ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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おかしなところがありますが、ご愛嬌ということで。


第十二章:商業都市の洗礼と『使い込まれた算盤亭』

第十二章:商業都市の洗礼と『使い込まれた算盤亭』

西部諸国(テン・チルドレン)の商業都市タイデル。通称「十字の町」

運河が縦横に張り巡らされ、大陸中から商人と富が集まるこの街は、剣の国オーファンとは全く異なる活気と喧噪に包まれていた。

 

「すごい人の数ね。並んでいる品物も、オーファンよりずっと華やかだわ」

シリアが運河沿いの美しい露店を見渡しながら、感嘆の声を漏らす。

 

「だが、その分物価も跳ね上がってるぜ。おい見ろよ、あそこの屋台の串焼き、一本で銀貨3枚(ガメル)もしやがる! オーファンの三倍だぞ!」

ロロが露店の値札を見て顔を引きつらせ、商人の夢を語る男らしからぬ悲鳴を上げた。

 

「ここは富裕層や大商人が行き交う表通りだからな。一般の宿屋に泊まれば、護衛任務で稼いだ黒字があっという間に飛んでいくぞ」

ライシンが周囲の護衛兵や傭兵たちの身なりを観察しながら、冷静に状況を分析する。

 

「私たちの目的は英雄になることじゃない。いかに経費を抑え、着実に日銭を稼ぐかよ。まずは、身の丈に合った手堅い『冒険者の宿』を見つけるのが最優先ね」

メリッサの言葉に全員が深く頷き、五人は華やかな大通りを外れ、冒険者や職人たちが集まる裏通りへと足を踏み入れた。

 

路地裏の品定め

タイデルの裏通りは、表の華やかさとは裏腹に、実利と計算が支配するシビアな空気が漂っていた。

 

「宿探しは俺に任せな。シーフの目利きで、ぼったくりや柄の悪い連中がたむろする宿は全部弾いてやる」

ロロが鋭い視線を走らせ、看板や建物の造り、出入りする客の足元を次々とチェックしていく。

 

「あそこの宿は入り口の扉が新しすぎる。最近、荒くれ者が喧嘩で壊した証拠だ。修理代が宿泊費に上乗せされてるはずだぜ」

「こっちの宿は客引きがしつこいな。裏がある証拠だ。パスだ」

 

カイルもバード(吟遊詩人)の耳を澄ませ、宿の中から漏れ聞こえる声のトーンや、飛び交う金貨の音で治安の良し悪しを探る。

「……ロロ、あそこの路地の奥はどうだ? 建物は古いが、掃除が行き届いてる。中から聞こえるのも、静かな話し声だけだぜ」

 

カイルが指差した先には、木彫りの古びた看板が掲げられていた。

『使い込まれた算盤(そろばん)亭』。

 

「……名前からして、無駄を嫌いそうな宿だな。俺たちの理念にピッタリじゃないか」

ライシンが微かに口角を上げ、五人はその宿の扉を開けた。

 

女将との交渉

宿のカウンターには、銀縁の眼鏡をかけた細身の老婆が座り、パチパチと音を立てて算盤を弾いていた。

 

「いらっしゃい。一泊食事なしで銀貨10枚。お湯を使いたければ銅貨5枚追加。シーツの交換は三日に一度、毎日変えたければ銅貨3枚追加だよ」

老婆は顔も上げず、淡々と料金体系を告げる。

 

「基本料金を抑えて、サービスを完全なオプション制にしているのね。合理的だわ」

メリッサが感心したように呟く。

 

「最高じゃないか! お湯なんて俺とカイルは水行(すいぎょう)で十分だ。シーツだって一週間は同じで構わない! なぁ女将さん、俺たち、部屋を綺麗に使うし喧嘩もしない堅実な五人組だ。一ヶ月の長期滞在で前払いするから、基本料金を少し負けてくれないか?」

ロロが目を輝かせてカウンターに身を乗り出し、交渉を持ちかける。

 

老婆はピタリと算盤の手を止め、眼鏡の奥から五人を値踏みするように見つめた。

派手な装飾のない実用的な武具、油断のない立ち居振る舞い、そして何より、無駄な血の気を感じさせない落ち着いた瞳。

 

「……いいだろう。長居する質の悪い冒険者は宿の備品を壊して高くつくが、あんたたちは『計算』ができそうだ。一ヶ月前払いで、一人一泊銀貨8枚にしてやろう」

「商談成立だ! あんた、話が分かる最高の女将さんだぜ!」

 

ロロが歓喜の声を上げ、きっちりと計算した銀貨をカウンターに並べた。

 

新たな生活の始まり

案内された大部屋は、装飾こそ一切ないものの、床の板は丁寧に磨き上げられ、隙間風もない快適な空間だった。

 

「よし、これでタイデルでの安全な寝床は確保できた。しかも予想以上に安く上がったな」

カイルが自分のベッドに荷物を放り投げ、大きく伸びをする。

 

「お湯のオプション代は、私とメリッサの分はきっちり経費として申請させてもらうわよ、ロロ?」

シリアが釘を刺すと、ロロは渋い顔をしながらも「……女の身だしなみは必要経費として認めてやる」と頷いた。

 

「さあ、明日からはいよいよタイデルでの仕事探しだ。オーファンよりも依頼の質は複雑になるだろうが、私たちのやり方は変わらない」

ライシンが腰の刀を壁に立てかけながら、全員を見回す。

「怪我なく、確実な日銭を稼ぐ。この商業都市の裏に落ちている金貨を、しっかりと拾い集めるぞ」

 

五人の新たな拠点『使い込まれた算盤亭』の夜は、堅実な未来への期待と共に静かに更けていった。

 

 




ソードワールドの世界にそろばんてありますかね?
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