千年前の天与呪縛 現代で生存フラグ建築士となる 作:サイセンサイ
朝日が昇ってすぐの頃、京都校の中庭に一人の少女が『禊ぎ』をしていた。白の着物に身を包んで近くにある井戸から汲み上げた水での行水、見る人によってはとても神秘的に映っただろうし年頃の男子が見れば下着すらつけていない濡れて透けたその御身に背徳を感じるような光景だった。
蜘蛛寺水子の朝の日課である
「今更だけど毎日毎日飽きないわね、アンタくらいよそんな事するの」
「おはよう真依くん、今日は早いね」
「これも今更だけど普通小姓のほうが早く起きるものよ」
そこにバスタオルとバスローブを持って現れたのが蜘蛛寺の小姓・禪院真依 すでに何年も繰り返した光景である
京都校の寮に戻って改めて服を着ようと裸になる蜘蛛寺だが、そこで少し動きを止めて顎に指をかける。何かを考えるポーズに真依がため息を吐いた
目の前には真依が並べた『多種のサイズ』の下着が並んでおり、蜘蛛寺は一番右端の下着に目をつけた
「よし今日は『Hカップ』にしましょう」
「その日その日で決めるとか、世界で一番の贅沢者よアンタは」
蜘蛛寺が謎の発言をした後、彼女は呪力を練って自らの平均的な胸に力を注ぐ。するとその胸は途端に膨らみ始め、彼女の宣言通り『Hカップ』の大きさとなって専用の下着を装着した
『豊衣飽食融通無碍(ほういほうしょくゆうずうむげ)』
スキャンした情報を自らにインストールした後、反転術式の自由化でよほど無理な質量でない限り情報通りの肉体を正確に変化させる。豊乳どころかウエストを細くすることすら可能。つまりお腹周りを気にすることなく暴食を謳歌する事が出来る。
なお本人だからこそ出来ることであり他者にそこまで自由化を施すことは出来ない、だがしかし、あくまで『そこまで』のレベルであり、他者に対してほんの少しの豊乳とほんの少しウエストを細くさせることは可能性
この説明を初見で聞いた女子は驚愕で顎が外れるほど口を開きよだれで顎を濡らす
何故なら女性にとってウエストの2〜3センチは想像以上に重要だから
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二人で朝食を済ませた後、京都校の教室へ足を運ぶ。そして学びを同じくする仲間たちに朝の挨拶を蜘蛛寺はにこやかにしていく
「おはようございます霞くん♪今日も頑張りましょう」
「あ、はい、おはようございます」
後輩の女子である三輪に挨拶をしたのだが、今日は妙によそよそしい、蜘蛛寺は首を傾げた後、あぁと手をポンと叩いてその理由を察した。
「昨日全裸にして親御さんですら見たことないとこをガバっとしたのを気にしているのですね」
「ちょっ!」
ガガッタタタッ!!!!
※メカ丸がズッコケた音
まさか口に出されるとは思わず三輪は赤面して蜘蛛寺の肩をつかみグワングワンと詰め寄る。となりの真依は可哀想な目で三輪を見つめていた。
「水子ちゃん、デリカシーを持ってよ、何で普段はまともなのに時折めちゃくちゃ失礼な事をするのよ」
同じく京都校の仲間である西宮が蜘蛛寺のKY発言に苦言を申すが
「術式でスキャンするだけでなく実際に肉体に触れてよく観察することで得られるものは違いますからね」
「でもさぁ」
「小さな情報の更新一つ一つが自由化の幅を広げるのです。いずれ骨格にまでその幅を広げて【小さな身体をモデル体型】に変化させることも」
「水子ちゃんは未来のために努力してるの、その努力を否定する行動は止めなさい霞」
西宮は秒で裏を返した
「桃先輩ぃ〜!!」
「お詫びに霞くんもHカップにしましょうか?」
ガシャガシャシャン!!
