ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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第十八章:遺跡の街ベルダインと『欠けた石版亭』

第十八章:遺跡の街ベルダインと『欠けた石版亭』

芸術の都。南の都市国家ベルダイン。

古代カストゥール王国の遺跡群を抱えるこの街は、「冒険者の街」と呼ばれるにふさわしい熱気と喧騒に包まれていた。通りには発掘されたばかりの奇妙な骨董品が並び、一攫千金を夢見る武装した若者たちが肩で風を切って歩いている。

 

「オーファンともタイデルとも違う、独特の匂いね。古い土と、微かな魔力の残り香が入り混じっているわ」

シリアが鼻をヒクつかせながら、周囲の露店を物珍しそうに眺める。

 

「ロマン溢れる街だが、俺たちにとっては物価の高さが最大の敵だ。遺跡景気に沸いているせいで、どの宿も足元を見た料金設定にしやがっている」

ロロが街角の掲示板に貼られた宿屋の広告札を睨みつけ、忌々しそうに舌打ちをした。

 

「派手な装飾品をぶら下げた成金冒険者向けの高級宿か、さもなければ、毎晩のように酒場で乱闘騒ぎが起きるスラムまがいの安宿か。両極端だな」

ライシンが通りを行き交う冒険者たちの装備を冷静に観察しながら呟く。

 

「私たちの流儀は『無駄な出費と怪我を避ける』ことよ。乱闘に巻き込まれてポーションを消費するなんて論外だわ。安全で、静かで、かつ予算内の拠点を見つけ出さないと」

メリッサの言葉に、ロロとカイルが力強く頷いた。

 

「任せとけ。タイデルの時と同じだ。俺たちの目と耳で、ベルダインの『隙間』に隠れた優良物件を見つけ出してやる」

 

徹底的な物件調査

五人は大通りを離れ、入り組んだ裏路地へと足を踏み入れた。ここからが「擦り減り銀貨(スクラップ・シルバー)隊」の真骨頂である。

 

「あそこの『黄金の杯亭』、一見安そうだが裏口から腐った食材の臭いがするわ。食中毒のリスクがあるから却下ね」

シリアがレンジャーの嗅覚で衛生状態を看破する。

 

「こっちの『竜の鱗亭』は、柱の根元がシロアリにやられている。セージの建築知識から見て、強風が吹いたら倒壊の恐れありよ」

メリッサが建物の構造的欠陥を指摘し、リストから外す。

 

「カイル、あそこの奥まった宿はどうだ? 建物は古いが、変な匂いもしないし、作りもしっかりしてるぜ」

ロロが指差した先には、色褪せた看板に『欠けた石版亭』と書かれた、静かな佇まいの宿があった。

 

カイルがバードの聴覚をすまし、建物の内側から漏れる音を探る。

「……聞こえるのは、羊皮紙をめくる音と、静かにスープをすする音だけだ。酔っ払いの怒声も、博打のサイコロの音もしない。治安は完璧だぜ」

 

「よし、決まりだ。交渉に入るぞ」

ライシンを先頭に、五人は『欠けた石版亭』の扉を開けた。

 

変人学者と静寂の契約

宿のカウンターには、埃まみれの古文書に囲まれた白髪の老人が座っていた。彼は分厚い眼鏡の奥から五人を値踏みするように見上げる。

 

「いらっしゃい。ここは『欠けた石版亭』。ただし、毎晩ドンチャン騒ぎをしたい血の気の多い冒険者なら、他を当たってくれ。私は静かに遺跡の研究をしたいんだ」

老人はぶっきらぼうに言い放った。

 

「好都合だ。俺たちも無駄な騒音とトラブルを何よりも嫌う『堅実な冒険者』でね。寝床と温かいスープ、それに静かな環境さえあれば文句は言わない」

ライシンが静かに、しかし威圧感のない落ち着いた声で返す。

 

「……ほう。確かに、お前さんたちの装備は手入れが行き届いているが、無駄な装飾がない。それに、血の匂いより野宿の土の匂いがするな。身の程をわきまえた連中と見える」

老人の強張っていた表情が、わずかに緩んだ。

 

「だろ? 俺たちは『擦り減り銀貨隊』。宿の備品を壊すような真似は絶対にしないと誓うぜ。親父さん、俺たち一ヶ月の長期滞在を考えてるんだが、少しばかり基本料金をまけてくれないか?」

ロロが愛想の良い笑みを浮かべ、カウンターに身を乗り出す。

 

「……一泊、銀貨9枚。お湯の提供は二日に一回なら無料にしてやる。ただし、私が研究している間は絶対に足音を立てないこと。それが条件だ」

 

「交渉成立だ! あんた、話の分かる最高の親父さんだぜ!」

ロロが歓喜の声を上げ(もちろん、親父を刺激しないよう控えめな音量で)、前払い分の銀貨をきっちりとカウンターに並べた。

 

ベルダインでの新たな拠点

案内された部屋は、ベルダインの喧騒が嘘のように静かで、古い紙とインクの落ち着く匂いが漂っていた。

 

「よし、お湯の無料サービスも勝ち取ったし、完璧な拠点確保ね」

シリアがホッと息をつき、ベッドに腰を下ろす。

 

「宿の主人が遺跡の研究者というのも好都合だ。ベルダインでの仕事は遺跡探索絡みが多くなるだろうから、彼の知識や情報網が役に立つかもしれないわ」

メリッサがセージとしての視点から、この宿のもう一つの価値を見出していた。

 

「ああ。オーファン、タイデルと渡り歩いてきたが、俺たちの『経費削減と確実な仕事』というやり方は、この街でも十分に通用するはずだ」

ライシンが窓から見える古代の遺跡群を見つめながら、静かに闘志を燃やす。

 

「さあ、明日からはベルダインでの稼ぎ口探しだ! この街に眠るお宝の『おこぼれ』を、俺たちで根こそぎ拾い集めてやろうぜ!」

カイルがリュートを優しく爪弾きながら、新たな冒険の幕開けを祝った。

 

南の都市国家ベルダインでの新たな拠点『欠けた石版亭』。

「擦り減り銀貨(スクラップ・シルバー)隊」の堅実な日々は、ここから新たなページを刻み始める。




ハーメルンに二次創作を二作投稿していますが、一つは完結しました。
今作はまだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします。
ここで宣伝をさせていただきます。なろうやカクヨムにオリジナルのファンタジーを投稿しています(完結済みです)。内容は色々あれですが、世界設定はフォーセリアを参考に頑張って作ってみました。作品自体の感想は無くても良いのですが、世界設定の感想を聞かせてもらえたら嬉しいです。この作品に目を通してくださった皆様の感想が聞いてみたいです。またもし良かったら世界設定を使って二次創作していただけたらと思います。作品のタイトルは「マジック&ブレイド」です。
最後に本当の宣伝です。なろうやカクヨムにオリジナルの作品を載せてますタイトルは
「台湾祓清愛哀歌」といいます。2000年代の台湾を舞台した、男女バディーの除霊ものです良かったら見て下さい。一話完結ものなので見やすいと思います。
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