千年前の天与呪縛 現代で生存フラグ建築士となる 作:サイセンサイ
「その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません」
人としてはかなり点数の高い答えなのだろう。一度は口にしてみたいセリフ 実際、そういうのに厳しそうな釘崎や真依が好感触な反応をしているのだから
しかし、そんな物は揺るがない狂気を持っているこの男の心には響かなかった。
「退屈だよ 伏黒」
その瞬間、常人なら確実に死んでいるレベルのラリアットが炸裂して伏黒は後ろに吹き飛ばされる
「寝不足か?毛穴開いてんぞ」
その近くで女同士のバトルも勃発する。
爆走、スープレックス、剛腕による殴打の連続、建物の被害なんて一ミリも考えない怪力無双、突然の戦闘に困惑する伏黒だったがヤル気ならこっちもヤッてやるの精神で目を鋭くして東堂を睨みつける。
(止める!)
(頼むぞ棘!)
そして騒ぎを駆けつけた三年の先輩であるパンダと狗巻が自らの能力を使って東堂を止めようとした
その時だった
人影が目に入った。それは2人よりも遥かに早いスピードで伏黒と東堂の間に入った後、右手の人差し指を東堂が振りかぶっている拳に向かって突き出す。
指が折れる
誰もがそう思うだろう。
だが実際 指は折れなかった。それどころか突き出された人差し指と東堂の剛拳が接触した瞬間
東堂の動きがまるで一次停止したように止まったのだ
「闘諍堅固邯鄲之歩(とうじょうけんごかんたんのほ)」
正確には『硬直させられた』
「ストップだよ。葵君」
伏黒はその光景に困惑しながらも恐らく自分を助けてくれたであろう目の前の人物に目を向けた。そしてすぐに気づくのだ。目の前の『少女』は自分の知っている人物なのだと
その少女は真依と同じ制服を着ていた。ただし大きく違うところがある。
それは肩に男性用の制服を羽織っているのだ。
彼女は現在、女子用制服を着ながら東堂サイズの男子用制服を袖も通さず肩に羽織っている。
いわば肩掛け学ラン※本人曰く『自己満足のオシャレ』
腰まで届いている長い黒髪
平均的な身長に平均的なスタイル
顔は整っていながら何処か柔らかい雰囲気をしており
※本人曰く『ガルパンの五十鈴華』顔
「蜘蛛寺先輩」
「なんだお前もいたのか蜘蛛寺」
「おかか」
「おい蜘蛛寺 邪魔するな」
そして彼女を知っているのは伏黒だけではなかった。何度も面識はあるしなんなら彼女はちょっとした有名人、現場でも何度かお世話になっている。
何より彼女は
『蜘蛛寺(くもでら)水子(みずこ)』は
「真依君は下かな?」
禪院姉妹と深い関わりがあるのだ
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「何?ヤル気?」
真希と真依、二人がレスバを少々繰り広げた後
倒されていた釘崎が後ろから真依をホールドして制服を略奪しようとしている。その後、真依が足の長さをディスって挑発してきたので絞め落とそうと腕に力を入れたその時
「君が新しい一年生?」
「「「!」」」
肩掛け学ランをしている制服の少女がその場に現れた。ちなみに男連中は後ろに控えている。真依と同じ制服を着ているので釘崎は警戒をあらわにしてその少女を睨みつけるが、少女はまるで意に返さず、それどころかちょっと嬉しそうだった。
まるでフシャー!!としている猫を見る瞳。全くビビっていない反応に釘崎はイラつきながらも真依の拘束はしっかりと保っていた。
「どうか警戒しないでください。」
「あきらかにいきなり喧嘩売ってきた奴らのお仲間を警戒するなとかどこのお花畑よ」
釘崎がいきなりお得意の言葉の刃をその少女にむける
そしてその反応は
「そうですね。真依君の首は絞めたままで大丈夫ですよ」
ピキッ!
思っていたどれとも違う反応に少しポケンとする釘崎
ちなみに今の音は真依が青筋を建てた音
「後輩が凶暴な大猿に捕まっているので助けてくれませんか蜘蛛寺先輩」
「今は先輩呼びの気分じゃないのです〜」
「ちっ!」
(何だコイツ?)