※メカ丸が動作不良を起こした音
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「赤血操術・赤鱗躍動!」
校庭で2人の生徒が組み手をしていた。片方は京都校のまとめ役である【加茂憲紀】
そして相手は【右腕に呪具】を装着した蜘蛛寺水子
呪術でドーピングした掌底が蜘蛛寺に向かって放たれるが、蜘蛛寺は腰を落とし地面に踏ん張った後、呪具を装着した右腕でそれをガード
その瞬間、早業とも呼べる足払いが加茂に炸裂してバランスを崩す
その隙に蜘蛛寺は顔面を狙って右ストレートを打ち込むが加茂は両腕をクロスして直撃を防いだ
「当たったと思いましたけど流石ですね憲紀くん」
「いや、たまたまガード出来ただけだ。実際、足払いに反応出来なかったからな」
「ふふっ要約『スキャンした技』が身体に馴染んできましたよ」
『念念刻刻水鏡之人(ねんねんこくこくすいきょうのひと)』
武術に優れた人間の肉体をスキャンしてその情報を自分自身に転身、ある種のコピー技
モデルは禪院家『躯倶留隊』であり、彼女はその術式と立場から彼らの肉体情報をスキャンさせてもらっており、身体にその技が合えば実戦でもスムーズに使える
「うひゃー反転術式で人を治せるのにそのうえ本人も強いとかホントにすごいですねー」
「後ろで安全にサポートに徹すればいいのに」
「性に合わないって理由で周りの反対を押しのけるあたり、水子ちゃんもめんどくさい呪術師ってことよ」
『俺も正直、【呪具の作成】を頼まれるとは思わなかった』
蜘蛛寺が右腕に装着しているのはメカ丸が傀儡操術を利用して作られた『ガントレット』
呪力を流し込めば【ドリル】に変形出来る機能を待つ
メカ丸はその天与呪縛から皆の前に姿を表すことが出来ない、だが蜘蛛寺とは直接の面識がある。彼女の術式で肉体の少しずつ変化させる事が出来るからだ。彼女の計算では皆と同じような身体機能と姿になるには『数年』かかるらしい、それでも彼にとっては嬉しいことだった。事実、肌の痛みは減っている
なので蜘蛛寺から【ギガドリルブレイクをしてみたいのでそれっぽいのを作って】と言われた日は困惑しながらも呪具の作成に協力した。
これは余談だが
「霞くんのどんなところにハートを撃ち抜かれたんですか?」
とシラフで聞いて喧嘩になったことがある
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「さてとそろそろ日が暮れますし霞くん【いつもの】をお願いします」
「は、はい」
「「「、、、、、、、」」」
今からするのは正直嫌な事(本人を除いて)
そこは広い室内で床に広範囲のシートが引かれていた
流れる大量の血をすぐに処理できるようにだ
三輪の刀が抜刀
その瞬間鮮血が舞った
そしてゴトリと【蜘蛛寺の左腕】が床に落ちる
蜘蛛寺は反転術式ですぐに止血、それどころか彼女は術式との応用で片腕をまるでトカゲのしっぽのように瞬時に治してしまった。
自分の左腕を治した蜘蛛寺は今度は地面に落ちた左腕に手を当てて そして
『即身成仏分崩離析(そくしんじょうぶつぶんぽうりせき)』
落ちた左腕の断面が伸びて次々と【人】の形が作られていく、最終的にその形は『分身』とも呼べるほどに蜘蛛寺水子と全く同じ姿の『肉の塊』だった
外見では分からないがそれには『脳』が入っていない
「ノルマ完了」
蜘蛛寺水子はその狂気の現象に繭一つ動かさず呑気に言葉を綴った。
何故ならそれは彼女にとって日常だから
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「引き渡しありがとね真依くん」
「、、、、えぇいつものことよ」
蜘蛛寺水子特有の力で作られた『肉の塊』は言ってしまえば【上層部への寄付】
脳以外完璧に作られたその肉体はすぐに袋に入れられ棺桶ほどのサイズの冷凍箱に入れられて運び出される
使い道は至極単純、心臓、肝臓、小腸、眼球等が何処かで取り出され医療機関に『善意の誠意』として渡される
その気になれば臓器売買などやり放題だとどこかの守銭奴な術師が言っていたがそれは犯罪なので出来はしない
ただし上層部の一部が『小遣い稼ぎ』をしている噂が出ている
「今日は皆さん疲れたでしょう、早く寝るのをお勧めしますよ」
「そう言いながら今夜も遅くまで呪力増強の訓練をするんでしょう」
「水子さんも寝ないと身体に悪いですよ」
「蜘蛛寺、お前が三〜四時間の睡眠で十分なショートスリーパーである事は理解している。毎晩欠かさず訓練に勤しむのも素晴らしいことだ、だが無理は禁物だぞ」
皆が蜘蛛寺の事を心配する
真依はいつものことなので口出しはしないが、その瞳はほんの少しの心配を映していた
「心配してくれて万歳したくなるくらい嬉しいですけど、思っているほど私は無理をしていませんよ」
蜘蛛寺はいつもの柔らかな笑顔で言葉を綴った
「この日常が楽しくて仕方ないんです」
何故そこまで楽しそうなのか
何故そこまで勤勉なのか
何故そこまで挑戦するのか
その理由を仲間たちは知らない
『前世』の事を話されていないから
彼女の前世を誰も知らないから
「私は私を試したいんです」