ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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色々とツッコミどころ満載ですが,楽しいんでいただければ幸いです。


第十七章:街道の野営と徹底された隠密行

第十七章:街道の野営と徹底された隠密行

商業都市タイデルを後にした「擦り減り銀貨(スクラップ・シルバー)隊」の五人は、南の都市国家ベルダインへと続く長距離街道を歩んでいた。

 

「よし、本日の野営地はここにするぞ。街道から少し外れた岩陰で、風避けにもなるし身を隠すには最適だ」

夕暮れ時、先頭を歩いていたシリアが手頃な野営場所を見つけ、足を止める。

 

「助かったぜ。宿屋のベッドが恋しいところだが、ベルダインに着くまでは野宿で宿代を浮かせるのが俺たちの基本方針だからな」

ロロが重い背嚢を下ろし、手早く野営の準備に取り掛かる。

 

「今日の夕食は、シリアが森で採ってきてくれた野草とキノコ、それにタイデルで買い込んだ一番安い干し肉のスープだ。携帯保存食(レーション)を消費しなくて済むのは本当に助かるぜ」

カイルが手慣れた様子で焚き火の準備をしながら笑う。

彼らの徹底した経費削減は、移動中の食費にまで及んでいた。レンジャー技能を持つシリアの野外サバイバル能力は、今やパーティの財政を支える重要な柱の一つとなっている。

 

温かいスープを啜り、交代で仮眠を取る静かな夜。

深夜の冷え込みが厳しくなり始めた頃、見張りに立っていたシリアとカイルが同時に異変を察知した。

 

闇夜の足音と賢者の分析

「……みんな、起きて。音を立てないで」

シリアの緊迫した囁き声に、仮眠をとっていた三人が瞬時に跳ね起きる。手には武器を握っているが、誰一人として金属音を鳴らさない。

 

「カイル、距離と方角は?」

ライシンが極小の声で問う。

 

「北西の森から街道に向かって、かなり重い足音が近づいてくる。数は一。だが、ただの獣じゃないぜ」

シーフとしての聴覚を研ぎ澄ませたカイルが答える。

 

シリアが風の匂いを嗅ぎ、顔をしかめた。

「酷い獣臭と、血の匂いが混じっているわ。足音の重さからして、体長は優に二メートル半を超えている」

 

その情報だけで、メリッサのセージとしての知識が即座に最適解を弾き出した。

「……間違いないわ、『オーガ』よ。知能は低いけれど、丸太のような棍棒を振り回す狂暴な妖魔。まともにやり合えば、一撃で盾が割られ、防具がひしゃげるわ」

 

「オーガだと!? 討伐依頼が出ているわけでもないのに、あんなのと戦ったら武器の修理代と治療費で大赤字じゃないか!」

ロロが青ざめて頭を抱える。

 

「その通りだ。ここで戦うのは、経費の観点から言って『完全な無駄』だ」

ライシンが冷静に断を下す。

「総員、戦闘は回避する。隠密行動(ハイド・イン・シャドウ)でやり過ごすぞ」

 

究極の回避術

「火を消して! 匂いで気づかれるわ!」

シリアの指示で、ロロとカイルが瞬時に土を被せて焚き火を完全に鎮火させる。

 

「シリア、例の草を」

「ええ。昼間に見つけておいた『腐りドクダミ』よ。これを体に擦り込んで、人間の匂いを消すわ。臭いけど我慢して!」

シリアが背嚢から取り出した強烈な悪臭を放つ草を揉み解し、五人は躊躇うことなくそれを自分たちのマントや防具に擦りつけた。

 

岩陰の暗がりに身を潜め、呼吸を極限まで浅くする。

やがて、木々をへし折るような乱暴な足音と共に、巨大なオーガが姿を現した。手には血のこびりついた巨大な棍棒が握られており、爛々と光る目で周囲をギョロギョロと見回している。

 

(……まずいな。消臭は完璧だが、オーガの進行ルートがどんぴしゃでこの岩陰に向かっている)

