ソードワールドの二次創作。平凡な冒険者の冒険譚   作:シットライヌ

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第二十三章:ロマールへの道程 —— 経費削減のキャラバン行

第二十三章:ロマールへの道程 —— 経費削減のキャラバン行

 

「メリッサ、そっちの革袋はいっぱいになったか? まだお湯が出るなら、俺の予備の水筒にも詰めてくれ!」

「ええ、任せて。ラーダの導きにより、このお湯は一滴たりとも無駄にはしないわ」

 

芸術の都ベルダイン。長らく拠点としていた安宿「欠けた石版亭」の裏手で、ロロとメリッサは朝から慌ただしく立ち回っていた。

前回の依頼で見事な活躍を見せた彼らは、宿の主人マクミランから「今月の宿代・お湯代全額免除」という破格の報酬を得ていた。今日がそのベルダイン出発の日。つまり、免除の権利を行使できる最終日である。二人は支給される熱いお湯を、持てる限りの水筒という水筒に注ぎ込んでいた。お湯を沸かすための薪代すら節約しようという、彼ららしい徹底した経費削減策である。

 

「お前ら、いくらタダだからって詰め込みすぎじゃないか……? 荷物が重くなるぞ」

呆れたように声をかけたのは、前衛の要である魔法戦士のライシンだ。

「重いのは最初だけだよ、ライシン。それに、このお湯を使ってレイドまでの道中で温かいスープを作れば、野営の経費がさらに浮く!」

ロロが胸を張って答えると、シリアとカイルも苦笑しながら荷車の準備を進めた。

 

今回の旅路も、ただ歩くような真似はしない。ロロは前日のうちに、ロマールまでの中継の都市である、レイドへと向かう商人の荷馬車を見つけ出し、

「腕利きの冒険者五人による護衛」を条件に、馬車の空きスペースへの便乗と道中の食事代の一部負担を勝ち取っていた。馬や馬車を自分たちで借りる費用を完全にゼロにする、見事な交渉術だった。

 

一行を乗せた商人の馬車は、ベルダインを出発し、街道を北へと進む。

数日ののち、彼らはレイドに到着した。ここで二日ほどの小休止と、さらなる長旅に向けた物資の補充を行う。

 

「さて、宿はもちろん一番安い木賃宿の雑魚寝部屋だ。それと保存食の買い出しだが……」

ロロは目を光らせ、市場へと繰り出していった。シーフ技能に磨きがかかった彼は、商人としての目利きも鋭くなっている。少しでも賞味期限が長く、かつ腹持ちの良い干し肉や硬パンを、店主が泣きを入れるまで値切り倒して買い集めた。

 

一方の情報の収集は、カイルの独壇場である。

「さあさあ、皆の衆! ベルダインの遺跡から持ち帰った、とっておきの冒険譚だよ!」

酒場のステージに立ったカイルは、得意のリュートを掻き鳴らし、朗々と歌い上げた。バード技能と持ち前の陽気さで客の心を掴み、投げ銭とタダの夕食をせしめつつ、商人や傭兵たちから「ロマールへ続く国境地帯の最新の治安状況」をちゃっかりと聞き出していた。

 

「ロマールへの街道の途中、切り通しの岩場あたりで、ゴブリンの群れが出没してるらしい。数日前に襲われた行商人がいるってさ」

宿に戻ったカイルの報告に、五人は車座になって作戦会議を開いた。

 

翌朝、レイドを出発した一行は、目的の都市ロマールへと続く険しい国境の街道を進んでいた。

「……止まって。前方に嫌な臭いがするわ。数が多い」

馬車の御者台の横を歩いていたシリアが、ふいに手を挙げて足を止めた。レンジャーとして経験を積んだ彼女の感覚は、かすかな足跡と獣の臭いを正確に捉えていた。

「ゴブリンね。それも、ホブゴブリンが数匹混ざっている足跡だわ。ここから先、岩場の陰に潜んでいる可能性が高い」

 

「生態から考えても辻褄が合うわ」

メリッサが即座に知識を引き出す。

「彼らは夜行性で、この時間は岩陰や洞窟で休息しつつ、獲物を待ち伏せしているはず。正面から突破しようとすれば、必ず奇襲を受けるわね」

 

護衛を依頼している商人が、顔を青ざめさせて息を呑む。

「ど、どうするんだい、あんたたち! 撃退してくれるんだろう!?」

だが、「擦り減り銀貨(スクラップ・シルバー)隊」の基本方針は一つだ。

 

「戦えば、ライシンの剣の刃がこぼれるかもしれない」

「シリアの矢も消費するし、もし誰かが怪我をしたらキュア・ウーンズのための精神力か、最悪ポーションが必要になる」

「そんな無駄な経費はかけられない。……よし、大迂回だ!」

 

ロロの即断即決に、異論を唱える者は誰もいなかった。

シリアが先頭に立ち、街道を大きく外れた獣道へと馬車を誘導する。カイルは最後尾で音を消し、背後の警戒を怠らない。ライシンは腰のマジックブレイドに手をかけつつも、決して抜くことはなく、ただ静かに周囲を睨み据えていた。

 

彼らは魔物のテリトリーと活動時間を完全に計算し尽くし、ただの一度も剣を交えることなく、危険地帯を丸ごとすり抜けてしまったのだ。

「あ、あんたたち……戦わずにやり過ごすなんて、なんて見事な手際なんだ……!」

商人は、彼らの「無血の回避」を熟練の技と勘違いし、感極まったように褒め称えた。当の五人は「これでまた研ぎ石代が浮いた」と密かにほくそ笑んでいるだけなのだが。

 

そして、長い旅路の果て。

切り立った山々を抜け、なだらかな平野に出た一行の視界に、巨大な城壁に囲まれた都市の全貌が広がった。「たびロマールである。

 

武器の摩耗ゼロ、防具の破損ゼロ、ポーションの消費ゼロ。

完璧な状態で無事にゲートをくぐり抜けたロロは、さっそく街の地図を広げた。

 

「よし、無事に着いたな! それじゃあロマールでの第一ミッションだ。この街で一番安くて、かつ南京虫が出ない冒険者の宿を探すぞ!」

 

英雄になる気は毛頭ない。この新しい街でも、彼らは彼ららしく、怪我なく確実な日銭を稼ぐ隙間産業を探すつもりだ。

呆れ顔で笑う仲間たちと共に、擦り減り銀貨隊の新たな生活が始まろうとしてい

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