千年前の天与呪縛 現代で生存フラグ建築士となる 作:サイセンサイ
「よみがえり?」
「そうよ、アンタもそうしたら?」
地下にある座敷牢の中、そこに閉じ込められている『異形』の他にもう一人、服など着ていないその女は本来は牢の外から声だけをかける立場の者なのだが、わざわざ牢の中に入ってお互いに向き合い話をしている。
利害はある 反転術式の見本として
だがそれ以外の理由もあるらしい
藤原酒子には考えの外の世界過ぎて理解出来ないが
酒子の『孤独』が心の琴線のようなものに触れたらしい
あの『万』のそれにだ
いつも話すのは万のほう、話というより一方的に万が喋るだけ、些細な苛つきやら宿儺への理解できないふわふわとした長文、聞かされれば具合が悪くなるようなものもあったが酒子に取ってソレは悪くないものだった
「いいです」
だがそれは命の続きを望むほどのものではなかった。自尊も自愛も持たない彼女からすれば『黄泉返り』などただ無関心な提案でしかなかった
「あっそ」
万はただひと言、それだけを口にした
「少しいいかい?」
「あ?」
「!」
座敷牢の外から声がした。聞いたことのない声だ、口元に薄い笑みを浮かべた女がそこにいた。酒子にまともな人生経験などない、だがそれでも何かを感じずにはいられなかった。
明確に自分以上の『異端』とも言える存在に
「語らないかい?天与呪縛さん」
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とある地区のとある場所 2階建てのボロアパート
そこに見本ともいえる底辺の家庭が住んでいた。チンピラの父と水商売の母、そしてなんてことない手違いで産まれた女の子
死なない程度の暴力とそれに対する無関心が習慣となっているその家庭に女の子の人権など無いに等しかった
そんな場所で産まれたその子はきっとこれからの人生で四苦八苦の苦境に押しつぶされるのは必定ともいっていい
ただの女の子であったなら
「よかった、、、ここに産まれたのが私で」
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父親が死んだ。死因はオーバードーズ、違法薬物の大量摂取が引き起こした心臓麻痺。薬に手を出した者が辿る珍しくもない人の死に様。世間からはそう思われるだろう
事件が『表』に出れば
父親は死ぬ数日前、何者かに襲われて右足の骨を折られていた。入院レベルの負傷ではなかったため彼は家にいた。
缶ビールに【睡眠薬が入っているのも知らずに飲んでしまい】そのまま眠りに落ちた
眠っている間に家の中にあった全ての薬物を注射されて父親は死亡した
彼女なら呪力で強化された筋力で殺すことも出来た
その方が簡単だった
それをしなかったのは【実験】のため
人は薬でどう死ぬのかを知るため
【これから】の人生のため
仕事に家を開けていた母親は娘に聞いた『父親はどこか』と
娘は知らないと言った
母親が帰ってくる間に父親は呪力で強化された筋力で【骨も含めて細かく刻まれ排水溝に流されていたから】
父親は行方不明 それが世間の知る情報
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5歳の頃だったかな?
自分が前世の記憶を持っているとはっきり認識したのは
それは驚きましたよ
いくらなんでも想定外過ぎですから
しばらく驚いて あとになって苦笑いがこみ上げてきた
だってそうでしょう 黄泉返りを断っておいてまさかの別ルートで黄泉返るなんて
あの人達が知ったらどんな顔をするんでしょう?
