は少し考え、それから首を振った。
「正確にはわからない。ここへ入れられてから、昼も夜もわからなくなってしまった」
地下に閉じ込められ、外の光も届かず、時を知らせるものもなければ、日付の感覚など簡単に失われてしまう。
しかも、満足な食事も与えられず、いつ命を奪われるかわからない状況に置かれていたのである。そうした日々が長く続けば、心身の消耗は、傷を負った場合とはまた違った形で深く蓄積していくだろう。
セラリスは、それ以上問い詰めることをしなかった。
今はまず、彼を休ませることが先だった。
しかし、そのときだった。
◇
「おおい!」
突然、遠くから大きな声が響いた。
石壁に反響した声は、思いがけないほど遠くまで届いたらしく、牢の中にいた四人とハサリアンは、ほとんど同時に顔を上げた。
「誰かいるのか! おおい、誰か!」
今度は、はっきりと聞こえた。
男の声だった。
しかも、かなり大きい。
東の方角から聞こえてくるようにも思われたが、地下の廊下では音が壁や天井に反響するため、正確な位置まではわかりにくかった。
「助けてくれ! 俺が何をしたっていうんだ!」
ダリヤは、思わず眉を上げた。
「……元気ですね」
「少なくとも、今すぐ死にそうな声じゃないね」
セラリスも、少しだけ苦笑した。
しかし、笑ってばかりいるわけにはいかなかった。
あれほど大きな声を出していれば、神殿の警備兵たちにも聞こえている可能性がある。自分たちがここへ入り込んだことを、まだ誰にも知られていないとは考えにくいが、それでも、できるだけ騒ぎを大きくしたくはなかった。
セラリスは立ち上がり、ヴァレリアへ目を向けた。
「ハサリアンをお願い。私たちは、あの声の主を確かめてくるよ」
「はい。こちらはお任せください」
ヴァレリアは頷き、ハサリアンの身体を支え直した。
セラリスはミハイルとダリヤを連れ、声のする方へ向かった。
廊下には、まだ幾つもの牢が並んでいる。
彼らは途中の覗き窓を一つずつ確かめながら進んだが、声は次第にはっきりと聞こえるようになってきた。
「おい、誰かいるんだろう! 返事くらいしてくれ!」
「……いますよ」
ダリヤが、とうとう小さな声で答えた。
「いるなら助けてくれ!」
「だから、今そっちへ行ってるんです!」
ダリヤは思わず言い返しかけ、慌てて声を落とした。
隣でミハイルが苦笑している。
「……今のところ、相当元気そうだな」
「元気すぎますよ。こっちは見つからないように進んでるのに」
ダリヤは、少し不満そうだった。
しかし、その声には、先ほどまで牢の中に倒れていたエルフを見つけたときのような恐怖はなかった。
少なくとも、今聞こえている声の主は、はっきりと助けを求めることができる程度には元気なのだろう。
それだけでも、少し気が楽になるのだった。
やがて、廊下の端に近い牢の格子窓から、一人の男の顔が覗いた。
「おい! こっちだ!」
ダリヤは、そこで足を止めた。
中にいたのは、エルフではなかった。
人間だったのである。
しかも、その姿はカラメイコスでよく見かける人間たちとは、明らかに違っていた。
背の高い若者で、肌は陽光に焼かれたような褐色を帯び、顔立ちには南方の民らしい彫りの深さがあった。頭には長い布を巧みに巻きつけたターバンがあり、身につけている衣服も、乾いた土地の旅人を思わせる、ゆったりとした仕立てをしている。腰回りには幾何学的な刺繍が施され、その上からチェインメイルを着込んでいた。
その服装は、カラメイコスの農民や街道を行く商人たちのものとは、ずいぶん違っている。
砂漠の国。
イラルアム首長国連邦。
そこから来た者だと言われれば、誰も不思議には思わないだろう。
男は、格子窓の鉄棒を両手で掴み、身を乗り出すようにしてこちらを見た。
