千年前の天与呪縛 現代で生存フラグ建築士となる 作:サイセンサイ
「これは私の術式とは根本的に違いますね」
「やっぱりそう?」
そこはとある閉め切られた薄暗い部屋、蜘蛛寺は引率の歌姫と共に突然呼び出され、部屋に着いた瞬間目にしたのは、まるで呪霊のような形をした『人間の死体』だった
真人の無為転変による被害者の遺体
反転術式で他者を治癒できるうえに他者の肉体を少しだけ自由化できる蜘蛛寺の意見を聞くために楽巌寺学長が取り寄せたらしい、だが蜘蛛寺の術式はあくまでも『肉体への干渉』であり 真人の『魂への干渉』とは似て非なるものだった。
「私の術式で変えられた人を元に戻せることを期待してもらったみたいですけど、ご期待には添えませんね」
「仕方ないわ、相手は特級、その上でかなりの知性もあるみたいだし」
「特級の中の特級ということですか?」
「そうなんでしょうね」
報告によればその実態は実に呪いらしい醜悪に塗れた存在してはいけない極悪、呪術師を育成する立場としては何とか対策をしておきたいと思うのは仕方なかった。もしそんな呪霊が自分の教え子と戦うことになったらと思うとゾッとする。
「おまけに領域展開すらしてみせたと」
「えぇ本当に立ち会った術師はよく無事でいたものよ」
「、、、、、、、、、、、」
「水子?」
蜘蛛寺が突然黙り、歌姫は首を傾げるがすぐにもとに戻す。彼女は時々こういうところがあるのだ。何かを思考してそして思考して出した答えはどこか謎めいた言い回しをしてくる。彼女の個性とも呼べるし悪癖とも呼べる行動
「才能を開花されられる人って一握りじゃないですか」
「え?」
そして突然の語りが始まった
経験上、この時の蜘蛛寺は何らかの核心を突くことが多い
「才能の開花って2パターンあると私は考えています」
「2パターン?」
「才能による才能のゴリ押しで開花するパターン
そして才能と努力が噛み合って開花するパターン」
「ゴリ押しと噛み合い、、、、」
「と言っても自分の才能をふんだんに使って使って使いまくってゲームのレベルアップの要領で強くなれる五条先生とか葵くん見たいな生まれつきの天才は後者に比べて圧倒的に少ないですけど」
「そりゃそうでしょアンナのが沢山いてたまるもんですか」
「だから世の中の強いと言われている人たちは大抵が才能と努力の噛み合った人たち、、、、だけどその後者ですら少ない、それはなぜだと思います?」
「え!?えっと、、、、才能と努力の噛み合いは人それぞれ一人一人違うだろうし、これは誰かに教えを請うても、自分より優れた人の真似をしてもそれが正解かは開花しなきゃわからない、、、参考の効かない個人的な問題だからかしら」
「そうですね。強い人から見れば弱い人なんてみんな同じに見えるでしょうけど、弱くても『個』の認識を持っているのが人間ですから、、、、、そして私はもう一つ理由があると思っています」
「もう一つ?」
「開花しない自分に耐えられないから」
「!」
「自分の才能を自覚している人は自分がキラキラしている姿を明確にイメージ出来る、、、だけど現実はそうはいかない、努力しても結果が出ないなんてよくある事、、、だけど才能を自覚している人はキラキラしていない自分に耐えられない」
「その結果、挫折して開花を諦めるってことね」
才能の無いものは才能に対して無知だ
だからこそ知りたい手に入れたいこの手に欲しいと願ってその感情を糧にすることができる
才能に夢を見ることができる
だが才能のある人間は当然才能に対してある程度の既知を持っている
持っているからこそ才能に夢を見れにくくなる
人より優れて当然の自分が崩れるのに耐えられずに進むことを諦めてしまう
「きっと真人という呪霊は才能と努力が現場で噛み合ってしまって覚醒してしまったんでしょう。だとしたら真人はもう1ランク進化する」
「!」
「才能の開花には2パターンあると言いましたが、一番厄介なのはその『両方』を経験した者だと私は思っています。あの五条先生ですらそうなんですから」
蜘蛛寺は個人的な興味から五条から話を聞いたことがある。五条悟が覚醒する一助となった『あの男』との戦い
すでに五条は才能によるゴリ押しで開花していた。そして追い詰められて死にかけたことで才能と今までの努力が結びつき2回目の開花をすることになり文字通り『最強』となった
「私は呪霊と努力は相性がいいと思っています」
「え?」
蜘蛛寺の発言に歌姫は目が点になる。呪霊と努力の相性がいい?どういうことなの?と顔に出して呆けていると、それに気づいた蜘蛛寺が口を開いた
「結果が出ない自分に耐えられなくて自分を嫌いになりたくなくて努力を諦める、よくあることですよね」
「えぇだけどどういう」
自分の事が嫌いな呪霊ってあったことあります?
