千年前の天与呪縛 現代で生存フラグ建築士となる 作:サイセンサイ
「どういうつもりだ蜘蛛寺」
「言葉の通りですよ」
加茂が睨みつけた先に畳でコンビニスイーツをパクパクと食べる蜘蛛寺がいた。彼女は虎杖悠仁をどう殺すの会議(東堂は早々と離脱)を繰り広げて一段落しそうな時にその言葉をぶち込んだ。
「私は今回の交流会を辞退します」
「はぁ~」
「水子ちゃん」
『気まぐれが過ぎるぞ』
(えぇ~こういうのに耐性がありそうな先輩がやらないの〜)
蜘蛛寺の発言に各々の反応をする中、楽巌寺が青筋を浮かべて何かを言おうとした時にため息をついた歌姫が近づいて冷静にその真意を聞きに近づく
「さっきの宿儺の件が関係してるの?」
「いいえ」
「!」
「乙骨憂太くん、秤金次くんの両方が出てない時点で私は辞退するつもりでした」
蜘蛛寺が口にしたのは領域が使える実力者2名の名前、特級とそれに近い実力を持つ2人は確かに今回の交流会には参加していない。確かにこの二人言ってしまえば遥かに格上、相手は東堂くらいしか務まらない、例え反転術式を他者に使える蜘蛛寺がサポートに入ったとしても勝てる見込みは薄いだろう。
「何?アンタも東堂先輩と同じでつまらないとかいうつもり?」
「そういうのも全然ないとは言いませんけど、一番の理由は『皆の活躍の場』を奪わないためですよ」
「「「!」」」
蜘蛛寺は食べ終わったコンビニスイーツのゴミを袋に入れて、肩に学ランをかけて立ち上がる。そして皆を一通り見渡したあとに言葉を続ける
「私は自分で言うのもなんですけど、呪術界隈の立ち位置では既に中堅の位置にいます。」
「反転術式の他者への応用、『錦上添花融通無碍』の美容、あとは肉体の寄付、それで準一級、たしかに貴方の立場は既に安定したものだけど」
「そして私は良くも悪くも注目される女なので、皆に向けられるはずの視線を私だけに集めるのは皆のため、もしくは京都校のためにも東京校のためにもなりません。私の場合アピールできる場所なんていくらでもありますから」
「自信満々にいうじゃん」
西宮が呆れながら蜘蛛寺にツッコミを入れる。確かに彼女の功績は大きい、それゆえに贔屓目で見ても彼女を特別扱いしてしまうのは仕方ないのだ
「霞くん」
「は、はい!?私!?いきなり!?」
「貴方はアピールに全力を注いでるでしょう。生活のために弟さんのために」
「は、はい」
「なら目立つ私は居ないほうがいいではありませんか」
「、、、それはそうですけど」
三輪が言いくるめられようとするが、そこに待ったをかけるのが京都校のまとめ役である加茂憲紀である。彼は明らかに不機嫌そうに蜘蛛寺に近づく
「お前がどういう意思を秘めているのか今回はどうでもいい、私は加茂家の次期当主として虎杖悠仁を殺さなければならない、お前も呪術師なら場の平穏のために動け」
「真面目なお方、そういうところは好きですけどもう決めましたので」
「蜘蛛寺!」
「それに、両面宿儺様に憧れを抱いているものを作戦に組み込むなんてリスキーな真似は避けたほうがいいですよ。私は邪魔とかはしませんから」
そう言って蜘蛛寺はその場をあとにした。彼女も彼女で東堂と同類な呪術師であると皆が再確認した時間だった
そして離れていく蜘蛛寺の背中を小姓である真依だけがいつまでも見続けていた。
「、、、わからないやつ、、、何年も一緒にいるのに本当に分からない」
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「家を出るのですね」
「あぁ」
そこは蜘蛛寺と小姓である禪院姉妹が暮らしている上に用意された一軒家、姉妹にとってはもう何年も暮らしている自分達の家、嫌悪している実家とは全く違う息のつまらない居場所、そのリビングで蜘蛛寺と真希が机を挟んで向かい合ってそんな話をしていた。
そして真依はリビングにはいらず、繋がっている廊下で壁を背にして聞き耳を立てていた。
「私が禪院家の当主になる」
「決めたのですね」
「なんか驚いてねぇな?」
「いつかこんな日が来るのは分かってましたから、貴方のこと何年見続けたと思っているんですか?」
こんな日が来るのは随分前に分かっていた。例え自分の小姓でも2人は禪院家の人間、ときおり実家に呼び出されては顔を曇らせて帰ってくる。特に真希は帰るたんびにいじめられて傷を作ってくるのだ。
二人があのままあの家で育っていたらどうなっていたのだろう
少なくとも今とは少し違う何かが起こっていたのかもしれない
常にストレスに晒されるその世界で
常に心をすり減らされる
そうなれば何もかもに見切りをつけて