「助けに来てくれたのか?」
「……たぶん」
ダリヤが答えた。
「たぶん?」
男は、ひどく不満そうな顔になった。
「何だ、その曖昧な返事は!」
「まず事情を聞かないと、誰でも出していいわけじゃないでしょう?」
「事情だと?」
男は目を丸くした。
そして、まるで今まで溜め込んでいた不満を一息に吐き出すかのように、勢いよく喋り始めた。
「道に迷った! 祠があった! 中へ入った! 気がついたら訳のわからん場所へ出て、エルフたちが来て捕まえた! それだけだ!」
ダリヤは、しばらく彼を見つめていた。
それから、ゆっくりとセラリスを振り返った。
「……すごく簡潔です」
「うん。わかりやすくていいね」
セラリスは、少し笑った。
男は、ますます不満そうになった。
「わかりやすいなら、さっさと出してくれ!」
「その前に、名前を教えてもらえるか?」
ミハイルが尋ねると、男は少しだけ落ち着いた。
「ベイク・テラーだ」
「出身は?」
「イラルアムだ」
やはり、という顔でダリヤが頷いた。
その服装と顔立ちから、南方の国の人間だろうとは思っていたが、どうやら予想は当たっていたらしい。
「それで、禁域へ入ったとか言われたんですか?」
「そうだ!」
ベイクは、憤然と答えた。
「そんなこと、知るものか! 森の中を歩いていたら道がわからなくなって、妙な祠を見つけたんだ。何か目印になるものでもないかと思って入ったら、いつの間にか神殿の中へ出ていた。そこへエルフたちがやって来て、禁域へ侵入したとか何とか言い始めたんだ!」
「……なるほど」
ダリヤは、少し呆れたように頷いた。
「それで、立ち入り禁止だって書いてあるのを見落としたんですか?」
「そんなもの、あったとしても読めん!」
ベイクは、胸を張って言い切った。
あまりにも堂々としていたので、ダリヤは一瞬、何と返事をすればよいのかわからなくなった。
セラリスが、とうとう小さく笑った。
「……それは災難だったね」
「笑い事じゃない!」
「ごめんごめん」
セラリスは、笑いを抑えながら謝った。
しかし、考えてみれば、ベイクの言い分にも一理あった。
異国からやって来た旅人が、見知らぬ森の中で道に迷い、祠を見つけたのである。そこで何かの手掛かりを得ようとしたところ、目に見えない転送装置によって神殿の内部へ送り込まれ、侵入者として捕らえられてしまったのだという。
確かに、何とも気の毒な話だった。
もっとも、見知らぬ祠の奥へ不用意に踏み込んだこと自体については、少々考える必要がありそうだったが。
ダリヤは、腰から鍵束を取り出した。
「……とりあえず、開けてみますね」
「頼む!」
ベイクは、ようやく救いが見えたとばかりに、大きく頷いた。
ダリヤは錠前を確かめ、鍵束の中から合いそうなものを選んだ。
最初の鍵は合わなかったが、二本目を差し込んだところで、内部の仕掛けが小さな音を立てた。
「……あ、これですね」
慎重に回すと、錠が外れた。
ダリヤは、扉を少しずつ開いた。
するとベイクは、待っていたとばかりに勢いよく外へ飛び出した。
「自由だ!」
「静かに!」
セラリス、ミハイル、ダリヤの三人の声が、ほとんど同時に重なった。
ベイクは、驚いたように口を閉じた。
それから、周囲を見回した。
石造りの廊下。
両側へ並ぶ牢の扉。
武器を持った冒険者たち。
そして、今さらながら、自分がまだ神殿の地下にいることを思い出したらしかった。
「……敵地なのか?」
「現在進行形でな」
ミハイルが答えた。
ベイクは、しばらく考えた。
そして、急に声を落とした。
「……なるほど」
その切り替えの早さに、ダリヤは少し感心した。
少なくとも、状況を理解すれば、それに合わせて行動を変えられる男らしい。
もっとも、最初からそうしてくれていれば、あれほど大声で助けを求める必要もなかったのだが。