どうもつかみどころがない、真依とのやりとりを聞いても先輩ということしか分からず、釘崎は蜘蛛寺と呼ばれた先輩の顔を見る。うん自分のほうが可愛い
「そうですね、、、では恵くん、私の紹介をお願いします。一応言っておきますけど的確な解説ができる人は貴方しかいませんよ。」
「はぁ?、、、、、、はぁ釘崎、この人は京都校三年の蜘蛛寺先輩だ」
伏黒は蜘蛛寺の言葉に少し周りを見渡した後、ため息をついて唯一蜘蛛寺の事を知らない釘崎に向かって説明を始めた
「準一級そして他者に扱える『反転術式』の使い手で俺も先輩達も現場で傷を治してもらった経験がある」
「オレはパンダだから経験はないけどな」
「!」
パンダの言葉をガン無視して釘崎は少し驚いた顔で蜘蛛寺の顔を見た。うんやっぱり私のほうが可愛い
『反転術式』は使えるものが少ない上にそれを他者に対して使えるとあっては数は雀の涙以下と聞いている。
「この人の凄いところは古傷すら治してしまう『呪力の操作技術』更に『呪力量』もかなり多い」
「五条先生や憂太くんに比べたらぜんぜんだけどね」
「例えが悪いわそれは」
「後は、、、真希先輩と真依先輩はある種の『主従関係』を蜘蛛寺先輩と結んでいる」
「主従関係?」
釘崎は主従関係と言う言葉に少し首を傾げた。まだ全然付き合いは浅いが、すくなくとも真希先輩が人に謙るような女には見えないからだ。
すると蜘蛛寺が口を開いた
「正確に言えば2人には私の『小姓』の役目を与えています。真希くんは東京校に通うために私のところから離れたけど真依くんは今でも私の小姓として付き添ってもらってるんだよ」
「でもいまだに頭が上がんないんだよなぁ〜真希」
「しゃけ」
「うるせぇぞ」
真希はそういいながらも何処か蜘蛛寺に対してよそよそしく感じる。恐らく確かな主従関係があったのだろう。余りイメージはわかないが
「あの〜そろそろ私を助けてもらってもよろしいですか
ゴ・シュ・ジ・ン・サ・マ」
全く敬意の入っていない主人呼び、いつまで私はこのままなのだと彼女は目で訴えている。
「そうですね、、、、確か釘崎くん、下の名前は野薔薇でしたっけ、いい名前ですね」
「そりゃどうも」
「下の名前で野薔薇くんって呼んでもいいですか?」
「ていうか女に対しても君付けなのね、色々盛りすぎじゃないの個性」
「アニメキャラに憧れてるので自覚した上でやっています」
「あ、そ、別にいいけど」
「おいこら聞いてんの水子!」
不機嫌でついいつもの呼び方で蜘蛛寺を呼ぶ真依を見ながら蜘蛛寺はスマホを取り出して操作しながら喋り始めた
「無理かもしれませんが真依くんと仲良くしてほしいですね、野薔薇くんはきっと真依くんと相性がいいので」
「ゲェー」
「ケッ!」
「たぶん出会い頭に真依くんが失礼な事を言ったんだと思いますけど、優しい子なんですよ、お姉さんの真希くんと一緒で」
「おい水子」
「コレがその証拠です」
「「「「「え?」」」」」
蜘蛛寺は唐突にその場の全員に自分のスマホを見せる
音量を最大にして
『バカバカバカ!いまさら出ていくなんて何よ!ここでずっと適当に雑用やって適当に生きればいいじゃない!せっかくあのゴミ屋敷からでられたのに!せっかく連れ出して貰えたのに!そりゃ私達はどうあがいても禪院の娘達何だから今でも家の連中に男尊女卑の扱いをされるけど!あのときよりも今はずっと毎日安らかに眠れるじゃない!こんな場所人生で二度と巡り会えないわよ!何で頑張るのよ!弱くてもいいじゃない!置いてくなバカぁ!バカぁーーーーー!!!』
「死ねええええええええええええ!!」
「ウォウ!?」
何が起こったのか説明しよう。蜘蛛寺の見せたある種の尊厳破壊動画によって真依は火事場の馬鹿力を羞恥覚醒させ自分を締め上げていた釘崎の腕を強引に振り払い、あろうことか覚醒させた怪力で釘崎をまるごと蜘蛛寺に向かってぶん投げたのだ。
蜘蛛寺は釘崎をドッジボールの如く受け止めた
釘崎は動画の時点で頭をハテナだらけにさせており状況を理解できていなかった
「どうですか野薔薇くん、真依くんの魅力がこれでもかと詰まった動画は?」
「お、おう」
※今だ混乱中
「離せぇ!殺させなさいあの愉快犯をーー!!!」
「落ち着け真依」
銃をリロードした真依が蜘蛛寺にぶっ放そうとするが真希が羽交い締めをしてそれを止めている。男連中は伏黒以外プルプルと笑いをこらえていた
「真希くんが私の家から出ていく時に撮れた素晴らしい動画です。送りましょうか?」
「、、、、、とりあえず頼むわ」
「水子ーーーーー!!!」
場を引っ掻き回して冷静にその場を愉しむ彼女はまさに道化、しかし彼女の人柄は、魅力は、こんなものではない
なぜ禪院姉妹は彼女の小姓となったのか
東堂を止めた術式とはなんなのか
それはこれから語られる
彼女は蜘蛛寺(くもでら)水子(みずこ)
かつて呪術全盛期の時代
千年前に天与呪縛として生まれ
そして死に
前世の記憶を持ったまま生まれ変わった女呪術師
前世の名は『藤原(ふじわら)酒子(さかこ)』
二度目の人生で彼女は何を望んでいるのか
それはこれから語られる