そして私は自己分析を始めた
すぐに気づいた
私は『生きよう』としていることに
黄泉返りをした所で意味はないと思ってた
けど今はそうなれて心底ホッとしてる
それはきっと私の『最後』が影響しているのでしょう
あの炎に魅了されたからこそ
あんな心を揺らす存在を目にしたからこそ
私は最後の最後で生きててよかったと思ったのでしょう
自分で言ってて意味不明だけど
これからどうするべきかと思ってすぐに『呪術師』になろうと思った
今世は天与呪縛でもないのに何故か漲っている呪力、これを使えば前世の反転術式も使用可能
新しいことをしてみたい
新しい自分を試したい
自分は何になれるのかを知りたい
そのためには『集』に属さなければならない
属するために属する存在を探さなければならない
その邪魔だったから父親を殺した
呪力で強化して殴れば簡単だったけど
どうせなら新しいことをやってみようと思った
罪悪感はなかった
新しいことをやっている挑戦しているという高揚感だけが私の胸の中にあった
そして上手く言った
これで堂々と属する者を探しに行ける
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「はぁ〜クソっ」
とある男がパチンコ店からあからさまに不機嫌な顔で出てきた。なんてことない未勝利の結果、珍しくもない量産された敗北者、例えその男の顔が良かろうとそれになりたいと思う者はいないだろう
『異端』を除けば
「お兄さん」
「あ?」
背の高い悪人面、そんな男に声をかける女の声、顔ゆえの逆ナンを最初に疑ったが、それにしたって声が幼すぎる。
声のした方向に首を向けると
そこにはこちらに向けてニコニコと笑顔を向けている幼女がそこにいた
パチンコ店の前で何らかの犯罪を疑われる絵面
異端の悪党 異端の幼女
「貴方は『呪い』の集団に属していますか?」
「!」
藤原酒子の生まれ変わり蜘蛛寺水子
彼女がこの時代で最初に出会った呪いの界隈に干渉している存在
それは実に皮肉だった
呪いの界隈に産まれ呪いからの脱却を果たした存在に最初に出会うなんて
「お兄さんのお名前は?」
「、、、、伏黒だ」
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「お主が甚爾の言っていた反転術式を使える娘か?」
「あ、おじいさんが禪院家の方ですか?」
とある人気のない公園
ベンチに座っていた幼女にとある男が話しかけた
その男は老体でありながら足腰がはっきりとしており見る人が見れば歩き方だけで只者ではないとわかる強者
「禪院直毘人だ」
「始めまして、蜘蛛寺水子です」
・
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・
・
・
「え?あのお兄さん死んじゃったんですか?」
「あぁ少し前にな」
蜘蛛寺水子は彼と出会って少し話をした
内容は自分を組織に入れてくれるよう頼んだことだ
だが彼はその世界ですでにお尋ね者
運が無いなと鼻で笑われたが蜘蛛寺は特に慌てた様子もなく、別の提案をした
私を『売買』出来るコネはありますか?
その言葉を口にした瞬間、蜘蛛寺は甚爾の頬に手を当てた。殺気のようなものがなかったため特に払うことはなかったが
口元の傷が消えたのにはさすがに驚いた
蜘蛛寺が考えたのは甚爾にグレーなスカウトをさせること。反転術式の使い手そのうえで他人にも扱える者はそうはいない、どんな組織だろうと欲しい人材、甚爾にグレーなコネがあればそれで大金を稼げるし蜘蛛寺は所属する組織に今のところ拘りはない、いわばWin-Winな関係と言える
それ相応のリスクはあるだろうが
「なんかそういうちょうどいい人とかいませんか?」
「、、、、、まぁ居るには居るな」
甚爾の頭に浮かんだのは禪院家の当主直毘人、かつて自分の息子を億単位で売ったからそれなりの繋がりはある。得体はしれないがこの娘ならかなりの額で売れるだろう。何か野望を巡らせていても自分は金だけもらってトンズラすればいい、それに禪院家は才能のあるものを常に欲している。売れはするだろう
一瞬、こんな娘をあのゴミ溜めに送ることにして良いのかと考えた。なんてことのない心の奥の奥にある良心の欠片のようなものが刺激されたが、自分はそんな事を思う人間じゃないとすぐに自分を嘲笑した
「貴方に何があったかは私は知りません」