◇
「……で、いったい何が起きている?」
ベイクは、今度は小さな声で尋ねた。
セラリスたちは、短く事情を説明した。
灰色山の麓にあるコタ・フタンというエルフの村で、神殿に入り込んだラヒブという人物が、修行者であるシスワたちを操っているらしいこと。
そのシスワたちが村を襲い、何人かのエルフを連れ去ったこと。
ラハシアという娘が助けを求め、ミスタメアから自分たちがやって来たこと。
そして、できるだけ操られた者たちを殺さず、囚われている者を救い出そうとしていること。
ベイクは、意外にも真面目な顔で話を聞いていた。
先ほどまでの騒がしさは、少しばかり影を潜めている。
彼は、自分が道に迷って捕らえられたことには憤慨していたが、それ以上に深刻な出来事が、この神殿で起きていることを理解し始めたらしかった。
「……なるほどな」
話を聞き終えると、ベイクは自分のチェインメイルを軽く叩いた。
「だったら、俺も手伝おう」
ダリヤは、少し目を細めた。
「……ずいぶん、あっさりですね」
「何がだ?」
「いや、助けてもらったからって、いきなり一緒に戦うって言われても、普通はもう少し考えるんじゃないかなと思いまして」
「俺を牢へ放り込んだ連中には、文句があるからな」
ベイクは、いかにも当然だという顔をした。
その返事を聞いて、セラリスはすぐに釘を刺した。
「言っておくけど、シスワたちは操られてる可能性があるからね。できるだけ殺さないでほしいんだ」
ベイクは、少し眉を上げた。
「……殺すな?」
「うん。できるだけね」
「それは、面倒だな」
「嫌なら、ここで待っててもいいよ」
セラリスは、あっさりと言った。
ベイクは、しばらく彼女を見つめた。
それから、ゆっくりと廊下の両側へ目を向けた。
頑丈な牢の扉が、ずらりと並んでいる。
自分が閉じ込められていた部屋も、今は開いているとはいえ、まだ目の前にある。
しかも、この神殿のどこかには、自分を捕らえたシスワたちがいるのである。
仮にここへ一人残されたとして、次に彼らが現れたとき、どう説明すればよいのだろう。
牢が開いていたから外へ出たのだと、そう言えば許してもらえるのだろうか。
どう考えても、そんな期待は持てそうになかった。
ベイクは、ほんの数秒で結論を出した。
「……いや。同行する」
「理由は?」
ダリヤが尋ねた。
ベイクは、真顔で答えた。
「この牢に一人で残る方が嫌だからだ」
それは、実に説得力のある理由だった。
ミハイルが、思わず小さく笑った。
「……なるほどな」
「そういうことだ。俺は一人で、またあの連中に捕まるのは御免だ」
ベイクは、少しだけ胸を張った。
セラリスは、その顔をしばらく見つめた。
何とも率直な男である。
自分を捕らえた者たちへ腹を立てていることも、ここへ一人残されるのが嫌だということも、少しも隠そうとしない。
しかし、それは必ずしも悪いことではなかった。
何を考えているのかわからない相手よりは、よほど付き合いやすいかもしれない。
少なくとも、今のところ、彼が自分たちを欺こうとしているようには見えなかった。
「……じゃあ、一緒に来てもいいけど、私たちの方針には従ってね」
「わかった」
「それから、勝手に飛び出さないこと。今みたいに大声を出すのも駄目だよ」
「……わかった」
今度の返事は、少しだけ不満そうだった。
ダリヤが、口元を緩めた。
どうやら、この男には少しばかり注意しておいた方がよさそうだった。
それでも、さっきまで牢へ閉じ込められていたことを思えば、今の彼が自由を喜ぶのも、無理からぬことではあった。
「じゃあ、ハサリアンさんのところへ戻りましょうか」
ダリヤが言った。
ベイクは、少し首を傾げた。
「ハサリアン?」