「!」
「探せばいるかもしれませんが、基本的に呪霊って『自分を嫌う』っていう発想がないのが殆どですよね、ひたすらに本能の赴くまま行動するから」
呪霊は人間の負のエネルギーから産まれる。いわば心の不安であるネガティブが主流なのだが、自分に対してネガティブな性格の呪霊はあまり見たことがない
だからこそ努力と相性が良い
「そりゃ強いですよね、強くなるためには努力が必要で呪霊はその努力特化のアドバンテージを持っているわけですから」
「、、、、、、、、」
蜘蛛寺の話を聞いていた歌姫は確かにと思った
だがそれ以上にとある引っかかりを思えた
彼女に対して何らかの違和感を感じるのはコレが初めてではないが
今回のはいつもより少し違う
もしかして 彼女は
「貴方は、、、呪霊を人間みたいに見ているの?」
「ん?」
その言葉こそ歌姫が感じた違和感、蜘蛛寺はまるで呪霊を人と同じカテゴリーで見ているような気がするのだ。呪術師は確かに人と呪いの境界がボヤけやすいが、彼女はまるでその境界そのものを無視しているような、、、、
そして歌姫の言葉に蜘蛛寺は
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「庵」
「あ、学長」
京都校の事務室で歌姫が学長に話しかけられた。時期に始まる姉妹交流会のことについての話と今回の件についての報告、それで終わりのはずだったのだが
「学長は水子の事をどう思いますか」
「蜘蛛寺のことか、、、、ときおり行動は読めんが、組織にとって有用な利益を自主的に出し続けている以上、よほどのことがない限り咎めはせん、例えそれが外面で『裏』を隠すためだとしてもだ」
「裏、、、ですか」
「ヤツがどんな思惑で何を考えているかなどいちいち考えておられん、組織に利益を献上して規定に沿って行動してくれるのなら多少のことは目をつぶる。本格的に逆らうならこちらも本格的な処分を言い渡す。ただそれだけじゃ」
楽巌寺は生粋の規律人間、規律に乗っ取れば人の内面など重要ではない、それが彼の長年貫いてきた考え方
だが彼は知らない
蜘蛛寺水子の本当の『精神年齢』を
人と呪霊に大した違いなんてないとわたしは思っています
大雑把に言えば私は呪霊を『個性的な人間』と同じ括りにしているのでしょう
別に呪霊に対して情みたいなものを持っているわけじゃないんです
自分以外を傷つける個性があるから殺される
それが性だから人を傷つける
スケールが大きかったり広かったりするから勘違いしやすい
殺しに来るから殺す
生きてて困るから殺す
お金のために殺す
これって人と人との間でも成立することですから
あぁ でも
歌姫先生 これだけは言っておきますね
たぶん私は
呪霊と同じ所業をワクワクしながらやれる
私が嫌いな人はいつか私が殺すかもしれませんね
例えば私の『宝物』を傷つける人たちとか