ただ機会的に生きることになっていたのかもしれない
そんな未来を真希は拒否した
そして真依は
「私と真依をあの家から連れ出してくれた恩は一生かけて返す。私が当主になれば水子に好きなことさせまくってやるよ」
「それは楽しみですね」
「ハハッ、、、笑わねぇんだな、こんな無茶振りを」
「あらあら私を直哉さんみたいに思ってるのですか?」
もしもあの日、蜘蛛寺水子が連れ出してくれなかったら。真依は心をすり減らして自分の心を守るために自ら歪んで色んなものを諦めていただろう
だが『この』真依は違う
この家は彼女にとってある種の理想だった。痛いことも無い怖いことも無い自分達を卑下する視線もない、主である水子はときおり変だが自分達に優しくしてくれる。
そして姉がずっと隣にいる
だから彼女の望みは心からの『現状維持』
そう
現状維持なのだ
「禪院家の人たちはそれをよしとしません。必ず陰湿な嫌がらせをしてきますよ、等級を上げないとか」
「覚悟の上だ」
だが真希は未来に突き進んでしまう。分かってはいた。これが姉なんだということを、自分とは違ってとても強く気高く停滞する自分を許せない高潔
「一応言っておきますけど、真依くんの『居場所』はここにあります。」
「!」
「!」
「貴方が当主になりたい理由に『真依くんの居場所を作る』というのも入っていますね」
「、、、ホントに鋭いな」
「っ!」
その会話を盗みぎく真依の心境は言葉に表せない複雑なもの、居場所ならここにある。だが禪院である限り実家からは逃げられない、自分達を卑下するくせに逃がしはしない、それが禪院家
諦めればいい、諦めて現状の生活を続ければいい、それが一番楽で正解なのだろう
だが姉は自分を理由にして家を出ていこうとする
自分から離れようとしている
「そして禪院家は真依くんにも試練を課すでしょう」
蜘蛛寺は真希の行動により真依にもその重荷が背負わされる事を指摘した。その言葉を聞いた真依は姉の言葉を待った。まるで何かを望むように
「ここで動かなきゃ私は私を嫌いになる」
真希は少し考えたあと
「だけどそうだよな、そういう家だもんなあそこは」
自分の正直な胸の内を語った
だからこそ
そう だからこそ
「あいつは『関係』ないのにな」
真依はその言葉で目の前が真っ赤になった
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「あの時の姉妹喧嘩は私の人生ベスト3に入るくらいの名場面でした」
「死になさい」
ついに交流会が始まる。蜘蛛寺は本当に参加せずに冥冥のモニターでその沙汰を見守るらしい。楽巌寺は最後まで怒っていたが
「モニターで見させてもらいますよ♪あの時ぶりの姉妹喧嘩を♫」
「まさか私たちの喧嘩をじっくり見たくてこの場にとどまるんじゃ」
「否定はしません」
「しなさいよ」
なんてことのないいつもの会話、いつも振り回されるのは真依、そして前まではここに真希もいた
真希はメールでよく蜘蛛寺と繋がっていたが真依はそうはしなかった。純然たる思春期の意地、真希もそれを汲み取ったのだろう
「だったらせめて録画しときなさいよ。私が真希を痛めつける所を」
「言われなくても録画しますよ」
「あ、そう」
2人の関係は拗れている。お互い想い合っていながら現実がその直線を歪ませる。蜘蛛寺がいなかったら更に拗れていただろう
そう『この』2人には蜘蛛寺がいる
変化をもたらす蜘蛛寺がいる
「さっさと『更新』しなさい」
「了解です」
『躯統術式』
【豆剖瓜分不羈奔放(とうぼうかぶんふきほんぽう)】
『とあるモノ』に触れて蜘蛛寺は術式を作動させる。それは真希が家を出てから始めた事で真希はこの事を知らない
「あいつの驚き顔が目に浮かぶわ」
真依は意地の悪い笑みを浮かべながら真希のいる方角に首を向けた
「言っちゃいましたね」
「そうね、静かになってせいせいしたわ」
「でも真希くんは強くなれません」
「え?」
「双子は呪術的に見て同一人物ということは昔教えたでしょ?」
「えぇ」
「真希くんが強くなりたいと思っても真依くんが同じく強くなりたいと思わなければ意味がないんですよ」
「、、、、、なにが言いたいの」
「貴方を強くします」
「!」
「真依くん、私と『縛り』を課してくれませんか?」
「縛り?」
「えぇとある『縛り』を」
それを真希は知らない
誰も知らない
それは彼女が現代の倫理観ではないという証明
「もし来たるべき日が来てしまったら。真希くんに『全て』を捧げるという縛りを」
この世界の真依は原作よりすり減ってないぶん素直です
そしてそれが表に出ることで起きる事もあります