「もう一人、助けたエルフの人がいるんです」
「そうか」
ベイクは、それ以上問い詰めようとはしなかった。
ただ、セラリスたちのあとへ続きながら、廊下に並ぶ牢の扉を、少し複雑な表情で眺めていた。
彼にとっても、つい先ほどまで自分がその一つへ閉じ込められていたという事実は、まだ容易に忘れられるものではなかったのである。
◇
ハサリアンのところへ戻ると、彼は既にヴァレリアの手を借りながら立ち上がっていた。
顔色はまだよいとは言えず、足元にも多少の頼りなさが残っていたが、水を飲み、少量の食べ物を口にしたことで、最初に見つけたときよりは明らかに生気が戻っていた。
ヴァレリアは、無理をしないよう注意していたらしい。
ハサリアンは牢の入口近くへ腰を下ろして休んでいたが、セラリスたちが戻ってきたことに気づくと、ゆっくり顔を上げた。
「……その人は?」
見慣れぬ人間の男を見て、ハサリアンが尋ねた。
ダリヤは、即座に答えた。
「迷子です」
「誰が迷子だ!」
ベイクが、思わず声を上げた。
「静かに!」
ダリヤが睨むと、彼は慌てて口を閉じた。
それから、今度は声を落として抗議した。
「……俺は迷子じゃない」
「道に迷ったって、自分で言ってたじゃないですか」
「それは、そうだが……」
「じゃあ、迷子でしょう?」
ベイクは、しばらく言い返そうとしていたが、やがて諦めたように息を吐いた。
「……ベイク・テラーだ」
彼は、ハサリアンへ向かって名乗った。
ハサリアンも、少しだけ口元を緩めた。
「ハサリアンだ」
二人は、それだけを言って頷き合った。
生まれた土地も、育ってきた文化も、おそらくまったく違う二人だった。
ハサリアンは灰色山の麓に暮らすカラーリー・エルフであり、ベイクは遠い砂漠の国イラルアムからやって来た人間である。
普通に暮らしていれば、二人が出会うことなど、ほとんどなかったかもしれない。
しかし今では、同じ神殿の地下へ閉じ込められ、同じ冒険者たちによって助け出されたという、何とも奇妙な共通点を持つことになっていた。
そして、互いにそれを詳しく説明する必要もなさそうだった。
牢の中へ閉じ込められていた者同士、あの冷たい石壁の向こうへ出られたことが、どれほどありがたいことなのかは、言葉にしなくても理解できたからである。
セラリスは、二人の様子を少し眺めてから、ハサリアンへ向き直った。
「……ハサリアン。あなたは、ここで休んでてもいいよ」
ハサリアンは、即座に首を振った。
「いや」
「まだ疲れてるでしょう? 無理して動いたら、また倒れるかもしれないよ」
「それでも、行く」
声は弱かった。
しかし、その奥にある意思まで弱っているわけではなかった。
セラリスは、少し眉を寄せた。
「……理由を聞いてもいい?」
ハサリアンは、彼女をまっすぐに見た。
「ラハシアの父君が、まだ神殿の中にいる」
その言葉に、セラリスたちは一瞬だけ黙った。
つい先ほど瞑想室へ現れた亡霊の姿が、四人の胸によぎったのである。
ラヒブの手によって死んだというエルフの男。
ラハシアの悲しみを深く案じ、自分たちへ助言を残して消えていった亡霊。
あの男と、行方不明になっているラハシアの父との間に、何らかの関わりがあるのかもしれない。
しかし、今の彼らには、まだそれを確かめる材料がなかった。
亡霊は自分の名を明かさなかったし、ハサリアンも、あの瞑想室へ現れた男の姿を見たわけではないのである。
セラリスは、そのことを心に留めながら、あえて何も言わなかった。
今ここで憶測を口にしても、ハサリアンを不安にさせるだけかもしれなかったからである。
ハサリアンは、さらに言葉を続けた。
「それに、シルヴァとメリサも、まだ捕らえられているはずだ。私だけ助けられて帰るわけにはいかない」
彼の声には、強い責任感があった。