「!」
「でも私はどんな世界でもどんな悪巣でもベストを尽くすと決めています」
「、、、お前なんなんだよ」
「この世で最も恐ろしい物を見て、新しい自分になりたいと思った 子供ですよ」
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そして蜘蛛寺は直毘人に連れられて呪術界隈に加わることとなった。禪院家に迎え入れる事も検討されたが
私の反転術式なら沢山の人が欲しがります
禪院家ではなく呪術界隈の物というのがイメージがいいと思いますよ
禪院家で囲わなかったんだからこの借りはデカいぞと色々な方に言い聞かせることもできますし
そして蜘蛛寺は自分だけの家をもらい、派遣された大人から世の中の事を教えてもらい、双子の小姓も手に入れた
順調とも言うべき滑り出しを蜘蛛寺は進んだ
しばらく経ったある日だった
「え?」
「あ?誰だよ?」
「おっ」
偶然出会ったのだ。五条家の五条悟、そしてその隣に自分とそう年が変わらない犬を連れた男の子と
あの男の息子 伏黒恵と
(わぁーそっくり)
「蜘蛛寺水子、反転術式の使い手で凄い奴だから仲良くしていたほうがいいよー恵」
「、、、、、どうも」
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「わぁーー!美味しい!」
「喜んでもらえて良かったです」
「なんでここにいるんだよ」
義姉である津美妃と共に暮らす家に蜘蛛寺が手土産のシュークリーム等のスイーツを手に訪れて談笑していた。正直胡散臭い呪術界隈の人間が自分の領域に足を踏み入れられることに拒否感を感じる。相手が自分と同じ子供でなかったらもっとそう思っていただろう
「優しいお姉さんですね恵くん」
「、、、、、、」
「呪術の練り方とか教えてあげようかと思って」
「!」
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「なぜ伏黒恵に関わる?甚爾の子だからか?」
禪院家の個室で直毘人と話ていた蜘蛛寺は出された茶菓子を食べながら質問に答える
「優しい子だから、どうせ呪術師をやるならあんな子たちを守ることをしたいですね」
「はっ!アニメキャラのようなセリフだな」
「高町なのはさんみたいになりたいですよ正直、、、無理でしょうけど」
「ん?」
蜘蛛寺にしては少し後ろ気な発言、気になって彼女の顔を見るとその目には自分への嘲笑が見えていた
恐らく分かっているのだろう
自分は魔法少女のようになるには『残酷』すぎることに
自分は『呪術師』に向いていると
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羂索様
あの人は自分の事をそう名乗った
私以上の異端
人生の最後に出会った宿儺様の次くらいに私に何かを感じさせたお人
現代の呪術界隈に入ってすぐにその名前を調べた
だけどそんな名前は存在しなかった
黄泉返りが果たされた事例も
私は考えました
もしかして黄泉返りはまだ起こってないのではないかと
あれほどの存在なら必ず何か大きな事件を起こすと確信していた
だから探した
その時に備えて
羂索様の関係らしき事件を調べた
加茂憲俊の事件 受胎九相図 津美妃くんの呪い
もしかしたらと思って近づいた
もしもあの人が存命なら
きっとこの世界はひっくり返る
それほどのことが起こる
『万』様のようなお人がたくさん黄泉返りを果たされれば
大戦は必定
なら私はどうするべきか
決まっている
私が守りたいと思ったものを守る
2度目の生で出会うことのできたたからもの
傷つけさせない 失わせわしない
例え私より遥か上の存在であろうと
私にしか出来ないやり方で
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「どうやら虎杖悠仁くんは葵くんの親友となったようですね」
「いやなんで」
きっとこれから先に起こるのは羂索様が巻き起こす魑魅魍魎の地獄絵図、それが何かはわからないけど必ずそんな事件が起こる。だから必要なのは強い存在、宿儺様の器が現れるのは流石に予想外すぎだったけど
わたしは高揚していた
「どうか、死なないように」
人としての当たり前を今は願いましょう
皆が乗り換えられることを
可能なら楽しく
「始まりますね、真希くんと真依くんの姉妹対決が」