ライシンが鞘の中で刀の鍔に親指をかけ、万が一の事態に備えて筋肉を緊張させる。

 

その時、ロロが決死の表情で動いた。

彼は自分の鞄から、夕食で使わなかった「一番大きな干し肉の塊」を取り出したのだ。金にうるさいロロにとっては、身を切られるような出費である。

 

ロロは無音で立ち上がると、オーガの視界に入らないよう、シーフ(Lv3)の完璧な投擲技術で、その干し肉を街道の反対側——オーガから見て遠く離れた茂みの奥へと全力で投げ込んだ。

 

ポスッ、という微かな着地音。

しかし、オーガの鋭い嗅覚は、人間よりもはるかに強い「肉の匂い」を即座に捉えた。

 

「グルルォ?」

オーガはピタリと足を止め、岩陰から向きを変えて、肉の匂いがする茂みの方へとノシノシと歩き出した。そして干し肉を見つけると、一口でそれを丸呑みし、そのまま機嫌良さそうに別の方向へと去っていったのである。

 

経費の重み

オーガの足音が完全に聞こえなくなるまで、五人は微動だにしなかった。

やがて、シリアが周囲の安全を完全に確認し、小さく息を吐き出した。

 

「……やり過ごしたわ。遠ざかっていった」

 

「ふぅぅぅ……死ぬかと思ったぜ」

カイルがへたり込み、緊張でかいた汗を拭う。

 

「オーガの棍棒を一発でも貰っていれば、私の《キュア・ウーンズ》でも回復しきれなかったかもしれないわ。見事な判断だったわね、ロロ」

メリッサが安堵の笑みを浮かべる。

 

しかし、当のロロは地面に膝をつき、天を仰いでいた。

「俺の……俺のとっておきの特大干し肉(銅貨5枚相当)がああああ……!! 憎きオーガめ、いつか討伐依頼が出たら絶対に利子をつけて回収してやるからな……!」

 

「まあ泣くな、ロロ。お前の干し肉一つで、マジックブレイドの刃こぼれも、カイルの盾の破損も防げたんだ。立派な『経費削減』だぞ」

ライシンが珍しく声に出して笑い、ロロの肩を叩いた。

 

「ええ。私たちは『擦り減り銀貨(スクラップ・シルバー)隊』。無駄な戦いを避け、手堅く生き残るのが流儀だものね」

シリアもクスリと笑いながら、体に染み付いた腐りドクダミの匂いを嗅いで鼻をつまんだ。「……それにしても、早くベルダインに着いてお湯を浴びたいわ」

 

危険な夜の街道での予期せぬ遭遇。

しかし彼らは、自慢の武器や魔法を振るうことすら「無駄」と切り捨て、見事な知恵と連携によって無傷で夜を乗り切った。

 

翌朝、体に染み付いた悪臭に顔をしかめながらも、五人の足取りは不思議と軽かった。

南の都市国家ベルダインの城壁は、もう目と鼻の先まで迫っていた。

 

 




言い訳という名のセルフツッコミです。
アレクラスト大陸に『隙間産業』なんて言葉存在しないと思いますが、リプレイ的なノリと思っていただければ幸いです。
今、気付いたのですが、堅実な「冒険」者てなんですかね((笑)。
危険な事をしたくなければ、普通に働けば良いのではと、自分の作品なのに思いました。
一攫千金とまで言わないけれど、安全にマージンを取りつつ、普通に働くよりも、実入りが良い可能性があるから?
もしくは、まともに働きたくとも仕事が無いから?
考えてみて、ワタクシ自身が思った事は冒険者に対する憧れかなと思いました。痛い思いも、怖い思いも、キツイ思いもしたくないですが、やっぱり憧れますよね。英雄になれなくても、冒険者になってみたいと思いました。
もし皆様も同じ思いがあればこれからも彼らといっしょに冒険の旅を続けてもらえればと思います。
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