ラハシアの父を捜すために神殿へ入り、自分も捕らえられてしまった。
その結果として、村へ戻れなくなったばかりか、婚約者へさらに大きな心配をかけることになってしまったのである。
そんな自分が、今ようやく助け出されたからといって、ほかの者たちを置き去りにして帰るわけにはいかない。
そう考えていることが、彼の表情からはっきりと伝わってきた。
セラリスには、その気持ちがよくわかった。
しかし、だからといって、無条件に同行させてよいわけではなかった。
「……武器は?」
ミハイルが尋ねた。
「取り上げられた」
「鎧は?」
「ない」
ハサリアンは、自分の衣服へ目を落とした。
今身につけているのは、簡素な衣服だけだった。
武器もなければ、盾もない。
防具らしいものも、何一つ残されていなかった。
しかも、長い拘禁によって、身体はひどく消耗しているのである。
セラリスは、少し困ったような顔になった。
「……その状態で戦うのは駄目だよ」
ハサリアンは、すぐに答えた。
「戦うとは言っていない」
「でも、敵が来たらどうするの?」
「逃げるか、身を隠す」
「……できる?」
「少なくとも、ここへ閉じ込められているよりは、役に立てると思う」
ハサリアンは、少しだけ息を整えた。
「神殿の中の道なら、多少は知っている。私が捕らえられるまでに通った場所についてなら、説明できるはずだ」
その言葉を聞いて、ダリヤが顔を上げた。
「……本当ですか?」
「ああ。すべてではないが、少なくとも、自分がどこから来たのかくらいは覚えている」
ダリヤは、セラリスを見た。
その表情には、はっきりと期待が浮かんでいた。
この神殿の内部については、まだわからないことが多すぎる。
ラハシアから預かった地図は、彼女が入ったことのある範囲しか描かれておらず、その先については、ほとんど手探りで進まなければならなかった。
しかも、先ほどの亡霊からは、南の洞窟や北のドラゴンについて新しい情報を得たものの、それらの場所へどのように行けばよいのかまでは、まだ十分にわかっていないのである。
もしハサリアンが、神殿の内部を少しでも知っているのなら、それは確かに大きな助けになるだろう。
「……それは助かりますね」
ダリヤが言った。
セラリスも、ゆっくりと頷いた。
「うん。道を知ってるなら、一緒に来てもらう意味はあるね」
ハサリアンの表情が、わずかに明るくなった。
しかし、セラリスはすぐに続けた。
「ただし、前には出ないでね。今のあなたは、守られる側なんだから」
ハサリアンは、少し不満そうな顔になった。
「……私は、子供ではない」
「うん。知ってるよ」
セラリスは、あっさりと答えた。
そして、指を折り始めた。
「でも、鎧なし、武器なし、疲労困憊でしょう? その状態で無理して戦って、また倒れちゃったら困るんだよ」
ハサリアンは、言葉に詰まった。
セラリスの言っていることが正しいのは、彼自身も理解していたのである。
しかし、自分より若く見えるエルフの娘から、こうもはっきり守られる側だと言われてしまうと、多少なりとも自尊心が刺激されるのだった。
その様子を見て、ベイクが横から笑った。
「……言われてるぞ」
すると、ダリヤがすぐに振り返った。
「あなたもですよ」
「……何?」
「あなたも武器、ありませんよね?」
ベイクは、一瞬動きを止めた。
「……俺は鎧があるぞ」
「それは見ればわかります。武器は?」
「…………」
ベイクは、何か言い返そうとした。
しかし、言葉が出てこなかった。
彼もまた、牢へ入れられるときに武器を取り上げられていたのである。
チェインメイルこそ身につけているものの、剣も槍もなく、敵と遭遇したときに何を使って戦うつもりなのかと尋ねられれば、返答に困る状態だった。
ダリヤは、少し得意そうに言った。
