ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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第22話

第二十一章:沈黙のからくりと四色の秤

「欠けた石版亭」の宿の主人マクミラン先生から、ベルダインの古代遺跡《沈黙の回廊》に関する有力な情報が得られた。

 

「あそこは古代カストゥール王国の魔導師が遺した私設書庫の跡地だ。魔物は棲みついておらず怪我のリスクは低いが、奥へ進むには『魔導のパズル』を解く必要がある。力任せに突破しようとすれば強力な防衛罠が発動するため、血の気の多い冒険者どもは軒並み退散しているよ」

 

マクミラン先生の言葉通り、大通りの冒険者の宿には『《沈黙の回廊》最奥部にある古代の星盤の回収(報酬:銀貨300枚)』という依頼が、手付かずのまま残されていた。

 

「魔物が出ない=武器の消耗ゼロ、ポーションの消費ゼロ! パズルを解くだけで銀貨300枚(ガメル)なら、俺たちにとって最高のカモじゃないか!」

ロロが目を輝かせ、即座に依頼書を引っつかんだ。

 

四色の台座と刻まれた古代語

《沈黙の回廊》は、静寂と冷気に包まれた美しい石造りの遺構だった。

回廊の最奥へ進むと、重厚な石の扉が立ちはだかり、その手前には赤・青・黄・緑の四色の宝石が嵌め込まれた小ぶりの台座と、中央に置かれた古い天秤装置が置かれていた。

 

石扉の表面には、古代カストゥール文字が刻まれている。

 

「メリッサ、なんて書いてあるの?」

シリアが問いかける。メリッサはセージの知識を研ぎ澄ませ、刻まれた銘文をなぞった。

 

「ええと……『四つの精霊の重さを等しく整えよ。ただし、火は風を拒み、水は地を育む。偽りの重りを載せし時、頭上より雷の鎚が下りん』……なるほどね」

 

「力任せに扉を壊そうとしたり、適当に重りを載せると、天井から雷撃のトラップが降ってくる仕掛けだな」

ライシンが天井の微妙な隙間を見上げ、冷や汗を拭う。

 

「天秤の横に、それぞれ重さの違う小さな金属球が四つ置いてあるぜ。赤、青、黄、緑の刻印がついている」

カイルがシーフツールを手に、慎重に金属球を調べた。

 

「単に天秤で重さを測って同じにすればいい……ってわけじゃないのよね?」

シリアが尋ねると、メリッサが頷いた。

 

「ええ。銘文は精霊の相性と配置を示しているわ。古代カストゥール王国では、火(赤)は風(黄)と対立し、水(青)は地(緑)と親和性があるとされたの。単なる物理的な重量ではなく、台座に載せた時の『魔力的な重量バランス』を計算しなきゃいけないのよ」

 

賢者と盗賊の緻密な計算

「物理の重さだけじゃなく、魔力加算の法則があるわけか。面白いじゃないか」

ロロが計算用紙代わりに拾った平らな石板に、手持ちの羊皮紙の端切れで数式を書き込み始める。商人の夢を持つロロの暗算能力は、金計算以外でも存分に発揮される。

 

「メリッサ、それぞれの属性の魔力加算係数を教えてくれ」

「火は+3、水は+1、風は+2、地は+4よ。そして、水と地を隣り合わせに置くと親和効果で全体の重量に+2、火と風を向かい合わせに置くと反発で−3されるわ」

 

「OK、分かった。金属球自体の重さは……カイル、天秤で測ってくれ」

「任せな」

カイルが手際よく天秤を扱い、4つの金属球の素の重さを特定していく。

「赤(火)が5、青(水)が8、黄(風)が6、緑(地)が3だ」

 

二人は息の合った連携で、組み合わせを試算し始めた。

 

素の重量:火(5) + 風(6) + 水(8) + 地(3) = 計22

 

属性加算:火(+3) + 風(+2) + 水(+1) + 地(+4) = 計10

 

対立と親和:水と地を隣接(+2)、火と風を離して向かい合わせを回避(±0)

 

「計算できたぞ! 右の皿に『水(青)』と『地(緑)』、左の皿に『火(赤)』と『風(黄)』を載せる! これで素の重量と魔力補正の合計が、どちらの皿もピッタリ『14』になる!」

ロロがドヤ顔で言い放った。

 

「さすがロロ! 計算が早いわね」

シリアが感心したように手を叩く。

 

無傷の報酬

「よし、カイル、配置を頼む。万が一トラップが動いたらすぐに引っ込めろよ」

ライシンが万全の警戒体制をとる中、カイルが滑らかな手つきで指定通りの位置へ金属球を配置した。

 

カチリ……。

 

重い作動音が回廊に響き渡る。

天井の雷撃トラップが発動するかと思われたその瞬間、ゴーッと静かな音を立てて正面の重厚な石扉が滑らかに奥へと開いた。

 

扉の向こう、台座の上にポツンと置かれていたのは、目的の『古代の星盤』だった。

 

「仕掛け解除、完了だぜ!」

カイルが親指を立てる。

 

「見事だ。魔物との戦闘もなし、トラップの誤作動による防具の損傷もなし、魔法の消費も一切なしだ」

ライシンが安堵の息を吐き、星盤を丁寧に布で包んで回収した。

 

「パズルを解くだけで銀貨300枚(ガメル)! これぞまさに『擦り減り銀貨隊』の得意分野ね!」

メリッサが満面の笑みを浮かべ、五人は意気揚々と《沈黙の回廊》を後にした。

 

知恵と計算だけで危険な遺跡を攻略し、一切の経費をかけずに高額報酬を手に入れた五人。ベルダインでの「堅実な冒険」は、着実に彼らの懐を豊かにしていくのだった。

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