「……同類ですね」
ハサリアンが、思わず笑った。
それは、本当に小さな笑いだった。
しかし、牢の中で意識を取り戻してから、初めて見せた、心からの笑顔だったのである。
ヴァレリアは、その表情を見て、少しだけ安堵した。
肉体の衰弱だけなら、食事と休養、そして必要に応じた治療によって回復を助けることができる。
しかし、心に深く刻まれた不安や恐怖は、必ずしもそう簡単には消えてくれない。
だからこそ、今のハサリアンが、ほんの少しでも笑えるようになったことは、決して小さな変化ではなかった。
生きて帰れるかもしれない。
ラハシアへもう一度会えるかもしれない。
そして、今度は自分も、誰かを助けるために何かできるかもしれない。
そんな希望が、彼の胸の中に、ようやく芽生え始めていたのである。
◇
セラリスは、改めて二人を見比べた。
ハサリアンは、ラハシアの父を捜すために神殿へ入り、自分も捕らえられてしまったエルフだった。
一方のベイクは、遠いイラルアムからやって来て、道に迷った末に古い祠へ踏み込み、何が何だかわからないうちに神殿へ転送され、侵入者として牢へ放り込まれてしまった人間である。
事情は、まるで違っていた。
生まれ育った土地も、神殿へ来た理由も、そこで何をしようとしていたのかも、まったく違う二人だった。
しかし今は、同じ冒険者たちによって助け出され、同じ神殿の奥へ進もうとしている。
何とも不思議な巡り合わせだった。
「……増えたなあ」
セラリスは、思わず呟いた。
ミスタメアから出発したとき、一行は四人だった。
それが今では、ハサリアンとベイクを加えて六人になっている。
しかも、まだ牢のすべてを調べ終えたわけではない。
シルヴァとメリサも見つかっていないし、ラハシアの父の行方も不明なままだった。
今後、さらに人が増える可能性は十分にあるのである。
ダリヤは、鍵束を腰へ下げ直しながら、少し笑った。
「この調子で牢を全部開けたら、もっと増えるかもしれませんよ」
「……それは困るね」
セラリスは、少し真面目な顔で答えた。
ダリヤは、すぐに眉を上げた。
「……助けに来たんですよね?」
「もちろん、助けるのはいいんだよ」
セラリスは、困ったように笑った。
「でも、引率する人数が増えると、それだけ考えなきゃいけないことも増えるでしょう?」
その言葉に、ミハイルが苦笑した。
確かに、そうだった。
自分たち四人だけなら、戦うときも、逃げるときも、ある程度決まった手順で動くことができる。
しかし、そこへ武器を持たず、十分に休息も取れていないハサリアンが加わり、さらに武器こそ奪われているものの、やたらと元気のよいベイクまで同行するとなれば、今までと同じようにはいかないだろう。
彼らが敵に見つかったとき、まずどこへ逃がすべきか。
狭い通路で戦闘になった場合、どこへ立たせれば安全なのか。
罠を発見したとき、全員へどう知らせるのか。
そうしたことを、一つずつ考えておかなければならなくなるのである。
「……先生みたいですね」
ミハイルが言った。
セラリスは、不思議そうに首を傾げた。
「え? 先生だからね」
「いや、そういう意味じゃなくて」
ミハイルは、少し笑った。
「なんだか、ミスタメアで俺たちを訓練してた頃みたいだと思ったんです。危険な場所へ連れて行く人数が増えると、先生があれこれ気を配らなきゃいけなくなるでしょう?」
「ああ、なるほど」
セラリスは、ようやく納得したように頷いた。
確かに、そういう意味では似ているのかもしれなかった。
ミスタメアで新人たちを指導し始めた頃も、彼女は同じようなことを考えていた。
一人で行動するなら、何もかも自分の判断で済ませられる。
しかし、そこへ経験の浅い者たちを連れて行くとなれば、話は違ってくる。彼らがどのような危険を見落とすのか、何ができて、何ができないのかを理解し、それに合わせて行動しなければならないのである。
しかも今回は、その人数がさらに増えた。
もっとも、だからといって助けた者を牢へ置き去りにするという選択肢は、セラリスにはなかった。
助けると決めた以上、できる限り無事に連れ帰るつもりだった。
そのために、自分たちがどのように動くべきなのかを考える必要があるだけなのである。
「……まあ、六人なら何とかなるかな」
セラリスは、少し考えてから言った。
ダリヤが、すぐに顔を上げた。
「……まだ増えるかもしれませんよ?」
「それは、そのとき考えよう」
「先生、そうやってどんどん増やすんでしょう?」
「助けられるなら、助けたいじゃない」
あまりにも当然のように答えられてしまい、ダリヤは一瞬、何も言えなくなった。
それから、小さく笑った。
「……まあ、そうですよね」
彼女にも、その気持ちはよくわかっていた。
ラハシアから預かった似顔絵は、まだ荷物の中にある。
シルヴァとメリサは、まだ見つかっていない。
そして、ラハシアの父の行方についても、何一つ確かなことはわかっていなかった。
その者たちを助けるために、ここまで来たのである。
ならば、同行者が二人増えたからといって、今さら引き返すわけにはいかないだろう。
◇
セラリスは、もう一度、六人になった一行を見渡した。
ミハイルは、相変わらず頼もしい前衛だった。
ヴァレリアは、負傷者や衰弱した者を見れば、まずその状態を確かめ、できる限りの治療を施そうとする。
ダリヤは、鍵束を手に入れたことを喜びながらも、そこに閉じ込められている者たちを助け出すという目的を忘れていなかった。
そして、ハサリアンとベイクという、まったく違う二人が新たに加わった。
ハサリアンは、まだ衰弱している。
しかし、その瞳には、ラハシアの父や、ほかの囚われた者たちを助けたいという強い思いがあった。
ベイクは、どこか粗野で騒がしいところもあるようだったが、少なくとも、状況を理解し、自分の考えをはっきり口にする人物らしい。
この二人が、どこまで役に立ってくれるのかは、まだわからない。
しかし、今のセラリスには、彼らを連れて進むことが、必ずしも負担になるだけではないように思われ始めていた。
ハサリアンは神殿の内部について、多少の知識を持っているという。
ベイクもまた、遠い土地から旅をしてきた男であり、少なくとも、自分一人で異国を歩く程度には経験を積んでいるのだろう。
もちろん、それだけで信頼してよいわけではない。
しかし、だからといって、最初から何もできない者として扱う必要もなかった。
それぞれに、できることがあるはずだった。
セラリスは、そんなことを考えながら、もう一度廊下の奥へ目を向けた。
そこには、まだ開かれていない牢が残されている。
そして、その向こうには、神殿のさらに深い部分が続いているはずだった。
シルヴァとメリサは、まだ見つかっていない。
ラハシアの父も、帰っていない。
しかも、瞑想室へ現れた亡霊は、ラヒブの背後にはさらに深い邪悪がいると告げていたのである。
その言葉が真実ならば、自分たちが相手にしようとしているものは、当初考えていたより、ずっと厄介なのかもしれなかった。
しかし、今さらそれを恐れていても仕方がない。
少なくとも、ハサリアンは生きていた。
そして、ベイクも助け出すことができた。
この二人を見つけただけでも、ここまで来た意味は十分にあったのだろう。
あとは、まだ見つかっていない者たちを探すだけだった。
セラリスは、静かに息を吐いた。
そして、ハサリアンへ目を向けた。
「……歩けそう?」
「大丈夫だ」
ハサリアンは、すぐに答えた。
しかし、セラリスはその言葉を鵜呑みにせず、ヴァレリアの方を見た。
ヴァレリアは、少し考えてから頷いた。
「無理をさせなければ、しばらくは歩けると思います。ただ、疲労が強いので、途中で休ませる必要はあるでしょう」
「うん。じゃあ、無理しないでね」
セラリスは、ハサリアンへ言った。
「辛くなったら、ちゃんと言うこと。黙って我慢して倒れられる方が困るから」
ハサリアンは、少し不満そうだったが、今度は素直に頷いた。
「……わかった」
ベイクが、横から笑った。
「……言われてるな」
ダリヤが、すぐに振り返った。
「あなたもですよ」
「……俺もか?」
「当たり前でしょう。武器もないんですから、勝手に前へ出ないでくださいね」
ベイクは、少しだけ口を尖らせた。
「……わかったよ」
その返事を聞いて、ミハイルが小さく笑った。
ヴァレリアも、穏やかに微笑んだ。
そしてセラリスは、何とも言えない気持ちで六人になった一行を眺めていた。
ミスタメアから出発したときには、こんなことになるとは思っていなかった。
四人で神殿を探索し、囚われた者たちを助け出して帰る。
そのつもりだった。
しかし、現実には、道に迷って捕らえられた異国の戦士まで助けることになり、今では六人で神殿の奥へ進もうとしているのである。
人生というものは、何とも思いがけない方向へ転がっていくものだった。
それでも、悪いことばかりではない。
少なくとも、今の二人は生きている。
そして、これから先に何が待っていようとも、自分たちとともに進もうとしているのだ。
セラリスは、小さく笑った。
「……じゃあ、行こうか」
ミハイルが頷いた。
ヴァレリアはハサリアンの様子を確かめ、ダリヤは鍵束が音を立てないように持ち直した。
ベイクも、ようやく自分が今置かれている状況を理解したらしく、今度は余計な声を上げずに、周囲の様子を確かめている。
六人の一行は、慎重に廊下へ歩み出した。
冷たい石壁に囲まれた地下の牢獄には、まだ幾つもの扉が残されていた。
その一つ一つを確かめていけば、さらに誰かを見つけることになるかもしれない。
あるいは、もっと恐ろしいものと出会うことになる可能性もあった。
しかし、少なくとも今、四人で始めた冒険は、二人の命を救い出すところまで進んでいた。
そして、その一人は、ラハシアが帰りを待ち続けている婚約者だったのである。
セラリスは、ふと、コタ・フタンの小さな家を思い出した。
薄いベールをまとったラハシアが、卓の上へ地図を広げ、懸命に父と婚約者の行方を語っていた姿。
シルヴァとメリサの似顔絵を差し出し、どうか助けてほしいと頼んだときの、あの切実な眼差し。
そして、操られたシスワたちを、できるだけ殺さずに済ませてほしいと願った声。
あの娘は、今も村で自分たちの帰りを待っているのだろう。
そのことを考えると、セラリスの胸には、静かな決意が湧き上がってきた。
ハサリアンは生きていた。
その事実だけでも、ラハシアへ持ち帰ることのできる希望が、一つ増えたのである。
ならば、あと一人。
できれば、さらにもう一人。
助けられる者がいるのなら、少しでも多く連れて帰りたかった。
そして、自分たち自身も、もちろん無事に帰らなければならない。
セラリスは、そう考えながら、六人になった一行とともに、神殿のさらに奥へ進もうとしていた。
ラヒブが何を企んでいるのかは、まだわからない。
亡霊が語った、より深い邪悪の正体も不明だった。
北にいるという守護者のドラゴンにも、まだ会っていない。
しかし、今のセラリスたちには、何より大切なことが一つだけ、はっきりとわかっていた。
ここには、助けを待っている者たちがいる。
そして、自分たちには、その者たちを助けられる可能性がある。
それだけで、危険な神殿の奥へ進む理由としては、十分だったのである。